これが三谷幸喜の恩返し?宮沢りえが『鎌倉殿の13人』出演に繋がった9年前のある出来事とは?

2022/9/29 22:00龍女龍女

それは、2013年の4月9日~5月12日まで東京芸術劇場プレイハウスにて上演された舞台
『おのれナポレオン』で起こった出来事である。

東京芸術劇場とは、池袋駅の西口にある総合芸術文化施設である。
1990年に出来たが、この時は単なる貸し劇場のような状態であったらしい。
2011年のリニューアルに向けて、2009年にようやく芸術監督がおかれた。
初代芸術監督に就任したのが、劇作家・演出家・俳優の野田秀樹(1955年12月20日生れ)である。


(野田秀樹 イラストby龍女)

東大在学中の1976年に学生劇団を母体に劇団夢の遊眠社を立ち上げた。
70年代後半から80年代の小劇団ブームの一翼を担った。
劇団は1992年に解散した。
1年間の文化庁芸術家在外研修制度によるイギリスへの演劇留学を経て、1993年に演劇企画制作会社野田地図(NODA MAP)を設立した。

さて、この企画が立ち上がったきっかけは野田秀樹が珍しくテレビドラマに出演した作品である。
三谷幸喜が脚本を手がけた初めての大河ドラマ『新選組!』(2004年)で勝海舟役を演じた。

野田秀樹が自らの作演出の舞台以外で初めて俳優のみに徹することにした。
その舞台が三谷幸喜脚本・演出の『おのれナポレオン』だった。

内容は、ナポレオン・ボナパルト(1769年~1821年)の最晩年、セント・ヘレナ島に流罪になり、そこで亡くなるまでの死の真相に迫る物語である。
配役は
ナポレオン・ボナパルト(フランス帝国の元皇帝) 野田秀樹
アルヴィーヌ・モントロン(ナポレオンの家臣の妻。ナポレオンの愛人) 天海祐希
シャルル・モントロン(ナポレオンの家臣) 山本耕史
ハドソン・ロウ(イギリス軍人。セントヘレナ総督) 内野聖陽
である。


(三谷幸喜演出脚本の舞台『おのれナポレオン』の制作発表記者会見の写真から引用。
左から三谷幸喜・天海祐希・野田秀樹・内野聖陽・山本耕史 イラストby龍女)

三谷幸喜は俳優に合わせて、当て書きをする。
当て書きとは、事前に脚本の中で、演じる俳優のイメージに合った台詞を考えるやり方である。

実際のナポレオンは小柄で才気溢れる人物で、陣頭指揮にたって軍を率いたことで部下からの支持を得て出世していった。
このやり方は、演劇界では誰かに似ていないか?
その姿がまるで野田秀樹だ。
演出家野田秀樹にとって、俳優としての自身は使いやすいハズだ。
最も演出意図を理解しているので、野田秀樹の演じ方に他の俳優はついて行けばいい。

相手役のアルヴィーヌを演じたのが、天海祐希(1967年8月8日生れ)である。
イラストからも分かるように小柄な野田秀樹は対して、すがりついてくる171cmの天海祐希に対して
ナポレオン 「でけーな」
と返すシーンがあったそうだ。

ところが思わぬ事態が起こった。
事件の詳細は公式サイトによると
5月6日(月・祝)14時からの公演終了後、体調不良のため病院にかかり、検査の結果、軽い心筋梗塞の症状であることが判明しました。
しばらく安静が必要との医師判断により、降板やむなきこととなりました

今後の公演ですが、天海さんの演じられたアルヴィーヌ役の代役を、宮沢りえさんにお引き受け頂くこととなりました。宮沢さんの勇気あるご英断に、心から感謝申し上げます

とのことである。
天海祐希が発症した心筋梗塞とは、心筋と呼ばれる心臓を繋ぐ動脈の壁にコレステロールなどがこびりついて血管をつまらせる病気である。
酷い場合は死に至る病気なので軽度とはいえ、ドクターストップで降板せざるを得ない事態に陥ったのである。

公演中止か代役を立てるにしても、時間が無い。
それぞれの台詞は演じる俳優を合わせて書いている。
代役を立てると言うことは、単に宮沢りえが台詞を覚えるだけではなく、三谷幸喜も彼女に合わせて一部台詞を変えなければならないという作業が行われることになった。

例えば、さっき引用したアルヴィーヌがすがるシーンでは
ナポレオン「これ見よがしに胸を強調するな」


(ドラマ『協奏曲』の宮沢りえ イラストby龍女)

と宮沢りえに合わせて変更されている。

台詞を覚える時間をどうしたら良いか?
そこで決まったのは、2日間の休演で、千秋楽までの4回で演じる事になった。

それを生かした自虐的な台詞も加わった。
宮沢版ではナポレオンにモリエールの劇中劇をアルヴィーヌとモントロンが演じるというシーンで、
アルヴィーヌ 「練習しましょう!セリフは入ってるの?」 
モントロン 「お前に言われたかねーよ!」 

では何故、宮沢りえはこんな無茶な代役を引き受けることになったのだろうか?

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