七色の声を持つ男、声優界のレジェンド山寺宏一が大河ドラマ初出演!三谷幸喜脚本の『鎌倉殿の13人』で慈円役にどうして選ばれた?

2022/9/1 22:00 龍女 龍女

山寺宏一が三谷幸喜脚本作品の常連になった理由とは?


(三谷幸喜 イラストby龍女)

1988年10月に始まった『それいけ!アンパンマン』で、主役のアンパンマンの声を担当した戸田恵子(1957年9月12日生れ)がきっかけだった。
山寺宏一は、めいけんチーズの声をはじめとして何役もこなしている。現在はジャムおじさんの声を増岡弘(1936~2020)から引き継いでいる。

戸田恵子が三谷幸喜脚本の連続ドラマに出たのは『総理と呼ばないで』(1997年)からである。
三谷幸喜は戸田恵子と打ち合わせをしているときに、山寺宏一の話題も出ていたそうだ。
三谷幸喜は洋画の吹替版が好きで、そこで耳にした山寺宏一の仕事ぶりに感心した。


(戸田恵子。宣材写真から引用 イラストby龍女)

そんな経緯があって、山寺宏一は『合い言葉は勇気』(2000年7月~9月)で初めて連続ドラマに出演する事になった。
ひょんなことで弁護士役を引き受けた売れない俳優の暁仁太郎(役所広司)のブレーンで放送作家の毛野智光を演じている。


(役所広司 イラストby龍女)

山寺宏一は、三谷幸喜の映画監督第2作目の『みんなのいえ』(2001年6月9日公開)でも出演した。
この映画は出演クレジット上の主役は唐沢寿明(一級建築士の柳沢英寿)である。
実際の主役は田中直樹八木亜希子(1965年6月24日生れ)が演じる飯島直介・民子夫妻だ。
二人とも映画で主役級の演技は初めてだった。

映画のあらすじはこうである。
シナリオライターの飯島直介は、賃貸アパートに住んでいたが、妻の民子の希望で新築一戸建に引っ越す事になった。
そこで民子の同窓の一級建築士柳沢英寿と、民子の父親である大工の岩田長一郎(田中邦衛。1932~2021)に頼んで、建て始める。
大学出の柳沢と叩き上げの大工の長一郎はそれぞれ家の作り方の考え方の違いから対立する。
果たして無事に一戸建ての家は完成するのか?
と言うホームコメディである。
山寺宏一は、民子の姉の実栄子(清水ミチコ)の夫、青沼菊馬を演じた。
つまり、血は繋がってはいないが、田中直樹の兄を演じている。
今回の『鎌倉殿の13人』では弟役である。


(田中直樹。所属事務所の宣材写真から引用 イラストby龍女)

山寺宏一が三谷幸喜の名作戯曲の舞台『12人の優しい日本人』(2005年11月29日~2006年1月29日)に出演するために『おはスタ』の司会が出来なかったことがあった。
代理として三谷幸喜が『おはスタ』に出演した。

山寺宏一が三谷作品の中で最も活躍したのは、本領を発揮できる声優として参加したNHKの人形劇である。
『連続人形活劇 新・三銃士』(2009年10月~2010年5月)では、三銃士の一人アトスをはじめとする数役を掛け持つ。
『シャーロックホームズ』(2014年)では、主役のシャーロック・ホームズを演じた。
三谷幸喜監督作品の映画『THE 有頂天ホテル』(2006年)と『清洲会議』(2013年)では 声の出演のみである。

『みんなのいえ』以来、『鎌倉殿の13人』で久々に顔を出して三谷幸喜脚本の連続ドラマに出演する事になった山寺宏一。

・『合い言葉は勇気』で演じたブレーンと言う役割。
・『みんなのいえ』で演じた田中直樹との兄弟役。

この二つの作品で演じた要素が組み合わさった役として、『鎌倉殿の13人』では慈円にぴったり当てはまった。
三谷幸喜の山寺宏一の起用法としては妥当な選択だったのだ。

山寺宏一の声は、知性を想起させる低音が魅力である。
今後も後鳥羽上皇(尾上松也)が出る度に出番があるようなので、ブレーンとして治天の君(実質的な権力を持つ皇族のこと)との関係にどう変化するのか?
ドラマのクライマックスである承久の乱(1221年)に向かっていく展開の鍵を握る存在として、その活躍を楽しみに待っている。


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