2022年のアカデミー賞で3部門にノミネートした映画『リコリス・ピザ』を観て興奮しまくっているワケ

2022/7/15 18:30 龍女 龍女

主人公の15歳から16歳になるゲイリー・ヴァレンタインには、モデルがいる。
ゲイリー・ゴーツマン(1952年11月6日生れ)である。
映画のゲイリー・ヴァレンタインよりも6歳年上だ。
元子役でウォーターベッドの販売をしていたのは事実である。

その後は何と、ゲーリー・ゴーツマンもジョン・ピーターズ同様、映画プロデューサーに転身した。
手がけた作品は
『羊たちの沈黙』(1990年)


(『羊たちの沈黙』アンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクター イラストby龍女)

同じジョナサン・デミ監督作品の『フィラデルフィア』(1993年)で
トム・ハンクス(1956年7月9日生れ)と知り合う。


(『フィラデルフィア』でトム・ハンクスはゲイの弁護士アンドリュー・ベケットを演じた イラストby龍女)

ゲイリー・ゴーツマンは1996年にトム・ハンクスの初監督作品『すべてをあなたに』の制作を、ジョナサン・デミと共同で務めている。
この映画は、1960年代にビートルズのようなスターを夢見た若者たちを描いていて、トム・ハンクスはマネージャー役で出演している。
つまり、ここからトム・ハンクスが映画『エルヴィス』で悪徳マネージャーのトム・パーカー大佐役を引き受けた動機もうかがえるのである。


(『エルヴィス』のトム・パーカー大佐を演じるトム・ハンクス イラストby龍女)

この映画の制作をきっかけに1998年にトム・ハンクスと共同で映画プロダクション・プレイトーンを設立した。

ちなみに、『リコリス・ピザ』の監督
ポール・トーマス・アンダーソン(1970年6月26日生れ。以下PTA)は、『マグノリア』でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したほか、カンヌ、ベネチアを含む世界3大映画祭の全てで監督賞を受賞している。
PTAは、幼少期から監督になりたくてビデオカメラを回してきた。
影響を受けた監督は数多いが、その中の一人にジョナサン・デミ(1944~2017)がいる。
PTAは、前作『ファントム・スレッド』(2017)の献辞を同年に亡くなったジョナサン・デミに捧げている。
こうした繋がりもあって、PTAは、何度もゲイリー・ゴーツマンに話を聞く機会があって、彼の貴重な体験談を聞いていた。
ちなみに、年上の女性を口説く少年の話はまったく別人のエピソードらしい。


『エルヴィス』はキング・オブ・ロックンロールの伝記映画。

『リコリス・ピザ』は1973年を舞台にした青春映画。

『エルヴィス』の監督バズ・ラーマン(1962年9月17日)のギラギラとした人工的な光とカットの多い演出。

PTAと言えば、長回しのショットと自然光が特徴的な撮影で知られる。

映像の美学も対照的な作品であるが、作品の出来はどちらも素晴らしい。
監督の個性が十二分に発揮された傑作なので、オススメである。

筆者の映画ファンの妄想としては、もうここまで来たら、今のバーブラ・ストライサンドとトム・ハンクスが共演する作品が観たい!
興奮しまくっているのである。
オスカー俳優で監督もこなす才人同士だが、世代が違うので共演する機会に恵まれなかった気がする。
今ではギャラが高そうな俳優同士なので、出演料以外の製作費は抑えて、二人の演技合戦を主体にした濃密な人間ドラマあるいは早口の掛け合いが観られるコメディがあったら良いなあ。


※最新記事の公開は筆者のFacebookTwitterにてお知らせします。
(「いいね!」か「フォロー」いただくと通知が届きます)
  1. 1
  2. 2
  3. 3