2022年のアカデミー賞で3部門にノミネートした映画『リコリス・ピザ』を観て興奮しまくっているワケ

2022/7/15 18:30 龍女 龍女

今回のテーマは、映画『リコリス・ピザ』(7月1日公開)である。
2022年・第94回アカデミー賞で、作品・監督・脚本の3部門にノミネートされた。

本題に入る前に『リコリス・ピザ』と言う題名について。
リコリスとはスペインカンゾウと言う生薬に使われる植物である。
アメリカやヨーロッパでは炭素で色づけした黒いリコリスのお菓子が流通していて、それがピザのように丸くて平らな形状のモノを、アナログレコードに例えた俗語が
「リコリス・ピザ」である。
80年代半ばまでロサンゼルスにチェーン展開されていたレコード店の名前である。
映画本編では一切登場しない。
筆者は、グミキャンディが好きである。
IKEAでリコリスのお菓子を他のグミと間違えて購入してしまったことがあり、あまりの不味さに閉口した。
しかし、何となく体には良さそうな気がして、もったいないので数日かけて完食した。


「リコリス・ピザ」があった界隈ロサンゼルスのハリウッドの郊外サンフェルナンド・バレーが映画の舞台である。

1973年の春。
15歳の子役上がりの俳優ゲイリー・ヴァレンタイン(クーパー・ホフマン)は高校の卒業写真の撮影で体育館へ続く中庭で行列に並んでいる。


(クーパー・ホフマン演じるゲイリー・ヴァレンタイン イラストby龍女)

カメラマンのアシスタントをしている25歳の女性アラナ・ケイン(アラナ・ハイム)が歩いてきて、一目惚れしたゲイリーは早速アラナを口説き始めるのである。


(アラナ・ハイム演じるアラナ・ケイン イラストby龍女)

少年が年上の女性に恋をする青春ラブコメディでは、大体の場合、少年の方は童貞の設定が多い。
ところが、このゲイリー少年は子役出身という小生意気な性格のせいか、どう見ても他の女性で経験済みなのが分かる。

この映画が素晴らしいのは、25歳のアラナが、家族構成が3人姉妹の末っ子である事と将来何をやりたいか分からないので、精神的には子供である点であろう。
しかし、常識的に25歳の女性と15歳の少年の恋は危険ではある。
そこをどう切り抜けていくかは面白いところではある。

しかしこの映画の一番の楽しみ方は、細部を追っていくところではないだろうか?
数ある細部の中で筆者が注目したのは、先週鑑賞した映画『エルヴィス』でも、台詞だけ登場する、ある人物にまつわる話である。
何故『リコリス・ピザ』が、『エルヴィス』を観た人にオススメなのか?
詳しく述べていきたい。

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