サザン桑田佳祐とミスチル桜井和寿の夢のコラボ曲『奇跡の地球』は、コロナ禍の今こそ聴かれるべき名曲である理由とは?

2021/12/1 16:00 龍女 龍女

12月1日は世界エイズデーである。
日本では最も有名なエイズ予防普及のチャリティ活動だったのが、AAAである。
(エイベックス所属の5人組男女混合グループAAAとは異なるので要注意)

AAA(Act Against Aids)は、1993年7月20日に設立、2020年7月20日に活動終了した音楽業界を中心に力を合わせ展開してきたエイズ啓発運動だ。
現在はAAA(最後の頭文字の意味がAnywayに変わった)として継続していくという。
コロナ禍の今だからこそ、40年前の感染症と現在に共通する問題をどうやって歌によって表現したか?
と言うのが、今回のテーマになる。


エイズは80年代の世界を襲ったパンデミックだった。
以前からの感染症の結核や麻疹にみられる空気感染でもなく、コロナのように別の概念となる飛沫・接触・マイクロ飛沫でも感染しないので、ロックダウンは起きなかった。
HIVウィルスは血液・精液・膣分泌液・母乳の4つの感染によって発症する。
潜伏期間が長く、発症したら免疫不全を起こして、カポジ肉腫が皮膚に出た患者は末期である。
血液の癌、白血病に似た病でもある。
しかし、1979年にこの病を発症した若い男性が、ゲイコミュニティーにいたために、同性愛をタブー視する保守的なクリスチャンからは、同性愛者に天罰が下った病気として差別を助長する結果も生んだ。
ところが、後になると、同性愛者間だけではなく、血友病患者や麻薬中毒者も同じ病にかかるケースも増えていき、4つの感染源が存在するという病気のメカニズムが、一般社会にもようやく明らかになってきた。


1993年当時、TBSラジオの『東京RADIO CLUB』パーソナリティーで、俳優の岸谷五朗寺脇康文が立ち上げたのが、AAAである。


(2016年の岸谷五朗と寺脇康文 イラストby龍女)

ミュージカルコメディ劇団SETの看板劇団員(1994年に退団)でもあった彼らは、音楽界にも交流があった。
岸谷五朗は1996年にプリンセスプリンセスのヴォーカル・奥居香と結婚した。

岸谷五朗は、師匠に当たるSETの主宰・三宅裕司と同様アミューズに所属していたのにも有利に働いた。

アミューズは元々音楽事務所としてワタナベプロダクションでキャンディーズの担当マネージャーだった大里洋吉が、ロック・ミュージシャン原田真二をマネージメントするために独立したのが、最初である。
しかし、原田真二は翌年、アミューズを辞め、独立した。
キャンディーズの解散コンサートに専念せざるをえなかった大里に見切りを付けた為である。
入れ替わりにサザンオールスターズ(以下、サザン)が加入した。
アミューズが大手事務所となる発端となった。

サザンが飛躍する影に、キャンディーズの親衛隊である全国キャンディーズ連合(全キャン連)の功績があった。
サザンがTVの音楽番組『ザ・ベストテン』のスポットライトで盛り上げていた観客こそ、全キャン連の皆さんである。
大里洋吉のマネージメントによる努力は、ここで発揮されたのである。

80年代は、アミューズはサザンの事務所というイメージが強烈だった。
90年代には福山雅治という大物も現れた。
現在は、Perfumeや星野源が所属する日本最大の音楽事務所である。

また、上野樹里をモデル事務所の社長と共に吸収合併でアミューズに引き入れた。
この企業組織の改革で、若手俳優部門が充実することになった。
きっかけとなったのは、朝ドラの『てるてる家族』で父親と娘役で共演したこと。
岸谷五朗が勧誘したらしい。
ちなみに今の大河ドラマの主役を演じている吉沢亮もアミューズである。

12月1日の世界エイズデーに豪華ミュージシャンが集結するAAAのコンサートでは音楽イベントとして数多くの伝説的なステージが繰り広げられ盛り上がった。
筆者は会場には行けなかったが、WOWOWに放送権があったので、加入者として視聴を毎年楽しみにしているイベントだった。


その中でも、AAAが産んだチャリティソングで、1995年の2月の月間オリコンチャート一位の大ヒット曲となったのが、

国民的ロックバンドのヴォーカリストの夢のコラボ、サザンオールスターズの桑田佳祐とMr.Childrenの桜井和寿がデュエットした
『奇跡の地球』
である。

今回のコラムは、この曲を中心に、チャリティソングの中でも感染症の抱える問題とどう関係して生まれたか?
探っていく。


『奇跡の地球』の誕生の前段階として、その9年前に生まれた世界初のエイズのチャリティソング
『愛のハーモニー』(原題:That's What Friends Are For)を具体例に挙げて、チャリティソングが出来ていく仕組みを観ていこう。

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