本木雅弘、松田翔太…最新作『青天を衝け』の草なぎ剛まで。大河ドラマで徳川慶喜を演じた俳優を振り返る!

2021/2/17 22:00 龍女 龍女

第2部 90年代の地味な存在

1981~89年の9年間、幕末モノは一本も制作されなかった。
1980年の『獅子の時代』は幕末ではあるが、主人公が架空の人物でしかも下級武士だった。視聴率も他の大河と比べると低かった。

60年代の黎明期から、幕末モノの制作中にスタッフの間に数多くのトラブルが発生した。その影響で平均視聴率が20%を割ることも多かった。
「幕末モノは当たらない」と言うジンクスが出来てしまったようで、慶喜の出番はなかった。



筆者はここから観た記憶がある。
小学校一年の頃に学習漫画で徳川慶喜の顔を初めてみた時に
「久米宏に似ている」と思った。
三田村邦彦は同じ系統の顔だった。慶喜そっくりだと感心した。



いよいよ主役として大河ドラマに出てきた。
モックンは草なぎ剛にとって「元ジャニーズ」の先輩で、埼玉県出身まで共通する。
何を考えているか分からない。不思議な存在感。
これも本木雅弘と草なぎ剛がお互い持っている個性だ。

NHKの大河ドラマ事前紹介番組『50ボイス』に草なぎ剛が出演した。
大河ドラマ『徳川慶喜』は実は観ていなかったと答えた。
1990年代後半当時の時代の空気を考えてみよう。
筆者も草なぎ剛もほぼ同世代だ。
筆者は大学生で一人暮らし中。
大河好きの父親にテレビのチャンネル権を奪われない。
時代劇よりバラエティやトレンディドラマに夢中だった。


第3部  21世紀初頭の慶喜は政治不信の象徴か?



『新選組!』の大成功で、「幕末モノは当たらない」ジンクスは払拭された。
大河ドラマで初めて続編が出来た。
主人公は近藤勇(香取慎吾)で、本編は彼の処刑で終わる。
しかし、土方歳三(山本耕史)の最期が観たい視聴者の要望が多く、正月時代劇(2006年)として続編が放送されたのだ。


篤姫(宮崎あおい)は、義父の島津斉彬(高橋英樹)の命を受けて一橋慶喜の将軍後継を推す。
その為に13代将軍家定(堺雅人)の二番目の正室として大奥に入る。
慶喜は篤姫が失望する存在として描かれている。
現実の政界では、エリート官僚が諸悪の元凶の様に扱われた。



『龍馬伝』では更に悪役として描かれる。
福田靖のオリジナル脚本は、名作『アマデウス』を土台に構成されている。
天才ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトを坂本龍馬(福山雅治)に置き換えた。
一緒の場面はないが、理解できない凡人の貴族の一人を慶喜に置き換えている。



『八重の桜』では崩壊寸前の幕府を何とか改革しようとする。
苦悩する政治家として描かれていた。



脚本家が何人も変わってしまい、見所がよく分からない。
最悪の出来で、どんな慶喜だったか確認すらしたくない。




西郷隆盛(鈴木亮平)は島津斉彬(渡辺謙)の側近で、連絡係だった。
薩摩の貧しい農家の娘ふき(高梨臨)が国を出て品川遊郭へ揚がる。
そこで出逢った「おひぃさま」こと町人姿に身をやつした慶喜。
ふきは、慶喜の妾になり、知り合いの隆盛のパイプ役になる。
やがて、慶喜は鳥羽伏見の戦争の頃に大阪から江戸へ逃げた。
彼女は西郷に謝るようにいうが、慶喜と意見が対立し離縁する。
西郷と慶喜は直接会えなくなり、間に勝海舟(遠藤憲一)が入り江戸無血開城へ向かう。


第4部  『青天を衝け』ではどう変わる?



初回では、いきなり徳川家康として、北大路欣也が登場した。
そこで
日本の近代を作ったのは明治政府側にいた薩長だけではない
と言わせている。
最近の歴史研究では、幕臣の中にも近代化に貢献した優秀な人材が多かったことは明らかになっている。
若い頃に竜馬を演じた北大路欣也に対照的な役を配したとみるのは深読みだろうか?
脚本家がNHKの朝ドラ『あさが来た』の大森美香であることが重要だ。



朝ドラの初期の大ヒット作1966年『おはなはん』(ちなみにおはなはん役の樫山文枝は劇団民藝)の有名な木登りシーンを白岡あさ(波瑠)に再現させた。
『青天を衝け』の本編でも、幼い渋沢栄一が木に登っている。

木登りする主人公は積極的な性格を示している。
対照的な副主人公に徳川慶喜が配されている。
教養があって慎重な性格だったので、徳川家康の再来と呼ばれ期待されていた
しかし将軍になりたいと積極的に動いた形跡は少ない。
人を寄せ付ける不思議な人望があったそうだ。
見た目が似ているだけでない。
受けの演技が上手い草なぎ剛に期待が高まる。

※参考文献『大河ドラマの黄金時代』春日太一(NHK出版新書)

※最新記事の公開は筆者のFacebookTwitterにてお知らせします。
(「いいね!」か「フォロー」いただくと通知が届きます)


写真:タレントデータバンク
本木雅弘|1965/12/21生まれ|男性|A型|埼玉県出身)

  1. 1
  2. 2