【臨場感が半端ない!】美術館でシルクロードの旅に行ってきた。

2020/8/19 17:00 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

さっそくですが、この夏開催される展覧会の中でも特に楽しみにしていた「東京藝術大学スーパークローン文化財展」に行ってきました。

場所は、横浜駅東口、横浜そごう6階にあるそごう美術館。 会場内は東京藝術大学が開発した文化財復元技術「クローン文化財」「スーパークローン文化財」によって再現されたシルクロードの文化財でいっぱい。
私たちをシルクロードの旅に誘(いざな)ってくれます。

東京藝術大学スーパークローン文化財展
会 場  そごう美術館(横浜駅東口そごう横浜店6階)
会 期  2020年8月1日(土)~8月31日(月)  会期中無休
開館時間 午前10時~午後8時 ※そごう横浜店の営業時間に準じます
     (入館は閉館の30分前まで)
入館料  一般500円ほか 大学生以下無料
※展示作品はすべてクローン文化財・スーパークローン文化財(複製)です。(調査研究に基づく再現・復元。部分・縮小の作品を含む。)
※展示作品(映像除く)は撮影OKです!(フラッシュ・動画・器材使用不可)
公式サイト⇒https://geidai-clone2020.sogomuseum.jp/



今回展示している文化財の位置図がこちらです。
ミャンマーのパガン遺跡を除くと、中央アジアから中国、朝鮮半島、日本まで、シルクロードのルートに沿った遺跡等の文化財が紹介されています。




臨場感がすごい!

今回の展示で何がすごいかというと、何といっても、まるでその場にいるような臨場感。
こちらは中国・敦煌の莫高窟第57窟。石窟がそっくりそのままの形で再現されているのです。


石窟の中に入って、唐時代(7世紀前半)の極彩色の壁画を目の前で見ることもできます。菩薩さんがに身につけている冠や首飾りの金も見事に再現されていて、キラキラ輝いています。


そして、さらに凝っているのは正面の如来坐像と右脇の菩薩立像(彩塑)。
現在の姿は後世の修復(特に清時代)の手が多く入っていて、壁画との様式の差がはっきりしているので、他の洞窟の仏像を参考に、創建当時の姿を推定復元したとのこと(解説パネルより)。


現在、この第57窟は保全のため一般公開が困難とのことですが、もし公開されたとしても、このように創建当時の様式に統一された壁画や彩塑を見ることはできないのです。

伝統的な模写の技術と現代のデジタル技術を融合させて文化財を再現するのが「クローン文化財」、そしてオリジナルを超越して新たな価値を創造するのが「スーパークローン文化財」。
この如来坐像と菩薩立像はまさに「スーパー」クローン文化財!

会場内をさらに先に進むと緑色の壁で囲われた小部屋が見えてきました。
中を覗くとかすかに見えるのが蛇のように長い首と亀のような甲羅をもった「玄武」。
この部屋の中は、高句麗古墳群の中の1基、江西大墓の石室の再現。
この高句麗古墳群は北朝鮮にあって、2004年、中国東北部に所在する高句麗古墳群とともに世界遺産に登録されました。


石室内には1人ずつ順番で入ります。新型コロナウィルス感染拡大防止のためなのですが、おかげで石室内の神秘の空間を独り占め!
中に入ると正面は北壁の「玄武」。


東壁には「青龍」(左)、南壁には「朱雀」(右)。


西壁には「白虎」(右)、南壁にはふたたび「朱雀」(左)。


この四神図は、海を渡り、日本のキトラ古墳や高松塚古墳の壁画に影響を与えたことが推察されるとのこと(解説パネルより)。
キトラ古墳や高松塚古墳の壁画は、先月行ったばかりで、前回のコラムで紹介しているので、不思議なご縁を感じました。

前回のコラム⇒古墳の中のワンダーワールドがすごい!


失われた文化財が再現されている!

さらにこの展覧会のすごいところは、失われた文化財を目の前で見られることです。

紹介の順番が前後しましたが、会場に入ってすぐ目につくのは、2001年に爆破されて失われたバーミヤン東大仏の天井画の復元作品。


上の写真左がバーミヤン東大仏の天井画に描かれていた《天翔る太陽神》(部分)。


その右のバーミヤン東大仏の模型を下から覗くとわかるのですが、大仏の頭の上の天井に描かれていたので、壁画そのものが少し丸みを帯びています。近くで見ると、その曲がり具合や剥落の様子まで忠実に再現されているのがよくわかるので、作品の前を何回も行ったり来たりしました。

バーミヤン東大仏の模型のアップ。大仏の頭の上に立っているのは、赤い矢印を持った女性の人形です。



そして、先ほど紹介した敦煌莫高窟や高句麗古墳群を通ると、シルクロードの東の終点・奈良の法隆寺にたどり着きます。
ここに展示されているのは、昭和24(1949)年に火災により焼損した金堂壁画の復元と、金堂に安置されている釈迦三尊像。


最先端のデジタル技術と伝統的な鋳物技術の融合によって飛鳥時代の創建当初の姿に迫る試みを取り入れた釈迦三尊像。


釈迦三尊像再現の過程は映像で紹介されています。再現されるまでに多くの人たちの努力があったことを知ると、この釈迦三尊像のありがたみが一層増したような気がしました。

来年の夏も楽しみ!

展示室最後のコーナーには、今までとは趣きが全く異なるゴッホの作品がずらりと並んでいますが、これは、2021年夏に開催が予定されている、「謎解きゴッホと文化財」展の予告編。



ここに展示されているゴッホ《オーヴェルの教会》《自画像》のほかに、兵庫の芦屋にあって、太平洋戦争中の空襲で焼失した《ひまわり》 (芦屋のひまわり)が展示されることもアナウンスされています。
今年の展示は8月31日(月)で終了しますが、来年の夏も今から待ち遠しいです。



すでに失われてしまったり、保存上の理由や、紛争などで行くことが困難な場所にあるなど、実際に見ることができない文化財は世界中に数多くあります。
そういった文化財を、本来の姿に近い形で再現・復元してくれる技術が「クローン文化財」「スーパークローン文化財」。
新型コロナウィルスの感染拡大で海外に行くのもままならない状況なので、今こそ美術館の中でシルクロードの旅をしてみてはいかかでしょうか。

失われたアートについてもっと知りたい方にはこちらの本がおススメ。スリリングでドラマチックな展開なので、のめり込んで読んでしまいます。
アートブログ「青い日記帳」主宰、Takさん監修の新書です。

『失われたアートの謎を解く』(ちくま新書)