【進化する世界遺産】1300年前の都にタイムスリップ!
こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。
さっそくですが、先日、梅雨の合間を縫って久しぶりに奈良の平城宮跡に行ってきました。
朱雀門
平城宮跡は、今では平城宮跡歴史公園として整備されている、緑の多い草原のような広い公園。
生暖かい風に吹かれながら朱雀門や第一次大極殿の堂々とした姿を眺めたり、遣唐使船に乗ったり、今までの調査の成果や出土品などが展示されている資料館に立ち寄ったりしているうちに、いつの間にか1300年前の都にタイムスリップした気分になれる、とても心地のよい空間です。
平城宮跡歴史公園内には多くの施設が整備されています。それぞれの施設の概要や開館時間等は公式サイトでご確認ください⇒平城宮跡歴史公園
それではさっそく「朱雀門ひろば」にある遣唐使船からスタートしましょう。
遣唐使船に乗ってみよう!
復原された遣唐使船
1回の遣唐使派遣では、朝廷を代表する大使や副使、唐で学ぶ留学生や留学僧、それに櫓の漕ぎ手など総勢約600人が4隻の船に分乗したとのこと。全長わずか30mの船におよそ150人が搭乗して、さらに唐の皇帝への献上品や乗員の食糧まで積み込んだのですから、船内はかなりぎっしりの状態だったことでしょう。
遣唐使船の船内の様子
当時の遣唐使たちは、この小さな船に乗って命がけで1週間かけて東シナ海を渡り、揚子江の河口の港に着き、さらに陸路で唐の都・長安をめざしました。
今では成田空港から西安の咸陽空港までわずか5時間半。今と昔では比べようもないですが、過酷な旅だったことが想像されます。
吉備大臣に再会!
遣唐使船の乗船入口がある天平うまし館内には遣唐使船解説コーナーがあって、遣唐使が唐に持っていったものや日本に持ち帰ったもののレプリカが展示されています。
なかでも、吉備大臣と阿倍仲麻呂の再開と別れ、鑑真和上の来日といったドラマチックなシーンが見られる遣唐使のアニメ「波濤を超えて」は必見です。
(映像は「波濤を超えて」(約8分)3回→鑑真和上の伝記絵巻「東征伝絵巻」(約29分)1回のサイクルで上映されます。)
今回の旅行は、《吉備大臣入唐絵巻》が来日するということで私の中では今年前半イチ押しの展覧会だった「ボストン美術館展 芸術×力」(東京都美術館)が新型コロナウィルスの影響で中止になったので、吉備大臣が唐に向けて旅立った場所に行ってみたいという思いがきっかけでした。その思いがかなって、ここでようやく吉備大臣にお会いすることができました。
《吉備大臣入唐絵巻》や吉備大臣(吉備真備)、阿倍仲麻呂のことは以前書いたコラムで紹介しています。
いまトピ あの「ゆるキャラ絵巻」が帰ってくる!
平城宮のジオラマも見られる!
CGが全盛になる前の特撮で育った世代なので、ジオラマという言葉を聞くと、ついつい心が弾んでしまいます。
こちらは平城宮が体感できる平城宮いざない館にある1/200の平城宮のジオラマ。
左が現在整備が進められている第一次大極殿のエリア。左奥が第一次大極殿、左手前が朱雀門。
元明天皇(在位707-715)が平城宮に遷都したのが710年。その後、聖武天皇(在位724-749)が740年(天平12年)から5年間に恭仁京、難波宮、紫香楽宮と立て続けに遷都して、745年(天平17年)、平城宮に戻ってきたときに整備したのが、中央の第二次大極殿エリアです。
拡大鏡を通してみると、当時の人たちの姿も見えてきます。
第一次大極殿の復元にあたって、精密な模型も製作されました。
1/5の構造模型。
こうやって下から見上げると、十分な道具もなく、木を組むだけでこれだけしっかりした構造の巨大な建物を建てた当時の匠たちの技のすごさが伝わってきます。
平城宮で働く役人たちの仕事ぶりも紹介されています。
「役人のすがた」のコーナー
「下級役人の出世は遠い」というフレーズに目が止まりました。今も変わらぬサラリーマンの悲哀を感じずにはいられれません。
かつての平城宮を体感したあとは、第一次大極殿に向かいましょう。
上村淳之画伯が描いた四神十二支の動物たちに会える!
朱雀門をくぐり、近鉄奈良線の踏切を越えると、第一次大極殿の前に体育館のような大きな覆いが見えてきます。
これは現在復原工事が進められている南門で、2022年春に完成予定とのことです。その後、周囲を取り囲む築地回廊などが、順次整備が進められるとのことですので、全部完成したらぜひまた来てみたいです。
いよいよかつての都の中心施設、第一次大極殿。
第一次大極殿
中に入って驚きました。以前来た時にはなかったのですが、中央にはなんと高御座(たかみくら)が鎮座してる!
奈良時代の高御座の構造などに関する記録はないため、京都御所に現存する大正天皇の高御座を基本に製作した実物大のイメージ模型とのこと。それにしても存在感あります。
そして上を見上げると、四周を巡る小壁には、奈良在住で日本画家の上村淳之氏による四神と十二支の動物たち。
天井の花柄模様も原画は上村淳之画伯によるものです。
東に青龍
南に朱雀
西に白虎
北に玄武
十二支の動物たちも可愛く描かれていて、上村淳之画伯の動物に対する優しいまなざしが感じられます。
稲穂をもって嬉しそうにしているねずみたち。
ところで、今回平城宮跡を訪れる少し前に、こんなニュースが入ってきました。7月16日に、奈良県、奈良市と近畿日本鉄道が、平城宮跡の南側への線路移設に向けた協議に入ることで合意したとのことです。
近鉄奈良駅から大和西大寺駅に向かう間、電車の中から朱雀門や大極殿にお別れの挨拶をするのに慣れ親しんできましたが、それもいつかはできなくなると思うと一抹の寂しさを感じます。
でも、それだけ平城宮跡の整備が進むということですから、期待もふくらみます。
こういう景色もいつかは見られなくなるかも。
東大寺や興福寺などの寺社ほかとともに「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録されている平城宮跡。
これからも進化し続ける平城宮跡はいつ来ても楽しめる観光スポットです。
『るるぶ気軽に楽しむ! 古代史の旅』 (JTBのムック)
さっそくですが、先日、梅雨の合間を縫って久しぶりに奈良の平城宮跡に行ってきました。
朱雀門
平城宮跡は、今では平城宮跡歴史公園として整備されている、緑の多い草原のような広い公園。
生暖かい風に吹かれながら朱雀門や第一次大極殿の堂々とした姿を眺めたり、遣唐使船に乗ったり、今までの調査の成果や出土品などが展示されている資料館に立ち寄ったりしているうちに、いつの間にか1300年前の都にタイムスリップした気分になれる、とても心地のよい空間です。
平城宮跡歴史公園内には多くの施設が整備されています。それぞれの施設の概要や開館時間等は公式サイトでご確認ください⇒平城宮跡歴史公園
それではさっそく「朱雀門ひろば」にある遣唐使船からスタートしましょう。
遣唐使船に乗ってみよう!
復原された遣唐使船
1回の遣唐使派遣では、朝廷を代表する大使や副使、唐で学ぶ留学生や留学僧、それに櫓の漕ぎ手など総勢約600人が4隻の船に分乗したとのこと。全長わずか30mの船におよそ150人が搭乗して、さらに唐の皇帝への献上品や乗員の食糧まで積み込んだのですから、船内はかなりぎっしりの状態だったことでしょう。
遣唐使船の船内の様子
当時の遣唐使たちは、この小さな船に乗って命がけで1週間かけて東シナ海を渡り、揚子江の河口の港に着き、さらに陸路で唐の都・長安をめざしました。
今では成田空港から西安の咸陽空港までわずか5時間半。今と昔では比べようもないですが、過酷な旅だったことが想像されます。
吉備大臣に再会!
遣唐使船の乗船入口がある天平うまし館内には遣唐使船解説コーナーがあって、遣唐使が唐に持っていったものや日本に持ち帰ったもののレプリカが展示されています。
なかでも、吉備大臣と阿倍仲麻呂の再開と別れ、鑑真和上の来日といったドラマチックなシーンが見られる遣唐使のアニメ「波濤を超えて」は必見です。
(映像は「波濤を超えて」(約8分)3回→鑑真和上の伝記絵巻「東征伝絵巻」(約29分)1回のサイクルで上映されます。)
今回の旅行は、《吉備大臣入唐絵巻》が来日するということで私の中では今年前半イチ押しの展覧会だった「ボストン美術館展 芸術×力」(東京都美術館)が新型コロナウィルスの影響で中止になったので、吉備大臣が唐に向けて旅立った場所に行ってみたいという思いがきっかけでした。その思いがかなって、ここでようやく吉備大臣にお会いすることができました。
《吉備大臣入唐絵巻》や吉備大臣(吉備真備)、阿倍仲麻呂のことは以前書いたコラムで紹介しています。
いまトピ あの「ゆるキャラ絵巻」が帰ってくる!
平城宮のジオラマも見られる!
CGが全盛になる前の特撮で育った世代なので、ジオラマという言葉を聞くと、ついつい心が弾んでしまいます。
こちらは平城宮が体感できる平城宮いざない館にある1/200の平城宮のジオラマ。
左が現在整備が進められている第一次大極殿のエリア。左奥が第一次大極殿、左手前が朱雀門。
元明天皇(在位707-715)が平城宮に遷都したのが710年。その後、聖武天皇(在位724-749)が740年(天平12年)から5年間に恭仁京、難波宮、紫香楽宮と立て続けに遷都して、745年(天平17年)、平城宮に戻ってきたときに整備したのが、中央の第二次大極殿エリアです。
拡大鏡を通してみると、当時の人たちの姿も見えてきます。
第一次大極殿の復元にあたって、精密な模型も製作されました。
1/5の構造模型。
こうやって下から見上げると、十分な道具もなく、木を組むだけでこれだけしっかりした構造の巨大な建物を建てた当時の匠たちの技のすごさが伝わってきます。
平城宮で働く役人たちの仕事ぶりも紹介されています。
「役人のすがた」のコーナー
「下級役人の出世は遠い」というフレーズに目が止まりました。今も変わらぬサラリーマンの悲哀を感じずにはいられれません。
かつての平城宮を体感したあとは、第一次大極殿に向かいましょう。
上村淳之画伯が描いた四神十二支の動物たちに会える!
朱雀門をくぐり、近鉄奈良線の踏切を越えると、第一次大極殿の前に体育館のような大きな覆いが見えてきます。
これは現在復原工事が進められている南門で、2022年春に完成予定とのことです。その後、周囲を取り囲む築地回廊などが、順次整備が進められるとのことですので、全部完成したらぜひまた来てみたいです。
いよいよかつての都の中心施設、第一次大極殿。
第一次大極殿
中に入って驚きました。以前来た時にはなかったのですが、中央にはなんと高御座(たかみくら)が鎮座してる!
奈良時代の高御座の構造などに関する記録はないため、京都御所に現存する大正天皇の高御座を基本に製作した実物大のイメージ模型とのこと。それにしても存在感あります。
そして上を見上げると、四周を巡る小壁には、奈良在住で日本画家の上村淳之氏による四神と十二支の動物たち。
天井の花柄模様も原画は上村淳之画伯によるものです。
東に青龍
南に朱雀
西に白虎
北に玄武
十二支の動物たちも可愛く描かれていて、上村淳之画伯の動物に対する優しいまなざしが感じられます。
稲穂をもって嬉しそうにしているねずみたち。
ところで、今回平城宮跡を訪れる少し前に、こんなニュースが入ってきました。7月16日に、奈良県、奈良市と近畿日本鉄道が、平城宮跡の南側への線路移設に向けた協議に入ることで合意したとのことです。
近鉄奈良駅から大和西大寺駅に向かう間、電車の中から朱雀門や大極殿にお別れの挨拶をするのに慣れ親しんできましたが、それもいつかはできなくなると思うと一抹の寂しさを感じます。
でも、それだけ平城宮跡の整備が進むということですから、期待もふくらみます。
こういう景色もいつかは見られなくなるかも。
東大寺や興福寺などの寺社ほかとともに「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録されている平城宮跡。
これからも進化し続ける平城宮跡はいつ来ても楽しめる観光スポットです。
『るるぶ気軽に楽しむ! 古代史の旅』 (JTBのムック)