鳥山明、SDガンダム…デフォルメ文化の父・チョロQの中村安広さんを振り返る【ファンシー絵みやげ】(2/2)
■ 中村安広さんの影響
中村安広さんからの影響は『Dr.スランプ』において、人物のデフォルメイラストの礎を築いた鳥山明さんを経てSDガンダムの横井孝二さんに至るわけですが、80〜90年代の子ども向け観光地みやげ「ファンシー絵みやげ」にも強い影響があります。 #ファンシー絵みやげ pic.twitter.com/UgzAaYrVZT
— 山下メロ(平成レトロ・ファンシー絵みやげ) (@inchorin) May 10, 2020
この鳥山明『Dr.スランプ』の表紙にあるような、すこし前後の丈を詰めたような自動車の描き方、これはまさにチョロQです。むしろ実際の玩具のチョロQというより、そのイメージイラストに近いのです。
ちなみに表紙がクルマだったこの鳥山明『Dr.スランプ』第9巻をパラパラ見ただけでも、扉絵を中心に中村安広さん的なデフォルメが多数見つかりました。 pic.twitter.com/wLJsuizqUd
— 山下メロ(平成レトロ・ファンシー絵みやげ) (@inchorin) May 10, 2020
漫画の舞台であるペンギン村に溶け込んでいますが、これらのイラストは非現実的なフォルムになっていることが分かります。そして『Dr.スランプ』には、ウルトラマンやゴジラなどが二頭身にデフォルメされて登場します。既存のキャラクターを二頭身にデフォルメする流れは、SDガンダムの登場によって一気に大きなブームとなりました。
横井孝二SD画集 画伯が描くスーパーディフォルメワールド https://t.co/oF389FHgjp @amazonJPさんから しばらく無口でごめんなさい、なんとなんと発売してしまうのですよ!!! pic.twitter.com/MyWt9Xkdvi
— 横井孝二 SD画集重版出来☆ (@nisegundam) December 12, 2019
学生時代の横井孝二さんが「鳥山劣」というペンネームで模型雑誌にデフォルメガンダムのイラストを送っていたことから、雑誌連載を経てSDガンダムの商品化へと繋がったエピソードはあまりに有名です。私も小学生の頃にはSDガンダムの塩ビ人形、プラモデル、カードダスを集め、そして横井画伯の漫画を愛読していました。私だけでなく、クラスメイトもみんな夢中だったのです。
デフォルメの話はかなり奥深いのでいつかどこかで詳しく書きたいと思います。
さて、同じく大きなデフォルメ文化を築いた「ファンシー絵みやげ」にもその影響を見ることができます。「ファンシー絵みやげ」は1980年代から1990年代にかけて日本中の観光地で売られていた子ども向け雑貨みやげの総称です。
こちらです。愛知県・伊良湖岬のファンシー絵みやげキーホルダー。黒い部分を2人で触ることにより相性占いができるラブチェックカードです。伊良湖岬は恋路が浜が有名ですので、恋する(?)カップルが描かれています。「(シラー)」と書かれているのも時代を感じますね。
そして、この左側に描かれている車がまさに中村安広さん風のデフォルメ感です。雑に描いて丸っこくなっているわけではなく、ちゃんとディティールを描写した上でのデフォルメ。斜め前からパースがありつつも、あきらかに前後の丈を詰めて描かれています。
他にもたくさんのファンシー絵みやげにおいて車がこのように描かれています。自動車マニアでなくとも親近感がわく、優れたデザインなのです。
今回の訃報は残念ですが、これをキッカケに中村さんの残した作品やお仕事に、再び注目が集まることを願っております。
では、また次回。
(文と写真:山下メロ)
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