心に響く:写真家ソール・ライターの言葉

2020/1/17 23:05 Tak(タケ) Tak(タケ)

2006年に、ドイツで出版された一冊の写真集『Early Color』により、突如世界の注目を集めるようになった、写真家ソール・ライター(Saul Leiter、1923年12月3日 - 2013年11月26日)


ソール・ライター 《帽子》 1960年頃、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation

ひっそりとニューヨークのアパートの一室で猫と暮らしていた彼が、「カラー写真のパイオニア」として多くの称賛を浴びることになり、2012年には映画化までされるに至りました。


写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと(字幕版)

日本国内でも、2017年にBunkamura ザ・ミュージアムで開催された「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」で若い人を巻き込んで大きな話題となり、展覧会は長蛇の列が。

そして、2020年同じくBunkamuraザ・ミュージアムで「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」展が再び開かれるまでに至っています。


ソール・ライター 《薄紅色の傘》 1950年代、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation

2017年、2020年それぞれの展覧会会場で心に刺さる魅力的な写真と共に、ソール・ライターの言葉も壁に記されていました。

その彼の言葉がとても心に響くのです。ひとつひとつ。

写真同様に、気取らず飾らず、誰かに見せよう、聞かせようましてや説き伏せようなどとは全く考えていない、ピュアでシンプルな言葉だからこそ、今の我々の心にダイレクトに鳴り渡るのです。


ソール・ライター 《赤い傘》 1958年頃、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation

いくつか彼の遺した言葉をご紹介しましょう。写真と共に。

「私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。」

「写真はしばしば重要な瞬間を切り取るものとして扱われたりするが、本当は終わることのない世界の小さな断片と思い出なのだ。」

「私は無視されることに自分の人生を費やした。それで、とても幸福だった。無視されることは偉大な特権である。」



ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation

「写真を見る人への写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時々提示することだ。」

「私は有名になる欲求に一度も屈したことがない。自分の仕事の価値を認めて欲しくなかった訳ではないが、父が私のすることすべてに反対したためか、成功を避けることへの欲望が私のなかのどこかに潜んでいた。」

「いちばん良いものがいつも見えているとは限らない。美術の歴史は、偉大なものが放置され無視され、粗悪で平凡なものが賞賛されてきた歴史なのだ。」



ソール・ライター 《バス》 2004年頃、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation

「取るに足りない存在でいることは、はかりしれない利点がある。」

「重要なのは、どこである、何である、ではなく、どのようにそれを見るかということだ。」

「人間の背中は正面よりも多くのものを私に語ってくれる。」


まだまだ、ぐっとくる言葉と誰も真似できない写真が『ソール・ライターのすべて』には載っています。

2017年に開催された「ソール・ライター展」の図録も兼ねていますが、とてもスタイリッシュな装幀となっている一冊です。


『All about Saul Leiter ソール・ライターのすべて』
青幻舎

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