浮世絵展はタイトルが命!
企画展「江戸の凸凹 ―高低差を歩く」
2019年6月1日(土)~6月26日(水)
今年ヒットした展覧会の中に、「江戸の凸凹展」があります。サブタイトルに「高低差を歩く」とあるので、坂道だらけの江戸市中を描いた風景画の展覧会であることが分かります。
でも、元々は「広重の風景画展」だったそうです。
どうでしょう、「広重の風景画展」と「江戸の凸凹展」どちらがタイトルに惹かれますか。前者も勿論魅力を感じますが、広重展はサントリー美術館など他館でも多く開催されておりどうしても既視感があります。
そこで日野原さんが考えたのが「江戸の凸凹展」というタイトル。そうNHKの人気番組「ブラタモリ」的な新しいニュアンスが込められており、何やらとてもそそられるものがあります。
実際に予想を上回るお客さんが観に来られたそうです。
特別展「江戸の悪 PARTⅡ」
2018年6月2日(土)~7月29日(日)
「役者絵は来館者が少ないのが悩みだったのですが、タイトルを『江戸の悪』としたところ、驚くほど反響があり、大盛況となりました。あまりにも評判が良いのでpart2まで開催してしまいました。」
日野原さんが満面の笑みを浮かべながらそう語る「江戸の悪展」もまたタイトルでがっちりと人々の心を掴むことに成功した好例のひとつです。
役者絵は江戸時代、当時の人々には同時代の人気アーティストを手元でじっくり鑑賞できるとあり流行しましたが、現代ではそれが逆効果となり、ぱっと見ても何が描かれているのかさっぱり分かりません。
丁度、キリスト教絵画やギリシャ神話の一場面を描いた西洋の物語画に魅力をあまり感じないのと同じです。
しかし、中野京子先生のようにそれらを『怖い絵』という別の括りで見せることで衆目を集めることに成功したように、太田記念美術館さんもタイトルをズバリ「江戸の悪」とすることで大成功を収めたのです。
「青のある暮らし ―着物・器・雑貨」
2019年7月2日(火)~28日(日)
「異世界への誘い ―妖怪・霊界・異国」
2019年8月2日(金)~8月28日(水)
「江戸の凸凹展」「江戸の悪展」以外にも今年開催された展覧会の中にも展覧会タイトルにより、「観に行きたい!」と思わせる企画が目白押しでした。
さらに、それらを引き立てるようにチラシ・ポスターのデザインも一般的な浮世絵展とはまるで違ったテイストです。プロのデザイナーに依頼することもあるそうですが、事務スタッフがそれこそ自前で作ってしまうのだそうです。
次回展もとても楽しみなタイトルとチラシデザインの展覧会が待っています。
ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち ―悳俊彦コレクション
2019年2019年11月2日(土)~12月22日(日)
そして太田記念美術館さんの最大の武器はTwitterです。
太田記念美術館Twitter
私が知る限り日本のみならず世界中の美術館アカウントの中で最も見事な運用をしているTwitterアカウントが、この太田記念美術館さんだと思います。これについては異存は皆さんもないはずです。
これからも太田記念美術館さんの展覧会そしてツイートは要チェックですよ!!
ようこそ浮世絵の世界へ 英訳付 (An Introduction to Ukiyo-e, in English and Japanese)
日野原 健司 (著), 太田記念美術館 (監修)
「Cool Japan」の代表「浮世絵」の魅力を、日本人だけでなく日本文化に興味ある外国人にも紹介する英訳付き浮世絵入門書。
太田記念美術館
昭和55(1980)年1月に浮世絵の専門美術館として原宿に開館。依頼、1万2千点にのぼる所蔵作品の中から毎月異なる企画展示を継続。その所蔵作品の大半は、故太田清蔵(1893-1977)が大正末期から約半世紀にわたり、情熱を傾けて蒐集したコレクションによる。膨大な数量もさることながら、肉筆画、版画、版本など幅広い内容と稀少な作品が数多く含まれることで国内外を問わず注目を集めている。
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/