北斎のライバル⁉ ゆる絵師・鍬形蕙斎の描く絵が最高にかわいい♡
消費税率の改定に伴い、切手の値段は変わってしまいましたが、2019年7月にとてつもなく可愛い切手が発売されたのをご存知でしょうか?
▲日本郵政株式会社 切手 動物シリーズ第2集「鳥獣略画式」
こちらの「鳥獣略画式」の切手は、その愛らしさに品切れとなる郵便局もあったそう。Twitterでも話題になっていましたね。
作者は江戸時代の絵師、鍬形蕙斎(くわがた・けいさい)。江戸時代にこのキャラを描けるセンス、ちょっとびっくりですよね。実は蕙斎、今では知る人ぞ知る絵師となってしまいましたが、当時は「北斎嫌いの蕙斎好き」と言われるほど、葛飾北斎と肩を並べる人気絵師だったのです。
◆畳屋の息子から 藩主お抱えの絵師に!?
▲北尾政美 《仮名手本忠臣蔵三段目》 寛政~文化元年(1790~1804)頃
鍬形蕙斎は、明和元年(1764)、江戸の畳職人の家に生まれました。本姓は赤羽、名は紹真(つぐざね)。幼いころから絵の才に長けており、浮世絵の北尾派の祖である初代・北尾重政の門下に入ります。※鍬形蕙斎は後に改めた名前となります。
弱冠15歳で「黄表紙」と呼ばれる娯楽本の挿絵を手掛け、浮世絵師デビュー! その後、役者絵や花鳥画などを描き、師である重政より「北尾政美(きたお・まさよし)」の名をもらいました。
▲北尾政美 『来禽図彙』 寛政2~3年(1790~91)頃
寛政6年(1794)、政美は津山藩・松平家のお抱え絵師となります。浮世絵師が藩主お抱えの絵師になるのは、当時とても珍しいことでした。このようなことからも、政美の画力が抜群に高かったことが伺えます。
寛政9年(1797)になると名前を北尾政美から鍬形蕙斎と改め、幕府の奥絵師・狩野惟信(これのぶ)に入門。狩野派の絵を学ぶ一方で、蕙斎が描いたのが「略画」でした。
▲鍬形蕙斎 『鳥獣略画式』寛政9年(1797)
◆ゆるさ炸裂! この脱力感がたまらない
▲鍬形蕙斎 『人物略画式』寛政11年(1799)
「略画」とは読んで字のごとく、簡略化した絵のこと。
威風堂々とした狩野派の画風とは異なり、対象の特徴を抜き取って極力シンプルに描いたものが略画です。
蕙斎に限らず多くの絵師が「略画」を描いていますが、彼の絵は人気が高く、様々な略画を手がけました。
▲鍬形蕙斎 『人物略画式』寛政11年(1799)鎧武者もこの通り。安定のユルさ。
中でも『人物略画式』は、あの「北斎漫画」に影響を与えたとも言われています。また、蕙斎の鳥瞰図に似た構図の作品を北斎が世に出したこともあったため「北斎は人の真似ばかりな気がするんだよなあ。彼がオリジナルでやったことってある?」というようなことをボヤいたこともあったとか。(斎藤月岑『武江年表』による)
▲鍬形蕙斎 『人物略画式』寛政11年(1799)確かに北斎漫画にはこういうカットが出てきますね……(笑)
いかにもプロの絵! というものではなく、「これなら私にも描けるかも?」と思わせる親しみやすさも人気の理由のひとつだったのかもしれませんね。このような略画は絵手本(絵のテキストブック)としても好評で、多くの人に愛されました。
略画の中には下のような絵も。まるでレオナルド・ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』のようです。
◆200年経ってもかわいい! 鳥獣略画式の魅力
蕙斎が描いた略画の中でも、冒頭でご紹介した『鳥獣略画式』は圧倒的な可愛さ! 一見とぼけたように見えますが、それぞれの特徴を絶妙に掴んだ隙のない絵です。
『鳥獣略画式』は、現在龍谷ミュージアム(京都)にて開催中の「秋季特別展 日本の素朴絵」で観ることができます。
こちらは三井記念美術館(東京)で開催されたときのレポート。
▶ゆるい・かわいい・たのしい だけじゃない!【日本の素朴絵】展は底力がすごい!
じわじわとファンを増やしつつある蕙斎。ほかにも関連する話題を見かけるようになりました。
『鳥獣略画式』や『人物略画式』に登場するモチーフたちがいきいきと動く「ゆめみのえ」は、アニメーション作家の山村浩二さんの作品です。
また、北斎漫画などを扱う版元の芸艸堂からは、略画式の豆本や、マスキングテープなどのグッズも出ています。
幅広い画風で当時の人々を魅了した鍬形蕙斎。今ではマイナーな存在になってしまいましたが、その絵は現代でも魅力的に光っています。
いつかまとまった形で作品を展覧できる日が来ることを願い、これからも注目していきたいと思います!
▲日本郵政株式会社 切手 動物シリーズ第2集「鳥獣略画式」
こちらの「鳥獣略画式」の切手は、その愛らしさに品切れとなる郵便局もあったそう。Twitterでも話題になっていましたね。
動物シリーズ第2集の切手が、7月30日(火)から全国の郵便局で発行されます。江戸時代の浮世絵師・鍬形蕙斎(くわがたけいさい)「鳥獣略画式」に登場する、江戸時代に描かれた可愛い動物たちがデザインされています。 pic.twitter.com/4amZ8QCh1R
— 公益財団法人 日本郵趣協会 (@kitteclub) May 30, 2019
作者は江戸時代の絵師、鍬形蕙斎(くわがた・けいさい)。江戸時代にこのキャラを描けるセンス、ちょっとびっくりですよね。実は蕙斎、今では知る人ぞ知る絵師となってしまいましたが、当時は「北斎嫌いの蕙斎好き」と言われるほど、葛飾北斎と肩を並べる人気絵師だったのです。
◆畳屋の息子から 藩主お抱えの絵師に!?
▲北尾政美 《仮名手本忠臣蔵三段目》 寛政~文化元年(1790~1804)頃
鍬形蕙斎は、明和元年(1764)、江戸の畳職人の家に生まれました。本姓は赤羽、名は紹真(つぐざね)。幼いころから絵の才に長けており、浮世絵の北尾派の祖である初代・北尾重政の門下に入ります。※鍬形蕙斎は後に改めた名前となります。
弱冠15歳で「黄表紙」と呼ばれる娯楽本の挿絵を手掛け、浮世絵師デビュー! その後、役者絵や花鳥画などを描き、師である重政より「北尾政美(きたお・まさよし)」の名をもらいました。
▲北尾政美 『来禽図彙』 寛政2~3年(1790~91)頃
寛政6年(1794)、政美は津山藩・松平家のお抱え絵師となります。浮世絵師が藩主お抱えの絵師になるのは、当時とても珍しいことでした。このようなことからも、政美の画力が抜群に高かったことが伺えます。
寛政9年(1797)になると名前を北尾政美から鍬形蕙斎と改め、幕府の奥絵師・狩野惟信(これのぶ)に入門。狩野派の絵を学ぶ一方で、蕙斎が描いたのが「略画」でした。
▲鍬形蕙斎 『鳥獣略画式』寛政9年(1797)
◆ゆるさ炸裂! この脱力感がたまらない
▲鍬形蕙斎 『人物略画式』寛政11年(1799)
「略画」とは読んで字のごとく、簡略化した絵のこと。
威風堂々とした狩野派の画風とは異なり、対象の特徴を抜き取って極力シンプルに描いたものが略画です。
蕙斎に限らず多くの絵師が「略画」を描いていますが、彼の絵は人気が高く、様々な略画を手がけました。
▲鍬形蕙斎 『人物略画式』寛政11年(1799)鎧武者もこの通り。安定のユルさ。
中でも『人物略画式』は、あの「北斎漫画」に影響を与えたとも言われています。また、蕙斎の鳥瞰図に似た構図の作品を北斎が世に出したこともあったため「北斎は人の真似ばかりな気がするんだよなあ。彼がオリジナルでやったことってある?」というようなことをボヤいたこともあったとか。(斎藤月岑『武江年表』による)
▲鍬形蕙斎 『人物略画式』寛政11年(1799)確かに北斎漫画にはこういうカットが出てきますね……(笑)
いかにもプロの絵! というものではなく、「これなら私にも描けるかも?」と思わせる親しみやすさも人気の理由のひとつだったのかもしれませんね。このような略画は絵手本(絵のテキストブック)としても好評で、多くの人に愛されました。
略画の中には下のような絵も。まるでレオナルド・ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』のようです。
▲鍬形蕙斎 『人物略画式』寛政11年(1799
◆200年経ってもかわいい! 鳥獣略画式の魅力
蕙斎が描いた略画の中でも、冒頭でご紹介した『鳥獣略画式』は圧倒的な可愛さ! 一見とぼけたように見えますが、それぞれの特徴を絶妙に掴んだ隙のない絵です。
▲鍬形蕙斎 『鳥獣略画式』寛政9年(1797)
▲鍬形蕙斎 『鳥獣略画式』寛政9年(1797)
▲鍬形蕙斎 『鳥獣略画式』寛政9年(1797)
『鳥獣略画式』は、現在龍谷ミュージアム(京都)にて開催中の「秋季特別展 日本の素朴絵」で観ることができます。
こちらは三井記念美術館(東京)で開催されたときのレポート。
▶ゆるい・かわいい・たのしい だけじゃない!【日本の素朴絵】展は底力がすごい!
じわじわとファンを増やしつつある蕙斎。ほかにも関連する話題を見かけるようになりました。
『鳥獣略画式』や『人物略画式』に登場するモチーフたちがいきいきと動く「ゆめみのえ」は、アニメーション作家の山村浩二さんの作品です。
また、北斎漫画などを扱う版元の芸艸堂からは、略画式の豆本や、マスキングテープなどのグッズも出ています。
記念切手の発売より、じわじわと注目を集める鍬形蕙斎の『鳥獣略画式』。その中から人気の絵柄をおさめたマスキングテープができました!
— 芸艸堂 (@unsodo_hanga) October 11, 2019
一匹ずつ切り取るもよし、ずらりと並べるもよし👍
絵柄がよくわかる太めの27ミリ幅です。
芸艸堂店舗やweb、各ミュージアムショップ等で順次取扱開始しています❗️ pic.twitter.com/hLIVMylU0h
幅広い画風で当時の人々を魅了した鍬形蕙斎。今ではマイナーな存在になってしまいましたが、その絵は現代でも魅力的に光っています。
いつかまとまった形で作品を展覧できる日が来ることを願い、これからも注目していきたいと思います!