殺されたゴッホ。そして映画と展覧会。

2019/8/27 22:30 Tak(タケ) Tak(タケ)

ゴッホが自殺を図ったとするこれまでの定説に異を唱える人がここ数年出てきたのをご存知でしょうか。

最も注目を集めたのが、2011年に出版された『Van Gogh: The Life』の著者である、スティーブン・ネイファー(Steven Naifeh)氏とグレゴリー・ホワイト・スミス(Gregory White Smith)氏による他殺説です。


Van Gogh: The Life
Steven Naifeh (著), Gregory White Smith (著)

自分で左胸の下を撃ったにしては、銃弾の挿入角度がおかしい点や、ゴッホの手に火薬の跡が残っていなかったことなどを、膨大な資料を検証し「ゴッホ他殺説」をこの本で唱えました。

日本語翻訳版は出ていませんが、ネットで調べるとゴッホ殺人事件の犯人の意外な実像が分かります。

この他殺説についてゴッホ美術館は否定の立場を貫いています。ただ、よく読むとそこにも人を惹き付けてやまないゴッホの魅力が隠されているのです。

『Van Gogh: The Life」をベースに2016年1月にフランスで刊行されたこちらの小説はいち早く日本語翻訳本が文庫本で出ています。以前、青い日記帳でも紹介しましたが、これ読まずしてゴッホは語れませんよ!


殺されたゴッホ
著/マリアンヌ・ジェグレ 訳/臼井美子 訳/橘 明美

画家ゴーギャンとの共同生活の失敗、弟テオに対する罪悪感や社会からの疎外感……。2011年にアメリカで刊行され評判となったゴッホの伝記(ノンフィクション)に書かれた新説に基づき、ゴッホが残した手紙や日記類、彼をめぐるさまざまな人々の視点から、ゴッホの苦悩と情熱が、臨場感あふれる文体で語られる。
なぜ、誰にゴッホは殺されたのか? 殺されなければならなかったのか? ゴッホ最後の2年間と死の真相に迫る小説。

今年の秋はゴッホ関連の映画と展覧会があります。今までの解釈とは違うゴッホ他殺説を知ることで、よりゴッホの本質に迫れるはずです。


映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」
© Walk Home Productions LLC 2018

11月8日(金)新宿ピカデリー他 全国順次ロードショー

監督・脚本:ジュリアン・シュナーベル 『潜水服は蝶の夢を見る』
脚本:ジャン=クロード・カリエール『存在の耐えられない軽さ』
出演:ウィレム・デフォー 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』、ルパート・フレンド『スターリンの葬送狂騒曲』、マッツ・ミケルセン 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、オスカー・アイザック 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
マチュー・アマルリック『潜水服は蝶の夢を見る』、エマニュエル・セニエ 『潜水服は蝶の夢を見る』  配給:ギャガ、松竹 © Walk Home Productions LLC 2018
原題:At Eternity’s Gate/2018/イギリス・フランス・アメリカ/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/111分/字幕翻訳:松岡葉子


「ゴッホ展」

会期:2019年10月11日 (金) 〜 2020年1月13日 (月)
会場:上野の森美術館(兵庫県立美術館へ巡回)
主催:産経新聞社、BS日テレ、WOWOW、ソニー・ミュージックエンタテインメント、上野の森美術館
後援:オランダ王国大使館
協賛:第一生命グループ、大和証券グループ、髙松建設、NISSHA、アトレ、関電工、JR東日本
協力:KLMオランダ航空、日本航空、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン
総合監修:ベンノ・テンペル(ハーグ美術館館長)
公式サイト:https://go-go-gogh.jp/

今年の芸術の秋は、読書に映画鑑賞そして展覧会といずれもゴッホづくしとなりそうです。それぞれが非常に上手くリンクしています。

映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」を一足お先に試写会で観てきましたが、ゴッホファン感涙の素晴らしい作品に仕上がっています。監督が元画家であることも大きな要因となっています。

旧来の自殺説では捉えきれない新たなゴッホ像を映画や展覧会そして本でじっくりと味わって下さい。

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