今年も胸アツの小学生ラグビー大会!舞台裏では「ラグビーで復興支援」に賛同集まる
昨年のこの時期、小学生ラグビーの大会「シャイニングアークスカップ」にいたく感動したいまトピ編集部。
(関連記事:小学生ラグビーが今こんなにもアツいって知ってた?)
今年も熱い戦いを3月2日~3日の2日間にわたって取材しました。(当日の様子はシャイニングアークスオフィシャルサイトにて掲載しております。)
主催のNTTコミュニケーションズ シャイニングアークスがホームグラウンドを浦安市へ移したので、本大会も新グラウンドで開催。
来るラグビーワールドカップ2019日本大会で強豪国の練習に使われるというチーム自慢の天然芝の上を、小学生ラガー・プレーヤーたちが力いっぱい駆け回りました。
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今年の目玉は、震災被災地の復興支援として招待するチームが県選抜になったこと。
昨年はラグビースクール単位での招待だったのに対し、より公平なしくみを目指したそうです。
招待を受けた岩手県選抜も熊本県選抜もそれぞれ県内4つのスクールから選手が集まる精鋭チームとなり、プレーもよりハイレベルに。熊本は参加19チーム中5位、岩手は3位と好成績を残しました。
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▲5位 熊本県選抜
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▲3位 岩手県選抜
空き時間にはスペースを見つけて体を動かす子どもたち。
女の子が集まって熱心に練習する様子に目を引かれ、少し話を聞かせてもらいました。岩手県スクール選抜の女子選手たちです。
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ごく自然に寄り集まって練習していた4人ですが、実は別々のチームからこの選抜チームに参加したのだとか。
本大会のためにスクール合同の練習をくり返したそうなので、そこで打ち解けたのでしょうか。
ちなみに、お父さんやお兄ちゃんがラガーマンだったり、お母さんがラグビー好きだったり、みんなご家族がきっかけでラグビーを始めたといいます。
4人に好きなプレーを聞いてみると、全員の答えがきれいにそろいました。
「タックル!!」
すぐさま「男子を倒したい!」と力強い理由が語られます。
これもほとんど異口同音。ボールを持って快走するプレーや鮮やかなパス、ディフェンスの裏をつくキックなどが挙がるかと思ったのですが、4人が大好きなのは、たった今も練習していたタックルでした。
ラグビーがほかのスポーツのように大会を早くから男女別にしないのは、女子の競技人口の少なさが主な理由だと思われますが、男女混合で試合ができる期間があることが、選手にとっては他にはないやりがいや面白みにつながっているのかもしれません。
岩手から遠征の4人。東日本大震災の当時はまだ幼稚園に通う年頃です。
「どんなことを覚えていますか?」と尋ねてみると、「ろうそく」という言葉が返ってきました。
送電が止まって、ろうそくの灯りで暮らした日々。説明する表情も声も、さっきまでと変わりません。
でも、一人が「泣いちゃった」と答えると「あ、それはわたしも」「わたしも一回」と続きます。
あっけらかんと答えてくれた声に胸締めつけられる思いがしたとき、もう一人が告白しました。
「(地震発生の瞬間)わたしは昼寝してて、全然起きなかった!」3人はびっくりして「えー」「嘘でしょ」と言ってまた笑いだしました。
「今日はいいタックル決めてね」と声をかけ、短い取材はお開きに。4人はよく通る声で返事をくれて、再びタックル練習に戻っていきました。
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実は今回の大会運営費は一部をクラウドファンディングでまかなっています。チームがクラウドファンディングを利用するのは今回が初めてのことでした。
選手自らが考案した特典チケットを販売し、その売り上げを全額、大会運営資金にするというもの。
「ラグビーを通じて被災地支援!」を掲げ、その理念に29人と2社、合計39万円もの熱い支持が集まったということです。
チケットは全3種類。クラブハウスの見学やVIP席からの試合観戦を楽しめる「体験Arcs!」に、選手とのランチや筋トレ、ラグビー練習を体験できる「筋肉Arcs!」、選手たちがチケット購入者の職場やイベントに出向く「出張Arcs!」が用意されました。
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支援を広く一般から募ることにした理由を、発案者の須藤拓輝選手に聞きました。
「この大会で、ラグビーを通じた復興支援に取り組んでいることを、たくさんの人に知ってもらいたいと思ったのが一番の理由です。いろんな人に大会づくりに参加してもらいたくて、お金を集めさせてもらうことにしました」。
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今回の出資者向け特典イベントのうち「筋肉Arcs!」は3月9日に早くも開催されました。(※こちらも取材しましたので、近日シャイニングアークス オフィシャルサイトにてレポートします。)
こうして温かい支援を受けた大会は、冷たい風雨にも負けず、2日間の全日程を完走。前回大会もそうでしたが、基本に忠実なチームプレーや、トップリーガーも驚く個人技、そしてグラウンドの内外で子どもたちが見せるスポーツマンシップに魅せられました。
決勝戦のスコアは25-0。準優勝チームは途中から敗色濃厚を肌身に感じながらプレーしていたことと思います。
それでも懸命にラインをつくり、体を張ったディフェンスを続けながら勝機を探していました。
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なかにはケガをして、交代後にピッチサイドで泣きだす子もいました。痛くて寒くて、それにきっと悔しかった。この日は東京マラソンの開催日で、ご存じのようにトップアスリートでも体がこわばる寒さでした。
でも、その震える体をウィンドブレーカーで包んであげるリザーブの子がいました。
ピッチへ声援を送りながら、泣きやまないチームメイトをときどき振り返っては、ただ黙ってウィンドブレーカーを掛け直していました。
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優勝チームのプレーはお見事でした。個々の技術もすばらしいのですが、チームの約束事が徹底されて見えました。
アタックで誰かが前へ出れば、それがどんなに高速でもフォローにつく選手が必ずいて、ディフェンスの場面ではひとところに人数をかけすぎないで、チーム全体が1匹の生き物のように均整の取れた動きをしていました。
試合前に披露したハカもそうでしたが、この日までに膨大な時間の努力があったことを、10分ハーフのこの1戦を見るだけでもまざまざと感じさせてくれました。
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ノーサイドを迎え、アフターマッチ・ファンクションも終わって、準優勝チームのキャプテンが仲間に円陣を呼びかけました。その日、彼がチームメイトを集めるところを見たのはこれが二度目でした。
数時間前に、別のゲームを制した後のこと。相手チームが泣きながら敗北を受け止めているのを見て、勝利を喜んでいた顔はぐっといかめしいものに変わりました。
「もう、優勝するしかなくなった。負けたチームのためにも、俺ら優勝するぞ」。
そんな思いで臨んだ決勝戦に、それでも負けることがある。チームメイトに投げかけたメッセージは、今度もとても短かいものでした。
「優勝できなかったけど、準優勝も立派な結果だから、胸張って帰ろう。今日、頑張って――楽しかったね。またここから頑張ろう」。
手で涙をぐいぐい拭いて、声をつまらせながら「楽しかった」と言い切りました。
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閉会式のために整列している間も涙が止まらない子どもたち。
シャイニングアークスの金正奎キャプテンが一人ひとり、小さな背中をたたいて回りました。
「その気持ち、大事にしよう」。それこそ子どもの頃から、今も第一線で、勝ったり負けたりをくり返す金選手から、慰めではなくて年下の戦友へ送るようなメッセージでした。
勝ったチームも負けたチームも、プレーのレベルが高い選手も、まだこれからの選手も、きっとこの日、大切なものを持ち帰っていきました。
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この大会が特別なのではなくて、スポーツだからこうで、ラグビーだからこうなのでしょう。
次回があれば、子どもたちの笑顔にまた会いに来ようと思いました。