国宝「曜変天目」だけじゃない!見どころ満載の「藤田美術館展」の全貌とは。

2019/3/1 21:00 yamasan yamasan
小さな空間に広がる星空のような小宇宙。
見る角度によって変化する神秘的な輝き。


国宝 曜変天目茶碗(部分) 中国・南宋 藤田美術館

世界に三碗しかなくて、その三碗とも日本にあって、それもすべて国宝という「曜変天目茶碗」。 これほど貴重な「曜変天目茶碗」が、今年の春はなんと三碗とも同時期に公開されるのです。

3月21日~5月19日 MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)
  「大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋」
4月13日~6月2日 静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区)「日本刀の華 備前刀」
4月13日~6月9日 奈良国立博物館(奈良市)
  「国宝の殿堂 藤田美術館展-曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき-」

こんなめぐり合わせはもう二度とないのでは、というくらいの貴重な機会です。
一度ご覧になられた方も、同時期に三碗を見るとまた印象が変わるかもしれません。
展覧会は滋賀、東京、奈良の三カ所に分かれていますが、気候のいいこの季節にそれぞれの美術館・博物館をたずねてみてはいかがでしょうか。

曜変天目茶碗の詳しい解説は「いまトピアート部」部長、人気アートブロガーのTakさんのコラムをご覧ください。
【激レア】チャンスを逃したら一生後悔!?世界に3碗しか存在しない「曜変天目」を同時公開!

さてアートファンの間では「曜変天目茶碗」ですっかり盛り上がっていますが、展覧会の魅力はそれだけではありません。
今回紹介する奈良国立博物館「国宝の殿堂 藤田美術館展-曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき-」では、明治期に大阪で活躍した実業家 藤田傳三郎氏とその息子平太郎氏、徳次郎氏の親子二代にわたって収集した国宝9件、重要文化財53件を含む日本・東洋の豊富な美術工芸品のコレクションを所蔵する藤田美術館の名品の数々が展示されるのです。
(現在閉館中の藤田美術館は、2022年4月にリニューアルオープンします。)


【開催概要】
奈良国立博物館「藤田美術館展-曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき-」

会  期 2019年4月13日(土)~6月9日(日)
      前期 4月13日(土)~5月12日(日)
      後期 5月14日(火)~6月9日(日)
      会期中、一部の作品の展示替えがあります。
開館時間 午前9時30分~午後5時(毎週金曜日は午後7時まで)
     入館は閉館の30分前まで
休館日  毎週月曜日、5月7日(火) 
     ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・振休)は開館
観覧料金
 当日    一般 1,500円 高校・大学生 1,000円 小・中学生 500円
 前売・団体 一般 1,300円 高校・大学生  800円 小・中学生 300円
*団体は20名以上
*前売券の販売は3月13日(水)から4月12日(金)まで
*障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
*本展の観覧券で名品展(なら仏像館・青銅器館)もご覧になれます。
特別チケット
 早割ペアセット券  2,000円(藤田美術館展の一般観覧券2枚)
  販売期間 2月13日(水)~3月12日(火)
  販売場所 ローソンチケット、チケットぴあ、イープラス
 曜変天目茶碗ファギュア根付セット券 2,000円
  (藤田美術館展の一般観覧券1枚+グッズ引換券)
  販売期間 3月13日(水)~4月12日(火)
  販売場所 ローソンチケット、チケットぴあ、イープラス
  *口径約4㎝のミニチュアフィギュア。限定500セット。
  *グッズは会場の特設ショップでも販売予定。

公開講座などの関連イベントや、国宝「曜変天目」を公開する三館を巡る相互割引などもあります。詳しくは奈良国立博物館公式サイトをご覧ください。


それではさっそく魅力たっぷりの「藤田美術館展」の見どころを紹介したいと思います。
※掲載した画像は「藤田美術館展」広報事務局から、広報用にいただいたものです。
※以下の見どころ紹介は、報道発表会で行われた、奈良国立博物館学芸部サービス室長の岩井さんによる見どころ解説、藤田美術館の藤田清館長と『フランス人がときめいた日本の美術館』の著者ソフィー・リチャードさんのトークショーをもとに構成しました。


トークショーの様子。右から藤田美術館・藤田清館長、ソフィー・リチャードさん。

見どころ1 国宝「曜変天目茶碗」がぐるり360度から鑑賞できる!



国宝 曜変天目茶碗 中国・南宋 藤田美術館

やはり何といっても国宝「曜変天目茶碗」は見逃すわけにはいきません。
360度から見ることができるので、ぐるりと回って変化する輝きを楽しむことができるのはうれしいです。そして、さらにうれしいことに会期中、全会期展示されるので、「見に来たけど展示されていなかった」ということがありません。

展覧会は9章構成になっていて、第1章のタイトルはそのものずばり「曜変天目茶碗と茶道具」。
第1章では他にもかわいらしい「交趾大亀香合」にも注目です。


重要文化財 交趾大亀香合 中国・明 藤田美術館

傳三郎氏が長年あこがれ続けてきたこの「交趾大亀香合」を入手できたのは、亡くなる10日前。傳三郎氏のコレクター人生最後のコレクションでした。
「あえて冒頭に展示しました。」と奈良国立博物館の岩井さん。
私たちも自分が欲しかったものを入手できた時のように喜びをかみしめながら見てみたいものです。
また、コレクターというとコレクションしたものでその人の好みがわかるのですが、傳三郎氏には美術品を守ろうという強い思いがあったので、幅広い分野で系統立てて収集していました。そのため傳三郎氏の個人的な好みはわかりづらかったのですが、藤田館長はこうお話されていました。「亀はとてもかわいらしい顔をしています。(傳三郎氏は)意外とかわいいものが好きだったのでは。」
「交趾大亀香合」も全会期展示です。

見どころ2 墨蹟や古筆も充実-現存最古の詩画軸が見られる!


茶室の床の間に掛けられる禅僧の書・墨蹟や和歌などの古筆も茶会の重要なアイテムでした。 こちらは百人一首の和歌を書写した国宝「深窓秘抄」(全会期展示)。
「裁断されて掛軸になることが多い古筆ですが、こちらは完本として残っている貴重な作品です。」(岩井さん)。

国宝 深窓秘抄 平安時代 藤田美術館

ここでの注目は現存する最古の詩画軸「柴門新月図」です。詩画軸とは、下方に描かれた画題にちなんだ漢詩を添えたもので、山水画ファンの私としてはたまらない作品なのですが、前期(4月13日~5月12日)だけの展示なので要注意です。

国宝 柴門新月図(部分) 室町時代 応永12年(1405) 藤田美術館

見どころ3 奈良ゆかりの仏教美術が奈良に里帰り!

明治維新後の廃仏毀釈の嵐の中、廃寺になった寺院も多く、寺宝も破壊され、また、廃寺にならなくても寺宝を手放さなくてはならず、海外に流出したものも多くありました。
そのような惨状を見かねた傳三郎氏は、自ら私財を投じて美術品の収集を始めたのです。
その中でも、今回の展覧会の注目は、奈良の寺院ゆかりの至宝が多く展示されていること。まさにこの奈良の地で開催されるのにふさわしい展覧会なのです。

こちらは「第3章 物語絵と肖像」に展示されている、奈良・興福寺伝来の国宝「玄奘三蔵絵」(巻1・2:前期展示/巻3・4:後期展示)。

国宝 玄奘三蔵絵 巻第三(部分) 鎌倉時代 藤田美術館

「法相宗の興福寺にとって、法相宗の祖である玄奘三蔵の絵は大切に扱われていて、あまり見られていなかったのでしょう。そのおかげでとてもきれいに色が残っています。」(岩井さん)。

奈良県天理市にあって、「大和の日光」(天理市ホームページより)とまで言われた大伽藍を誇った内山永久寺(奈良県天理市)は、廃仏毀釈の中、徹底的に破壊されました。
その内山永久寺に伝来した寺宝が、国宝「両部大経感得図」(前期展示)。



国宝 両部大経感得図 藤原宗弘筆 平安時代 保延2年(1136) 藤田美術館

後期に展示される国宝は、鎌倉時代に作られた「紫式部日記絵詞」。
もとは絵巻でしたが、すでに江戸時代には分断され、藤田美術館には詞書五段、絵五段のみ伝わっています。

国宝 紫式部日記絵詞(部分) 鎌倉時代 藤田美術館

「第4章 仏像」には、奈良・興福寺に伝来する快慶作の重要文化財「地蔵菩薩立像」(全会期展示)。
 
重要文化財 地蔵菩薩立像(部分) 快慶作 鎌倉時代 藤田美術館

現在、リニューアル工事のため閉館している藤田美術館のコレクションを預かっている奈良国立博物館では、作品の学術調査を行っていますが、新たな発見がありました。
「鎌倉時代の仏像は寄木造が常識でしたが、エックス線CTスキャンの結果、『地蔵菩薩立像』は、もとは一本の木で造られた一木造(いちぼくづくり)であることがわかったのです。」(岩井さん)

奈良にゆかりの美術品はまだまだ続きます。

「第5章 尊像と羅漢」では、奈良・西大寺伝来と伝えられる全長3メートルの「仏像彩画円柱」が展示されています。こちらは館外初公開で、全会期展示です。
全部で8本あって、仏堂内陣の柱と思われるものです。
制作当初の彩色がよく残っている点でも貴重なもので、柱まで収集するというところに、「傳三郎氏の趣味の域を超えた文化財を保護するという義務感が感じられます。」(岩井さん)。

仏像彩画円柱(部分) 鎌倉時代 藤田美術館

「第6章 荘厳と法具」では、仏教工芸品が展示されています。
前期には奈良・薬師寺に伝来したとされる国宝「花蝶蒔絵陜軾」が展示されます。

国宝 花蝶蒔絵陜軾 平安時代 藤田美術館

後期には、国宝「仏功徳蒔絵経箱」が展示されます。

国宝 仏功徳蒔絵経箱 平安時代 藤田美術館

「第7章 仏典」では、奈良・薬師寺に伝来した国宝「大般若経」(薬師寺経)が展示されます。
 
国宝 大般若経 奈良時代 藤田美術館

「第8章 面と装束」では、天平勝宝4年(752)の東大寺大仏開眼に用いられた「伎楽面 酔胡従」(奈良時代)が展示されます。
傳三郎氏は、能を愛し、能面や能装束も収集しました。その多くは戦災で失われましたが、伎楽面や舞楽面は現在まで残されています。

「第9章 多彩な美の殿堂」に展示されているのは重要文化財「埴製枕」(古墳時代)。こちらは仏教美術ではありませんが、奈良県天理市中山町燈籠塚古墳から出土されたものです。

さて、ここまで藤田美術館の幅広いコレクションを駆け足で紹介してきましたが、まだまだ紹介しきれないほどの至宝が展示されています。ぜひその場でじっくりご覧になっていただければと思います。

最後になりますが、参考までに国宝9件の展示期間をまとめてみました。

国宝9件の展示スケジュール
全会期展示(4月13日~6月9日)
 「曜変天目茶碗」
 「深窓秘抄」
 「玄奘三蔵絵」(巻1・2:前期展示、巻3・4:後期展示)
 「大般若経」(会期中展示替えあり)
前期のみ展示(4月13日~5月12日)
 「柴門新月図」
 「両部大経感得図」
 「仏功徳蒔絵経箱」
後期のみ展示(5月14日~6月9日)
 「紫式部日記絵詞」
 「花蝶蒔絵陜軾」

国宝9件すべてを見るには前期、後期の2回来なくてはなりません。
私は4月中に関西方面に出かけて、その時はMIHO MUSEUMまで足を伸ばして、ゴールデンウィーク後にもう一度、奈良国立博物館に来ようと考えています。それに国宝「曜変天目茶碗」のミニチュアフィギュアも気になるところです。
みなさまもぜひ旅行の計画を立ててみてはいかがでしょうか。