【今週日曜で閉店】中央線最強の古書店『象のあし』常軌を逸したセールは「祭り」だ (1/2)
「これは何かが起こっている」
それはツイッターで見かけた、フォロワー数十人の“本屋さん”のアカウント。
しかしそこには、謎の人物(ツイッター管理人)の常軌を逸した熱量と、その店長の愛に溢れた人柄が浮き彫りになっていた。
リアル店舗に行けない人のために会場の様子を実況してあげてください。戦利品も。レジ渋滞はごめんなさい。ほぼほぼ一冊100円か八割引だから、サービスは期待するなよ。手動レジ、ワンオペであの大群を捌くのは無理だ。
— 象のあし閉店告知(残2日)御来店のお客様全員に御挨拶をさせて頂きたく、どうぞお声かけお願いします。 (@zounoashiheiten) 2019年1月19日
それではレジ横でマイメン店主のボディガードに行ってきます
Rock on!! 象のあし
そもそも昨日も店内商品ディスプレイも整理して下さったのはお客様でして。先日は某バンドの面々が劇的に整えて下さって。翌日にはパーティの後みたいに(祭りの後?)なってましたが。散らかっていると本は探せないし営業は店主一人だし。明日からの土日は、どうなるの?
— 象のあし閉店告知(残2日)御来店のお客様全員に御挨拶をさせて頂きたく、どうぞお声かけお願いします。 (@zounoashiheiten) 2019年1月18日
と、いうわけでお願いです。 pic.twitter.com/pzSFcmL6hg
荻窪駅から徒歩数分の場所にある古書店
「象のあし」
その不思議な店名に惹かれると共に、その圧倒的に渦巻く沸々としたものに興味を持った私は、滅多に訪れることのない町、荻窪へとすぐに歩を進めた。
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過剰なまでにどこからどう見ても「閉店セール」。
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店外に積まれた雑誌。「FOCUS」などだいぶ前に休刊した写真週刊誌などがある時点で、ブックオフなどとは一線を画している。
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店内に入ると、謎の人物。そう、彼が異様な熱量のツイッターを日々更新し続ける人物、通称「泥」氏。
レジに付きっきりにならざるを得ない店長に代わり、接客、案内、運搬、在庫下ろし、探し物の手伝い、列整理、ネットでの情報拡散、世間話などを担い、忙しく動き回る。
非常に個性的(会えばわかる)な人物だが、この店の閉店を聞き立ち上がった「有志」、つまりボランティアであるそうだ。店員じゃないのかよ!!
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今もある週刊誌の在りし日の姿が大量に平積み。「田中」って、角栄だよね…私、当然生まれてません。
ほぼ100円。
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スポーツ誌などのコーナー。昭和期〜平成初期のプロレス本もあり。とても下まで見れない量。
これは2回目の来訪時に撮ったものながら、初回来訪時より
減るどころか倍くらいに増えてる。
ほぼ100円。
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グラビア写真集も莫大な量。眞鍋かをり、佐藤江梨子、インリン・オブ・ジョイトイ、平山綾、内山理名、南明奈…時代を感じます。「sabra」は青春。私ですか?当時(高校生時代)は藤本綾ファンでした。騒動自体はどうでもよくて、それにより一線を退いてしまったことがショックでした
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そんな私が最後にファンだったグラドル、堀田ゆい夏
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私は疎いですが、高価な美術本や画集、日本文学、海外文学のハードカバー本(初版本多数)、民俗学などの資料も大量に。80%オフなので、5000円の画集でも1000円。
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文庫本やコミックも、地平線まで届きそうです
ほぼ100円。100円のものは50円。
ここ「象のあし」は22年前、都内に展開する古本チェーン店のうちの一店として始まったお店。
当時は多くのチェーン店が存在していたものの、現在は二店舗を残すのみ。
(西荻窪の「ねこの手書店」、小岩の「どですか書店」)
かくいうこの店も例外ではなく、実は5年前に本社の意向で閉店に。
しかし、店に愛着を持っていた店長はここを自力で買取り、独立開業するに至ったのだ。
石井店長に話を聞いてみた。
自分のやっていたことを「クレイジーだった(笑)」と振り返る店長は、独立後、実は3年で区切りをつけようと考えていたそうだが、やはり愛着もありこうして5年続けることができたと語る。
「自分の年齢を考えたら、そろそろ区切りをつけて、違う環境に自分を置いてみたいと思ったんです」
従業員を削減し、今では一人で一日15時間近い実働時間で、年間362日オープン。経費もかかるため、収入はないに等しかったという。
しかしそれでも、店長の顔には一切の悲壮感はない。
晴れ晴れとした顔で地元住民と談笑し、挨拶し、会計が終わった客を一人一人出口まで送りだし、帰りを見送る。
当然レジは長蛇の列になるのだが、誰一人として嫌な顔はしていなかった。
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「でもね、すごく楽しかったですよ!個人でこんな規模の店は持てないですしね。お客さんもいい人ばかりだし。近所の人も、みんな顔見知りで。寄せ書きの色紙もあんなに集まって…びっくりしてます。本当に楽しかった」
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「最後に、みんなにドカン!と恩返しがしたくて。だからこんな値段設定にしたんです」
そう、これは「閉店セール」と銘打ってはいるものの、22年というこの地で育まれた多くの思い出や積み重ねを見送るための、壮大な「祭り」であった。
馴染みの地元住民に別れの挨拶をし、
ネットでこの騒ぎを聞きつけた元住民や過去の常連さんが駆けつけ、
さらには私のような一見にもその熱が届き、魔窟の発掘にやってくる。
そして、店長が次の人生へ向かう姿を見送る、そんな大きな祭りだ。
古書店というものは、確かに時代には取り残されつつあるのかもしれない。
あと10年、20年経って、どれだけの数が残るのかもわからない。
それでも、こういった形でしか出会えないまだ見ぬ本があり、その向こうに人がいて、そこに文化がある。
誰かのもとを離れた本に、一冊一冊店長が丁寧に値付けし、カバーをかけ、梱包し、また新たな誰かのもとに届ける、一期一会の温もりがある。
それを改めて知ることができた。
「象のあし」は1月20日(日)まで、深夜におよぶ時間まで営業中だ。
これを読んだ方は、最後に一度だけでも、大量の本と人が織りなす最後の祭りを体感しにいってほしいと願う。
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本を売りたくて祭りをやってません。閉店の御挨拶をしたいがためにやっております。八割引セールはその方便に過ぎません。22年やっていますとお引越しなさった方も多く、小学生の頃に本を買った方や転勤で疎遠になっていた方が御来店頂いています。どうぞ買い物は二の次で、祭りにご参加ください。
— 象のあし閉店告知(残2日)御来店のお客様全員に御挨拶をさせて頂きたく、どうぞお声かけお願いします。 (@zounoashiheiten) 2019年1月18日
「象のあし書店」
〒167-0043 東京都杉並区上荻1丁目24−19
営業終了時間: 23:00(延長あり?)
電話: 03-3392-2145
JR・丸ノ内線 荻窪駅 西口(北側)出口から徒歩約6分
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私が買わせて頂いたのは、特撮専門誌「宇宙船」のバックナンバーなど。
棚下のストック(捜索自由)から発掘しました。
次のページではここに載せきれなかったコーナーもレポート。