地味だけど本当はすごい3つの展覧会。

2019/1/14 12:00 yamasan yamasan
いまトピアート部ライターのyamasanです。
今年もよろしくお願いいたします。

さて、今年も「博物館・美術館に初もうで」に始まって、去年行かれなかったムンク展やルーベンス展に行ったりしてきましたが、アートファンのみなさまはいかがおすごしでしょうか。

今年第1弾のコラムでは、年末に行ってきた上海博物館の「董其昌書画芸術大展」と、「本当はすごい」都内の展覧会2つを紹介したいと思います。


上海博物館は一日半でも見きれなかった!

美術館や博物館の大きさや展示内容の充実ぶりを表すのに、よく「ルーブル美術館はとても一日では見きれないよ」とか言いますが、2泊3日の行程のうち、初日の午後と2日目まるまる上海博物館に入りびたりだったのに、今回も全フロア制覇は達成できませんでした。

上海博物館は4階建て。どのフロアも展示内容が質量ともにすごいので、どうしても時間がかかってしまうのです。
上海博物館の利用案内やフロア案内はこちらです。
上海博物館
開館時間 9時~17時(入館は16時まで)
入館料 無料
(入館人数は1日8000人まで。8000人を超えると入場制限あり。)
休館日 毎週月曜日(祝祭日を除く)
フロア案内
1階 中国古代青銅館、中国古代彫刻館、第一特別企画展会場
2階 中国古代陶磁器館、暫得楼陶磁器館、第二特別企画展会場、カフェ
3階 中国歴代絵画館、両塗軒書画室、中国歴代印章館、中国歴代書蹟館
4階 中国少数民族工芸館、中国古代玉器館、中国明清家具館、中国歴代貨幣館、
シルクロード中央アジア古銭室、第三特別企画展会場

上海博物館や上海の街の様子は前々回のコラムで紹介しています
【まだまだ間に合う】年末年始の海外旅行はここで決まり!


今回の一番のお目当ては「董其昌書画芸術大展」(会期は3月10日まで)。
会場は3階の中国歴代絵画館他。博物館の入口で荷物検査を受け、リュックを預け、はやる気持ちをおさえながらエスカレーターで3階まで上がりました。

王羲之と顔真卿、2人のビッグネームの人気はすごかった!

3階の会場入口では董其昌先生がお出迎え(左端の赤い服を着た人)。



そして、入口から中を見ると、そこにはいきなり長蛇の列!


この写真は2日目の朝イチの様子ですが、入口入ってすぐに中国歴史上の2人のビッグネームの書家、王羲之、顔真卿の作品が並んでいるので当然なのかもしれません。
左の方の青いジャケットの女性は学生ボランティア。館内には同じようなジャケットを着た男女の学生ボランティアが所どころにいて、英語でも対応してくれます。

入口すぐに展示されている王羲之の《行穣帖巻》はアメリカ・プリンストン大学美術館(下の写真)、顔真卿《楷書自書告身帖》は台東区立書道博物館の所蔵なので、今回は里帰り展示ですね。

あとで紹介しますが、顔真卿の《楷書自書告身帖》は、1月16日から東京国立博物館で開催される顔真卿展に展示されるので、12月23日までの展示で、その後、日本に「帰国」しました。
そして王羲之、顔真卿と並んで展示されているのは、前々回のコラムでも紹介した董源《夏山図巻》(上海博物館)。

そして北宋・徽宋皇帝(趙佶)の《竹禽図巻》(アメリカ・メトロポリタン美術館)


徽宋《竹禽図巻》は通期展示ですが、董源《夏山図巻》は2月4日までの展示で、2月5日からは同じく董源の《夏景山口待渡図巻》(遼寧省博物館)が展示されます。

董其昌の書画はボリュームたっぷり!

入口付近の混雑ぶりを見て、これから先が大変だ、と思っいましたが、人が集中していたのはそこだけで、あとはそれほど人も多くなく、比較的スムーズに見ることができました。もちろん、会期末が近づくともっと混雑してくるかもしれませんが。
(私が行ったときは写真撮影ができましたが、混雑状況などで変更されるかもしれませんので、必ず現地でご確認ください。)


前々回のコラムでも少し紹介しましたが、明末に活躍した董其昌(1555-1636)は、書家でもあり、画家でもあり、中国書画のコレクターでもありました。「董其昌書画芸術大展」は、その董其昌の書画を中心に、董其昌に影響を与えた人、董其昌の影響を受けた後世の人たちの作品で構成されています。
董其昌に影響を与えた人の中には、今まで紹介した人の他に元末四大家がいましたが、今回はその中の一人、私の大好きな倪瓚の作品も展示されていました。
倪瓚《六君子図》(上海博物館 1月22日までの展示)


次に董其昌本人の作品。
まずは山水画から。何とも言えないいい雰囲気を出してます。
董其昌《書画合璧巻》(遼寧省博物館 通期展示)。


董其昌《細瑣宋法山水図巻》(上海博物館 通期展示)。


続いて、先人たちに倣って描いた画風の異なる山水画が並ぶ図冊。
董其昌《丁卯小景図冊》(上海博物館 通期展示)


そして書。こちらは顔真卿の《裴将軍詩》を写した董其昌《臨顔真卿裴将軍詩巻》(上海博物館 通期展示)


最初はのびのびと書いているかな、という程度ですが、最後の方は奔放な筆遣いになる董其昌《行草書羅漢賛等書巻》は東京国立博物館の所蔵で、こちらも顔真卿展で展示されるので、12月23日までの展示でした(写真は以前、東京国立博物館東洋館で展示された時に撮影したものです)。






「大展」というだけあって、書画合わせて約150点(展示替えあり)の作品が展示されるので、これだけでも見ごたえ十分。初日の午後と、2日目の昼過ぎまでたっぷり時間を使って楽しみました。

ゆるキャラも楽しめる!

董其昌の影響を受けた後世の人たちの作品からは、かわいい鳥たちが描かれた朱耷(八大山人)(1626-1705)の《山水花鳥冊》をぜひご紹介したいです。






カフェで展覧会コラボスィーツ発見!

日本の美術展ではすっかおなじみのコラボスィーツですが、上海博物館にもありました!


上の写真は初めてトライした2階カフェで食べたランチです。お皿にのったスィーツがお米のケーキと緑豆ケーキ、それに紅茶がついた「董其昌セット」40元、奥がミックスサンド15元とコーヒー20元、そしておまけの中華菓子(手前のビニールの包装)。これで75元なので約1200円。
朝はホテルの中華朝食バイキングでしっかり食べて、あまりおなかがすいていなかったので、これで二人分。
米ケーキも緑豆ケーキもサクサク、どれも美味でした。
カフェの内装は明時代の家を再現しているので、装飾も凝っていて、とても落ち着いた雰囲気です。


中国絵画以外もすごいボリューム!

1階の第一特別企画展会場では、「中国歴代漆器芸術展」が開催されていました。
こちらは2月24日までです。




2階の第二特別企画展会場では、アメリカの南北戦争から第二次世界大戦までの80年間の絵画が展示されていました。
この展示は1月6日で終了しましたが、中国絵画以外でも特別展が開催されているのも上海博物館の魅力の一つです。
上海でメアリー・カサットに出会えるとは不思議な気分。下の写真手前がメアリー・カサット《サマータイム》です。


常設展示の青銅器や陶磁器、仏像をはじめとした彫刻の展示室も充実しているのですが、本当にさっと見ただけでした。
特別展を3つ見て、東京国立博物館なみの常設展示を見るくらいのボリュームですので、途中で休憩しながら少なくとも3日は見込んでいた方がいいかもしれません。

そして、今回はうれしいことに展覧会ごとの小冊子が作られていました。初日の夕方行ったときにはもう品切れだったのですが、2日目朝に行ったときは1階中央にある総合受付センターのラックに置いてあったので、1部ずついただいてきました。毎日決まった数だけ配布しているようなので、午前中の早い時間に行った方がいいでしょう。


日本でも中国の歴史上、3人のビッグネームの書が楽しめる!

さて、ここまで上海博物館の様子をお伝えしてきましたが、うれしいことにこの春は、国内でも3人の超大物書家の書を見ることができるのです。

一人は、東晋時代に活躍した王羲之(303-361)。
王羲之は、楷書、行書、草書の三体を芸術的に完成させた人で、「書聖」と称される、中国の書の歴史の中で第一のビッグネーム。
王羲之の名前は知らなくても、41人の文人たちを集め、水の流れに酒杯を流して、杯が目の前を通り過ぎないうちに詩がつくれないと罰としてその杯の酒を飲まなくてはならないという「蘭亭曲水の宴」を主催した人で、江戸時代の絵師たちも好んでこの題材の絵を描いているので、その絵ならどこかで見たことがある、という方もいらっしゃるのでは。

その王羲之の展覧会が、現在、東京国立博物館と台東区立書道博物館の連携企画で開催されています。


「王羲之書法の残影-唐時代への道程(みちのり)-」
東京国立博物館 東洋館8室
会 期  1月2日(水)~3月3日(日)
開館時間 9:30~17:00※金・土は21:00まで開館 (入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(ただし1月14日、2月11日は開館)
    1月15日(火)、2月12日(火)は休館
観覧料 一般 620円(520円)他(カッコ内は20名以上の団体料金)

台東区立書道博物館
会期    1月4日(金)~3月3日(日)
開館時間 9:30~16:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(ただし1月14日、2月11日は開館)
    1月15日(火)、2月12日(火)は休館
観覧料 一般・大学生 500円(300円)他(カッコ内は20名以上の団体料金)

会期中、東京国立博物館で書道博物館の、書道博物館で東京国立博物館の観覧券の半券を提示すれば、それぞれ団体料金で観覧できます(各種割引の併用は不可)。


東京国立博物館の王羲之展には新年に行ってきました。
王羲之《定武蘭亭序(呉炳本)》

王羲之展が開催されている東洋館8室には、中国の絵画も展示されているので、こちらもぜひ。
現在開催されているのは、新年らしく「吉祥-歳寒三友を中心に-」です(2月11日まで)。「歳寒三友」とは、日本でもおめでたいものとされる、松、竹、梅のことです。

東京国立博物館東洋館は、一部を除き写真撮影ができます。

そしてもう一人が、唐時代に活躍して、顔法と称される正統な書法によらない筆法を創出した顔真卿(709-785)。



特別展「顔真卿-王羲之を超えた名筆-」
会場  東京国立博物館 平成館
会期  1月16日(水)~2月24日(日)
開館時間 9:30~17:00※金・土は21:00まで開館 (入館は閉館の30分前まで) 
休館日  月曜日(ただし2月11日は開館)、2月12日(火)は休館
観覧料  一般 1600円(1400円/1300円)他
      (カッコ内は前売り/20名以上の団体料金)


「顔真卿展」の魅力は、あらためて詳しく紹介したいと思います。
(3人目の超大物書家は、顔真卿展でも書が展示される董其昌です。)

小学生の頃、新年になると誰もが書初めをした経験があるのではないでしょうか。
都内でも著名な書家の展覧会が開催されるこの機会に、書初めをしていた頃を思い出して、中国の書に親しんでみてはいかがでしょうか。