免震は美術館に学べ!今だから知りたい地震対策と美術品の保護

2018/9/16 10:25 明菜 明菜



免震設計だと、地震保険の保険料半額になるって知ってました?

え?あなたの家も免震にしたい?
いやいや、完成した建物を後から免震設計にするのは難しいんです。
建物と地面の間装置を入れないといけないのですよ。

でも、いくつかの建物は「後から免震」に成功しています。
例えば、国立西洋美術館三菱一号館美術館

あれっ?どっちも美術館だ!


◾️自然災害の対策は美術館に学べ!


大原美術館の洪水対策が話題になったように、美術館や博物館はあらゆる自然災害に備えて知恵を絞ってます。
すべては、この世に1つしか存在しない人類の宝物を守るため。



美術館・博物館のリスク管理はとてもシビア
今回は国立西洋美術館の免震装置を見学してきました!


◾️西美の裏メニュー免震装置とご対面


館内に入ったら、ミュージアムショップの奥へ。
階段でお手洗いのある地下へ向かいます。



すると、自動販売機のある休憩スペースが。
この小さい窓から、免震装置を見られるんです!



なんて素晴らしい免震装置なの!
建物の基礎と地盤の間にピタッと収まり、これは揺れを吸収しそう。
後付けとは思えませんね!


◾️美術館に免震が必要な理由


一番イヤなのは、地震で展示品がバタンと倒れること。
これを防ぐには、展示品をガチガチに固定するか、建物の揺れそのものを和らげるか。

よく聞く耐震とは、揺れに耐えて壊れにくい設計にすること。
倒れずともガシャガシャ揺れるので、美術館はワンランク上の地震対策をしたいところ。

そこで、免震
免震は、建物の揺れを和らげます。
例えば震度7で地面が揺れている場合、建物の中にいる人は震度4くらいに感じる、といった具合。


◾️折り紙つきの免震装置


実際に、2011年の東日本大震災西美の免震技術は裏付けされました。
敷地の最大加速度は 265cm/s^2 だったのにも関わらず、建物の最大加速度はわずか 100cm/s^2 !

翻訳すると、震度5強の揺れが震度4くらいに和らいだ、ということです。
震度4程度であれば、大丈夫そうな気がしますね!
(正確に加速度と震度を対応づけることはできないので、雰囲気です)

揺れが和らぐということは、中にいる人間も守られるということ。
美術品にもアートを見る人にも優しい建物であることが、証明されたのです。


◾️レトロな建物にフィットする免震装置


免震装置建物と地面の間に入れるので、建てる前に計画して入れておくのが普通です。
しかし、国立西洋美術館完成した建物の下に免震装置を入れちゃいました!

建築家ル・コルビュジェ美しいデザインを壊さずに、免震装置をボコンと嵌め込む無理難題。
それを解決したのが、日本初の「免震レトロフィット」なのです!

建物を傾けずに地面を掘ったり…
狭いスペースでの工事になったり…

とても大変だったそう。

ル・コルビュジェのスッキリ開放的なデザインをそのままに、地震にも強く生まれ変わりました。
この建物が世界遺産になったのは「デザインを変えない免震工事」だったからなのですね。


◾️免震装置を見に行こう!


壮大なドラマがあった免震装置の見学は…

信じがたいことに…

なんと…

無料です!


お財布を忘れて、企画展にも常設展にも入らない人のオアシスですね!
パネル展示で大変な工事の様子をやさしく学べるので、理科の知識が無くても大丈夫。

しかも、近所の上野の森美術館では、9月24日まで「世界を変えた書物」展が開催されています。
嬉しいことに、これも無料!
「世界を変えた書物」展はいまトピアート部虹さんの素敵コラムで調べてみて!

お財布が無くても2つの展示をはしごできる…
上野はサザエさんなんて優しいのでしょうか!