森の中で巡る?エミール・ガレの驚異の海の世界とは!?

2018/4/17 21:00 はろるど はろるど
アール・ヌーヴォーの工芸家として活躍したエミール・ガレ(1846~1904)。植物学や博物学の知識も持ち合わせていたことから、特に植物と昆虫を作品に取り入れたことでも良く知られています。カマキリやトンボも人気ですよね。

実は正真正銘の「××」だった!?ガレのガラス器でアール・ヌーヴォーなお花見を


エミール・ガレ「蜻蛉文脚付杯」 1904年頃 ヤマザキマザック美術館

[我が根源は森の奥にあり]

実際に少年時代から植物収集に熱心に取り組み、後に自邸の敷地内に庭園を築いては、世界各地の約2500種類もの植物を集めました。また、小さな昆虫に自身の姿を重ね、「我が根源は森の奥にあり。」という言葉も残しました。

[海とガレの接点とは?]

しかしガレの関心の在り処は、森、すなわち陸地だけにあったわけではありませんでした。実はある期間、海に強い興味を覚え、海の生き物を積極的に取り上げていたのです。そうしたガレと海との関わり追う展覧会が、箱根のポーラ美術館で開催されています。



「エミール・ガレ 自然の蒐集」(ポーラ美術館)
会期:3月17日(土)~7月16日(月・祝)
http://www.polamuseum.or.jp


それにしてもガレは一体、いつ頃に海に関心を寄せたのでしょうか?

[エルンスト・ヘッケルの自然の芸術形態]


エルンスト・ヘッケル「自然の芸術形態」 1899〜1904年 ポーラ美術館

きっかけは1899年から1904年にかけて、ドイツの動物学者、エルンスト・ヘッケルの著した「自然の芸術形態」でした。ここでヘッケルは、放散虫やクラゲをはじめ、当時の最先端の技術で発見された深海の生き物などを掲載。その図版が装飾的な構図であったことから、当時の美術界に流行をもたらしました。実際の作品を見ても明らかですが、確かにアクセサリーなどの図案にしても良さそうなほど美しいですよね。

「海底二万海里/福音館古典童話シリーズ」

またこれに先立つこと約30年前の1870年、ジュール・ヴェルヌが「海底二万里」を出版し、ガレも海への好奇心を高めました。英国探検船チャレンジャー号が海底探索への航海に出発するなど、海洋学の進展した時代でもありました。


エルンスト・ヘッケル「クモヒトデ類」 1899〜1904年 ポーラ美術館/エミール・ガレ「クモヒトデ文蓋物」 1900年頃 個人蔵

既にガレは54歳。58歳で亡くなったことを考えると、残された時間は長くありません。しかし自然を追い求め、研究熱心だったガレは、ヘッケルの「自然の芸術形態」を参照し、新たな表現を海に見出しました。それこそ水を得た魚のように、海の生き物を集中して取り上げはじめました。

[タツノオトシゴと海藻との関係]


エミール・ガレ「海藻と海馬文花器」 1905年頃 ポーラ美術館

その一例が「海藻と海馬文花器」で、透明地に赤のガラスを被せた器に、海藻と海馬、つまりタツノオトシゴを彫っています。そして口縁部にはボードレールの「悪の華」の一節を引用。人間が深海に秘められた豊かさを窺い知れないのと同様に、人の心も容易に理解できないことを意味しています。なんとも意味深いですよね。

そしてここでは海藻に注目!というのも、ガレは何となしに海藻を表現したわけではありません。実はタツノオトシゴは生態上、海藻と切っても切れない関係にあり、タツノオトシゴの好きな海藻というものがあるのです。つまりガレはそれを熟知していたわけですよね。海藻を彫ったのも、より海の生態をリアルに表すためでした。

[アール・ヌーヴォに好まれたクラゲのモチーフ]


エミール・ガレ「クラゲ文花瓶」 1900〜1904年 北澤美術館

「クラゲ文花瓶」にも目を向けましょう。大きなクラゲがやはり海藻とともに彫られていますが、傘にストライプの模様が見られることから、おそらく日本の赤クラゲに近いクラゲが表されていることが分かっています。触手に毒を持つクラゲで、乾燥して粉として巻くと、くしゃみをすることから、ハクションクラゲとも呼ばれているそうです。クラゲはヘッケルの「自然の芸術形態」に多く登場し、豊かな曲線美を見せていたことから、アール・ヌーヴォーのモチーフとしても好まれました。

[晩年の5年間に集中して海を見たガレ]


エミール・ガレ「イソギンチャク文花瓶」 1900年 飛騨高山美術館

結果的に海の生き物の作品を熱心に作っていたのは、主に晩年の5年間のみ。よって必ずしも作品は多くありません。ほかにもイソギンチャクやカニを彫った器も美しいのではないでしょうか。



[下田海中水族館とコラボも]

「19世紀の芸術家 エミール・ガレ が愛した海」(下田海中水族館)
会期:3月17日(土)~7月16日(月)
https://shimoda-aquarium.com


そしてガレの海に着目するポーラ美術館では、下田海中水族館とコラボレーション。下田海中水族館でも「19世紀の芸術家 エミール・ガレが愛した海」と題し、ガレの作品を海の生き物で表現した展覧会が行われています。また半券を提示すると、互いの入館券が割引になるキャンペーンもあるそうです。美術館と水族館の異色の提携企画ですよね。ガレを接点に、互いに行き来するのも楽しいかもしれません。


エミール・ガレ「蓋付瓶 魚」 1895〜1900年 北澤美術館

ポーラ美術館で7月16日まで開催中の「エミール・ガレ 自然の蒐集」展。一部を除けば撮影もOKです。豊かな森の中に位置する美術館で、是非ともガレの海の世界を体感して下さい!




「エミール・ガレ 自然の蒐集」 ポーラ美術館@polamuseumofart
会期:3月17日(土)~7月16日(月・祝)
休館:会期中無休。
時間:9:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800(1500)円、65歳以上1600(1500)円、大学・高校生1300(1100)円、中学・小学生700(500)円。
 *( )内は15名以上の団体料金。
 *小学・中学生は土曜日無料。
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
交通:箱根登山鉄道強羅駅より観光施設めぐりバス「湿生花園」行きに乗車、「ポーラ美術館」下車すぐ。有料駐車場(1日500円)あり。