最多3回の受賞者はアノ大物政治家! 「ユーキャン新語・流行語大賞」マルチ受賞者ランキング

2017/11/8 11:00 DJGB DJGB


今年も残すところあと2か月足らず。そろそろ「ユーキャン新語・流行語大賞」の季節です。明日11月9日(木)に発表される「候補語」にも注目が集まります。


すでに『現代用語の基礎知識』編集部は7月、「インスタ映え」「けものフレンズ」「35億」「忖度(そんたく)」など上半期の注目10語を発表済み。


今年は新たな試みとして、「候補語」30語の中からハガキ投票で「読者賞」を決める「ことばの選挙」も開催予定。


昨今、巷の感覚とのズレを指摘されることも少なくないこのイベント。ネット時代の今、あえてのハガキ投票で世間の声をくみ上げようとする姿勢が吉と出るか凶と出るか、こちらも注目です。

ところで今年で34回目を迎える「新語・流行語大賞」の歴史をふりかえると、複数回にわたって受賞している人がいることに気づきます。今日はそんな“マルチ受賞者”をランキングでご紹介しながら「ユーキャン新語・流行語大賞」の傾向と対策を分析してみます。

なお今回はひとまず「本人の受賞回数」を最重要基準とし、回数が同じ場合は賞の重みや、単独での受賞かどうか、また関連語の受賞状況も考慮しつつ、独断でランク付けしています(敬称略)。



■歴代最多受賞はあのリビングレジェンド!

1位:中曽根康弘(3回)

1984年 新語部門・銅賞 「鈴虫発言」
1985年 流行語部門・特別賞 「100ドルショッピング」
1987年 特別功労賞「“国際”国家」




史上最多の通算3回の受賞者は中曽根康弘元首相。
「鈴虫発言」とは何のことか全くわかりませんが、当時はロッキード事件を受け、政治倫理の重要性が問われた時代。「倫理、リンリ」と叫ぶ野党を「まるで鈴虫が鳴いているようだ」と揶揄した中曽根首相に対し、第一回の銅賞が贈られました。

そもそも「ユーキャン新語・流行語大賞」は「現代用語の基礎知識」のPRのためのイベント。「ゲストとしてイベントにご出席いただけるのであれば賞を差し上げます」という交渉が行われていることも容易に想像できますが、首相クラスの政治家は出席しなくてもよい、という不文律があるようです。政治家側からすれば「勝手に表彰されている」という側面も。


2位:小泉純一郎(2回)

1997 トップテン「郵政三事業」
2001年大賞「小泉語録」
参考:2005年大賞「小泉劇場」(受賞者 武部勤 自由民主党幹事長)




2位:小渕恵三(2回)

1998年特別賞 「ボキャ貧」
1999年大賞 「ブッチホン」
参考:1998年トップテン 「冷めたピザ」(受賞者 三井海上基礎研究所 ジョン・ニューファー)



2位も歴代の首相がランクイン。中でも小泉純一郎は、首相就任前にも受賞しているところが特筆に値します。また両名とも自らが受賞したのみならず、“他人からの評価”を示す言葉が選出されているところもポイント。

なお1998年の年間大賞は「凡人・軍人・変人」(それぞれ小渕、梶山清六、小泉を評した言葉。受賞者は田中真紀子)。「冷めたピザ」なんて当時から「どこで流行しているの?」という言葉でしたが、ふりかえればこの受賞によって小渕首相時代がより強く記憶されることになったこともまた事実。この年の小渕さん、けっこう愛されています。

「語る」より、「語られる」存在であることが、マルチ受賞のカギのようです。


4位:鳩山由紀夫(2回)

96年 年間大賞「友愛・排除の論理」
09年 年間大賞「政権交代」



年間大賞を2度も獲得しているという意味では、鳩山由紀夫は別格です。「友愛」は中曽根元首相に「ソフトクリームのようだ」とからかわれたが、「夏にはおいしい」と切り返した、というエピソードが残ります。が、思えばこの時がアニポッポのピークだったかもしれません。

「排除」は今年のキーワードにもなりそうですが、果たして小池都知事は授賞式に出席するだけの度量があるでしょうか。


5位:渡辺淳一(2回)

1997年大賞 「失楽園(する)」(黒木瞳と共同受賞)
2007年トップテン「鈍感力」



ようやく政治家でない人が登場です。90年代にセンセーショナルな性愛小説で一世を風靡した渡辺先生は、10年後、『鈍感力』を発揮。仮に今年また受賞すれば、サザンや中島みゆきにも肩を並べようかという3ディケイドをまたぐ活躍となりますが、どうでしょうか。


6位:土井たか子(2回)

1986年 流行語部門・特別賞 「やるしかない」
1989年 流行語部門・金賞 「オバタリアン」



バブル華やかなりしころ、野党第一党のトップとしてPRに励んだおたかさん。「マドンナ」は社会党(当時)が擁立した女性新人候補者たちのことで、土井たか子自身は自らを「オバタリアン」と宣言していたことは忘れられがち。


7位:高田純次(2回)

87年 新語部門・表現賞 「ノリサメ」(兵藤ゆきと共同受賞)
88年 流行語部門・大衆賞 「5時から(男)」




並みいる首相経験者を押しのけ、意外な人がランクイン。80年代、高田純次は確かに時代を作っていたのです。「ノッているかと思えば、サメている」主に若い世代を指して使われた「ノリサメ(族)」という言葉ですが、世代というよりは、高田純次その人の特徴のようにも思えます。


8位:『週刊文春』編集部(2回)

1984年 流行語部門・銅賞「疑惑」
2016年 トップテン 「ゲス不倫」




週刊誌は、世間に話題を提供するのが使命。新語・流行語を送り出すのはまさに面目躍如でしょう。1984年、“文春砲”の直撃を受けたのは故・三浦和義。いわゆる「ロス疑惑」の始まりでした。


9位:野田佳彦(2回)

2011年トップテン 「どじょう内閣」
2012年トップテン「近いうちに」




9位:安倍晋三(2回)

2013年 トップテン 「アベノミクス」
2015年 トップテン 「一億総活躍社会」



直近の首相2名が同率でラインクイン。安倍総理については「アベ政治を許さない」(2015年、受賞者は澤地久枝)といった関連語も受賞していますが、「冷めたピザ」や「凡人・軍人・変人」と比べると、ヒネりに欠けた表現と言わざるを得えません。安倍首相はそろそろ年間大賞クラスを獲得して鳩山越えを、あるいは中曽根越えを果たしたいところでしょう。


11位:渡辺喜美(2回)

2009年トップテン「脱官僚」
2012年トップテン「第3極」
(福島瑞穂〈社民党〉、亀井亜紀子〈みどりの風〉とともに「第3極の皆様」として受賞)



いっときは次期首相候補との呼び声も高かった渡辺喜美氏。受賞はしていませんが他にも「みんなの党」「アジェンダ」などメディアが飛びつきやすいフレーズ使いが巧みだった印象です。今年も熊手、飾ってるかな。



■イベントにノコノコ出てくる人、出てこない人

正式に受賞者として名前が記載された”マルチ受賞者”はこの11名(組)。

ですが、舛添要一厚労相(当時)が受賞した2007年のトップテン「(消えた)年金」は、本来、この問題を指摘した長妻昭衆議院議員(当時民主党)が受賞するのが妥当ですし、実際に後日、長妻氏側に受賞が打診されていたことが明らかになっています。



長妻議員はスケジュールの都合で断ったそうですが、そこでノコノコと出席してしまったのが、批判されていた側の厚労相(当時)、舛添さんでした。

長妻議員は翌2008年「居酒屋タクシー」で念願の?トップテン入りを果たします。

このほかレアケースとしては小沢一郎。「新・新党」で1994年にトップテン入りしたものの、2010年には「脱小沢」というワードがトップテン入り。受賞者は菅直人首相(当時)でしたが、受賞を辞退しています。

さらにレアなのは1993年。「FA(フリーエージェント)」で落合博満が新語部門・銅賞、「悪妻は夫を伸ばす」で落合信子夫人が特別賞部門・年間傑作語録賞を受賞。




夫婦ダブル受賞は1990年の「昭和生まれの明治男」(特別部門・人語一体/語録賞、村田兆治、淑子夫妻)の先例がありますが、村田夫妻が夫婦で授賞式に出席したいっぽう、落合夫妻は信子夫人ピンでの受賞・出席となりました。かくなるうえはフクシくんにがんばってもらい、史上初の親子トリプル受賞を狙っていただきたいところ。

こうした例を挙げるまでもなく、「新語・流行語大賞」は、受賞した言葉そのものではなく、受賞する、辞退するも含めた受賞者のふるまいと、「授賞式にノコノコと出てくるのは誰か」を味わうイベントなのです。

今年の大賞発表は12月1日(金)。 果たして授賞式の会場に姿を現すのは、どんな顔ぶれでしょうか(出づらい)。


(バブル時代研究家 DJGB)