“革のダイヤモンド”コードヴァンは、使い込むほど美しくなる

2017/9/14 18:00 ブーストマガジン ブーストマガジン


文:水谷祐司

 みなさん、こんにちは。「Mのブツ欲日記」の水谷です。ファッション連載も3回目となりますが、今回はいきなり質問です。上の革靴の写真を見て、皆さんはどう感じましたか?

 ワタクシの私物で、今回のテーマである『コードヴァン』という革を使った靴の写真ですが、もし「汚ない」「不潔だ」などと感じられたなら、残念ながら今回はここまで。また次回お会いしましょう。

 しかし、反対に「面白い」「魅力的だ」「美しい」と思われた方がいらしたら、是非以下の文章を読み進めてください。財布や革靴、さらにお子様のランドセルにも使われる“革のダイヤモンド”の魅力をお伝えしたいと思います。

『コードヴァン』は、野生の馬が身を守るために身に付けた“鎧”

 ざっくり言ってしまうと『コードヴァン』は馬革です。もう少し具体的に言うと馬の臀部、お尻の深層部分にあるわずか1~2mmほどのカチカチの固い層、それが『コードヴァン』です。その正体は繊維密度の高いコラーゲンの塊なのですが、どんな馬にもこの『コードヴァン』あるわけではありません。ヨーロッパ地方で少数生産されている農耕馬からのみ採ることができるものです。

 その昔、ヨーロッパには沢山のオオカミが生息していて、野生の馬は常にオオカミから襲われる危険性がありました。オオカミに背後から飛びかかられてお尻に噛み付かれたり爪を立てられたりするため、お尻の皮に固いコラーゲン層である『コードヴァン』が発達したと言われています。つまり馬が身を守るために身に付けた“鎧”が『コードヴァン』なわけです。

 ですので、現代ではより自然に近い馬にしか『コードヴァン』は存在せず、人間が品種改良して競走馬にしたサラブレッドや、小型化した馬であるやポニーには存在しないと言われています。

 さらに、『コードヴァン』を商品化するためには、少しずつ馬のお尻の皮を削り“発掘”する作業が必要となるわけですが、削り過ぎて『コードヴァン』に少しでも傷をつけてしまうと売り物にはならないので、作業には熟練の高度な技術を必要とします。もともと全体の一割にも満たない臀部のうちの、さらにほんの一部分しか採れない上に、年々農耕馬が減っていることや、加工に高い技術を要することなどが重なり、『コードヴァン』の稀少性はますます高まり、それに伴い価格もどんどん高騰しているのです。



使い込むこむほど美しくなる“革のダイヤモンド”

 『コードヴァン』は、その稀少性や制作過程が宝石の採掘作業に似ていることから“革の宝石”や“革のダイヤモンド”とも呼ばれていますが、理由はそれだけではありません。まずその強度。一般の革と比べて薄くて軽い一方で、強度は牛革の2~3倍と言われています。乱暴に扱われがちなランドセルに『コードヴァン』がよく使われるのも、この「薄くて軽くて頑強」という特徴のおかげ。

 そして、『コードヴァン』の最大の魅力は「エイジング」。新品時はキメ細やかでツルンと滑らかな革の表面が、使い込むうちにギラリとした迫力ある光沢を見せてくれるようになります。財布などの革小物であれば、使っていくうちに革の表面がより滑らかになると同時に、手の油分が革の表面を覆っていき、光沢と重量感を併せ持った非常に美しい表情になっていきます。

 さらに、最初は硬かった質感も使い込むうちに柔らかくなり、手に吸い付くようなシットリ感も。買ったばかりの頃はマットな雰囲気の財布も、1年もすればウットリするような、まさに“宝石”という言葉がピッタリな艶や光沢を見せてくれるのです。



 ちなみに上の写真で、同じ色のコードヴァンを使った製品の比較をしてみました。向かって左の靴が未使用状態で、同右が使い込んだコインケース。とても同じ色とは思えないほど全体が濃くなり、凄味が増しています。

 革小物以上に激しい使われ方をする靴の場合は、エイジングのスピードはもっと早い。最初はツルンとしたスムースな表面が、履きこむうちに鈍い光沢を放つようになり、さらに特有の太く波打つような皺と相まって、他の革では絶対に見られないような美しさを見せてくれます(下の写真参照)。

 5年、10年と履き込んでいくとシミや汚れが付着、また色落ちによるムラなどが発生し、この世に一足しか存在しない、何とも言えない味わい深い表情になっていく。まさに『コードヴァン』ならではの“進化”と言えるでしょう。



マメな手入れは不要。しかし水に濡れた場合はすぐに処置を

 最後に『コードヴァン』のメンテナンスについて。「ダイヤモンドと称されるぐらいだから、さぞかし手入れは大変なんだろうな」と思われるかもしれませんが、答えはNoです。マメな日々の手入れはほぼ不要と言っても過言ではありません。

 使用後に柔らかい布などで空拭きするか、革専用ブラシなどで軽くホコリを落とす程度で日々のメンテナンスは十分。とくに革小物の場合は、手の油分で潤いが保たれるので、使うことが最大のメンテナンスになります。また軽い引っかき傷程度なら指でキュッキュッとこすれば目立たなくなりますし、使い込んでいくうちに更に目立たなくなっていきます。

 もし使っているうちに「表面が乾いてきたな」と感じたら、油分や栄養分補給のために専用クリームなどを軽く塗布すればOK。逆にクリームなどを多用しすぎると、せっかくの光沢が曇ってしまう恐れもあるので当面は必要ありません。



 このように“メンテ要らず”の『コードヴァン』ですが、それでも天敵は存在します。それが「水」です。濡れたまま放置しておくと、その箇所がポコッと水ぶくれのような状態になります。これが跡として残ってしまうと完全に除去するのは難しくなるので、応急処置をするのが重要。

 濡れてしまったら、すぐにキレイに拭きとる。これが一番大事です。もしそれでも跡がとれない場合は、革靴のリペアショップに相談することをオススメします。

 さて、今回の「使い込むほど美しくなる“革のダイヤモンド”コードヴァンの魅力」特集は、如何でしたでしょうか? 先にも書いたように、『コードヴァン』は年々稀少になっていっているので、機会があれば是非手にとってみてください。そして出来れば自分のものにして使い込み、その美しさを堪能していただければと思います。

 また、下にある関連記事で、ここで紹介しきれなかった私物コードヴァン製品のエイジング写真のご紹介や、『コードヴァン』ケア用クリームの紹介をしていますので、興味のある方はそちらも是非ご覧ください。

 なお、次回の記事は1ヶ月に掲載する予定です。引き続き持っているだけで気分がアガるファッショングッズやビジネスグッズなどをご紹介していきますので、お楽しみに。

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