飲みすぎシールにおえおえ踊り…「ファンシー絵みやげ」で振り返る飲酒ブーム(1/2)

2017/6/2 12:00 山下メロ 山下メロ


お久しぶりです。平成元年あたりのカルチャーを発掘調査している山下メロと申します。80年代とも90年代とも違うその時代を、平成レトロとして愛好しております。



前回から引き続き短ランで失礼します。

当連載では、80年代から平成初期に流行した「ファンシー絵みやげ」から、当時の流行を紹介していきたいと思います。「ファンシー絵みやげ」とは80年代からバブル経済期~崩壊を挟んで90年代まで、日本の観光地で若者向けに売られていた、かわいいイラストが印刷された雑貨みやげのことです。



「ファンシー絵みやげ」については連載第一回をご覧ください。

■ 不良と酒

前回のタバコに引き続き、ヤンキーカルチャーにおいて欠かせないアイテムは酒ですね。不良といえば違法行為ですから、未成年でもタバコや酒をやるというイメージがあります。かくいう私もヤンキーカルチャーに囲まれていた中学生の頃は、夜な夜な23時頃から公園に出かけては、そういったものに囲まれていました。あえて明言を避けるならば、そうです、囲まれていました。しかも、見せるために持つ缶なので、バドワイザーやハイネケンなどデザインのクールさで選んでいました。部屋にバドワイザーのタペストリーを嬉々として飾っていたのも良い黒歴史です。

↑漫画家なんきん先生のイラストが有名な飲みすぎシールが登場したソルマックのCM。

飲酒の歴史は長く、そして多種多様なリキュールが生み出されてきました。1980年代~平成初期にも色々なお酒のCMが作られましたが、今回はむしろバブル経済期を象徴するお酒CMともいうべき、胃腸薬のCMを紹介したいと思います。

↑おやじGALS「今夜はオ・イェー!」がフィーチャーされたソルマックのCM。作詞はサエキけんぞうさん。

バブル経済期は派手に夜遊びするというイメージもあり、やはりそこにお酒は付き物でしょう。ジュリ扇持ってジュリアナ東京に通うボディコンギャルも、やはりお酒を飲んでいました。中尊寺ゆつこによって流行した「おやじギャル」という、中年男性的志向を持ったギャルはゴルフ、競馬、麻雀などの他に日本酒などを好んだものです。その「おやじギャル」をテーマにしたユニット「おやじギャルズ」がソルマックのCMソングを歌っていました。

↑「食べる前に飲む!」で有名な田中邦衛さん出演の大正漢方胃腸薬CM。しかしこの時代は「飲む前に飲む!」なのである。

■ ファンシー絵みやげとお酒

まず、お酒とファンシー絵みやげに関しては、すでに『酒場人 vol.2』というムック本である程度紹介しているので、そちらも合わせて読んで欲しい。


↑オークラ出版より2016年5月に発売された酒場と人をテーマにしたムック『酒場人 vol.2』(監修:パリッコ)。私、山下メロも参加している。


↑このような感じでファンシー絵みやげにおける酒器などを紹介。詳しくは是非『酒場人 vol.2』を読んで欲しい。

今回は1年前の『酒場人 vol.2』から、保護できたファンシー絵みやげ酒器もたくさん増えているため、載せていないものを中心に紹介していきたいと思います。

■ ファンシー絵みやげ徳利お猪口セット

前回のタバコにおける灰皿同様、修学旅行生などが観光地の土産店で、小遣いをくれた親に買って帰るものとして徳利とお猪口のセットがあります。


↑「おとぼけ森のおとぼけブラザーズ」徳利・お猪口セット。クマ、キツネ、タヌキの3匹。


↑「DANDY Jr.」というクマの徳利・お猪口セット。


↑北海道の「くまがでるぞー!!」のお猪口。底面には「居酒屋」として「くまがのむぞー!!」と書かれている。

また、通常の徳利よりかなり小さいミニチュアサイズの徳利まで売られていました。こちらは使うことも出来なくはないのですが、セットでついてくるお猪口がかなり小さいため、実用には向かず、あくまで飾るための商品だったようです。


↑ミニチュアサイズの徳利お猪口セット。こちらは日焼けしたサーファーである「YAI! ISLANDER」。


↑京都の「RIDER RYOMA」のミニチュア徳利セット。なぜか時空を超えて坂本龍馬が仮面ライダー風のスポーツバイクに乗っている。しかもノーヘル2人乗りで拳銃をぶっ放している自由さ。背景は定番の英字新聞柄。


↑京都の新撰組。このように、ディスプレイも考えられたかわいい箱に入っているのもミニチュア徳利の魅力である。

さらに、徳利ほどのサイズながら、あの信楽焼のタヌキなんかが手にぶら下げている酒瓶を模した商品もありました。


↑こういったタヌキが手に持っている酒瓶です。


↑鹿児島の西郷隆盛と薩摩おごじょのカップル酒瓶。さすが焼酎の国。西郷どんも酒瓶を持ったイラストは多い。


↑北海道の温泉酒瓶。コルク栓とフタにもなるカップがついています。

しかし灰皿に比べると、徳利とお猪口のセットは日本酒など特定のお酒にしか使えないという側面もあり、贈る相手の嗜好を理解していないと選べないため、灰皿ほどの数は存在しないようです。


↑こちらの「Midnight KID」という泥棒猫の徳利、別の角度から見ると…


↑このような文字が入っています。しかも、今や恐怖といった意味合いで使われる文字書体が使われています。


↑コスト度外視で内側にも文字を入れる遊び心も、まさに当時の商品の特徴ですね。

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