歌舞伎を観にいこう!後編「新春一月公演の見所を一挙ご紹介」
お正月休みに映画を観るという人も多いですが、新年は歌舞伎を観にいってみてはいかがですか?
早ければ1月2日から歌舞伎公演は始まっています。前編の歌舞伎鑑賞入門編に続き、2017年1月公演について歌舞伎女子のすえひろちゃんに聞いていきます。
――前編で歌舞伎独特の興行形態や観劇方法などを教えてもらいましたが、後編は1月の歌舞伎公演について教えてください。
すえひろちゃん(以下す):1月は歌舞伎公演が盛りだくさんなんです!それぞれのおすすめポイントやチケット発売日をまとめてみましたのでご覧ください。
【歌舞伎座】にぎやかさ:★★★★★
壽 初春大歌舞伎
期間:2017年1月2日~26日
主な出演:中村吉右衛門・坂東玉三郎
チケット発売日:12月12日
【新橋演舞場】話題性:★★★★★
壽 新春大歌舞伎
期間:2017年1月3日~27日
主な出演:市川右近改め市川右團次・市川海老蔵・市川猿之助
チケット発売日:11月25日
【浅草公会堂】イケメン度:★★★★★
新春浅草歌舞伎
期間:2017年1月2日~26日
主な出演:尾上松也・中村隼人・坂東巳之助
チケット発売日:11月20日
【国立劇場(半蔵門)】レア度:★★★★★
しらぬい譚
期間:2017年1月3日~27日
主な出演:尾上菊五郎・中村時蔵
チケット発売日:12月6日
【大阪松竹座】めでたい度:★★★★★
壽 初春大歌舞伎
期間:2017年1月2日~26日
主な出演:中村橋之助改め中村芝翫・片岡仁左衛門
チケット発売日:12月5日
――なるほど、全部で5公演もあるですね。それぞれの内容や見所などを教えてください。
まずは、イケメン度5つ星が気になる新春浅草歌舞伎は?
す:新春浅草歌舞伎は、毎年お正月恒例の若手花形役者による公演です!浅草の町全体で公演を応援するあたたかいムードの中、20代~30代の役者さんたちが古典の大役に挑みます。今年は尾上松也さんを中心に、昨年上演されたワンピース歌舞伎でのご活躍で若者にも大人気の中村隼人さん、坂東巳之助さんなどイケメン揃い。イケメン好きの方は必見です!
▲左から順に中村梅丸、坂東巳之助、尾上松也、中村壱太郎(かずたろう)、中村隼人【本日よりチケット発売!】本日10時から一般チケット好評発売中です!
— 【公式】新春浅草歌舞伎 (@asakusa_kabuki) 2016年11月20日
チケットホン松竹 0570-000-489 チケットWEB松竹で検索!(スマホサイト:https://t.co/hEdHMQ95ku)
劇場でお待ちしております! pic.twitter.com/W3R2kBKQv0
――次に、新橋演舞場はいかがですか?
す:新橋演舞場は市川右近さんの市川右團次襲名披露公演です。昼の部ではなんとワイヤーで吊るされた役者が優雅に宙を舞う「宙乗り」という演出がありますので、初めて歌舞伎をご覧になる方には特におすすめです。右近さんの芸の源である新橋演舞場という特別な場所での襲名披露は、海老蔵さん・猿之助さんといった華やかな顔ぶれも相まって人気の公演となるはずです!
――東京だけでなく大阪松竹座情報もお願いします。
す:歌舞伎座で10月から始まった中村橋之助改め八代目中村芝翫襲名披露公演が、大阪松竹座に場所を移して開催されます。芝翫さんの三人の御子息もそれぞれ襲名され、「四人同時襲名披露」という前代未聞の豪華な舞台です。初めての方にはぜひ夜の部の「勧進帳」をご覧いただきたいなと思います。芝翫さん演じる弁慶の迫力を体感してみてくださいね!
――東京に戻って国立劇場は?
す:国立劇場では江戸から明治にかけて庶民の間で大流行した長編小説「しらぬい譚」の歌舞伎版が、実に40年ぶりに新たな台本で上演されます。国立劇場の初芝居は、尾上菊五郎さん率いる菊五郎劇団が現在あまり上演されない珍しい演目を装い新たに上演する復活狂言が定番。今年は客席を斜めに横切る宙乗りなど楽しい演出が盛りだくさんのお芝居になるようです。
――最後は歌舞伎座の1月公演について教えてください。
す:歌舞伎座の初芝居にはテレビでも大活躍の愛之助さんがご出演ですので、テレビとは一味違った歌舞伎役者としてのお芝居をぜひ一度ご覧いただきたいなと思います。たくさんの役者さんの中に一人でも知ったお顔があればより思い入れを持ってお芝居を見ることができるはずです!
歌舞伎座には幕見席がありますので、お出かけやお仕事の帰りにちょっと一幕・・・というのもいいですね。夜の部の「松浦の太鼓」は忠臣蔵をモチーフにした愉快な演目ですから初めての方も楽しく見ることができるのではないかなと思います。
――どこも興味深いですが、東京だけでも4公演もあると観にいくのに迷いますね。初心者にはどこがおすすめですか?
す:個人的には新橋演舞場がおすすめです!市川右近さんが襲名なさる「右團次」の名跡は、「ケレン」という華やかな芸を得意とした系譜だそうです。歌舞伎でいう「ケレン」とは、様々な仕掛けによって観客の意表を突く演出のこと。驚きの連続ですから初めての方も飽きずに楽しむことができると思いますし、歌舞伎の退屈なイメージを覆すような体験になるのではないでしょうか。
――毎月歌舞伎座に通うすえひろちゃんですが、初心者が歌舞伎を観に行く時や歌舞伎鑑賞のコツ、裏技などあったら教えてください。
す:実は歌舞伎には「ここが見どころだよ!」「この人は悪者だよ!」などと教えてくれる親切な記号がたくさんあるんです。その記号をいくつか知っておくだけでも楽しくなるのではないかと思います。
例えば、舞台上手の端っこに正座で腰かけて時折バタバタと木の板を打ち付けて音を鳴らしている人がいます。この音は「附け(つけ)」といって、迫力ある音響効果として効果音をつけているだけでなく見得のタイミングやかっこいい注目ポイントなどをお客さんに知らせてくれているんですよ。バタバタバタバタバッタリ・・・と聞こえてきたら役者の表情や動きに注目してみてくださいね。
▲すえひろちゃんの愛用オペラグラスVixen(写真のものは生産終了)
「このシリーズは視界が明るくとても見やすいです。また、軽いので女性におすすめです。」とのこと
――最後にすえひろちゃんから、これから歌舞伎をはじめて観にいこうと思っている方々へのメッセージをお願いします。
す:歌舞伎は敷居の高いイメージがあるかと思いますが、始まりは庶民の娯楽。今でもリーズナブルな楽しみ方がありますから、まずは手ごろな席からお試しください!
「難しいかも」「わからないかも」と不安になってしまっても大丈夫、毎月歌舞伎座に出かけている私自身もまだまだ知らないことばかりです。あまりにも奥深く謎だらけだからこそ400年間愛される魅力があるのだと思います。まずは知識をつけて頭で理解しようとするよりも、あの役者さんかっこよかったな、衣裳がきれいだったな、音楽がすごかったな、といった感覚的なもので充分に楽しめるはずですので、ぜひ生の歌舞伎の迫力を体感してみてくださいね!
――本日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました。
■「着物で観劇!」その強い味方が歌舞伎座タワー内に!
お正月らしく着物で歌舞伎鑑賞なんて素敵ですよね。でも、夏にゆかたを着る人も男女問わず増えてきていますが、着物を持っている人は少ないかもしれません。そんな方のために便利なサービスをすえひろちゃんに教えてもらいました。
歌舞伎座タワー5Fの「こども専門写真館」スタジオアリスでは着物をレンタルすることができる「着物でおでかけプラン」というものがあります!おめでたいお正月にちょっと奮発して和装というのも素敵です。オプションで記念写真も撮れるので、観劇の思い出にも最適です。
◆まとめ◆
前後編とお届けしました歌舞伎入門。歌舞伎女子のすえひろちゃんが、前編では若い人や歌舞伎になじみのない方にもわかりやすく歌舞伎について教えてくれました。後編では、各劇場のお正月公演のみどころを紹介してもらいました。これはもう歌舞伎を観にいくしかない!?
2017年、歌舞伎デビューしてみては。
前編コラムはこちら
・歌舞伎を観にいこう!前編「はじめての歌舞伎鑑賞【入門編】」
◆ペンネーム:芳川末廣・すえひろちゃん
Twitter:@88salut88
ブログ:「歌舞伎ちゃん 二段目」
(文/satomin)