ワシントンハイツの人々は「私たち」…「イン・ザ・ハイツ」横浜公演千秋楽レポート!

2016/11/10 22:22西門香央里西門香央里




11月4日、横浜市のKAAT神奈川芸術劇場にてミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の韓国版が千秋楽を迎えました。初日公演直前取材会の様子を以前このコラムでお伝えしましたが、今回はいよいよ「イン・ザ・ハイツ」を実際に見に行くことができました。

というわけで、今回のコラムではその千秋楽の様子をお伝えしたいと思います。初めての韓国ミュージカル、オール韓国語で行われるといいますが、果たしてわかるのか、どんなものなのか…。

「イン・ザ・ハイツ」の初日直前取材会の様子ついては、下のコラムを是非読んでみてくださいね。

・このミュージカルには「希望」がある…韓国版「イン・ザ・ハイツ」横浜公演開幕!


■大きなジョージ・ワシントン橋が見える「イン・ザ・ハイツ」のステージ


会場に入ると、ステージにはアメリカ、ニュージャージー州にかかる「ジョージ・ワシントン橋」が見える街の風景のセットが。ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の舞台はアメリカの「ワシントンハイツ」という街。舞台セットはワシントンハイツの町並みと、そこから見える景色を再現したものなのです。

前回の取材時に、ヤン・ドングンが言っていた「派手な舞台装置はない」という言葉を思い出しました。

その言葉通り、この装置ひとつだけででミュージカルが繰り広げられていくのです。派手な舞台装置や転換、演出が無くてもいいミュージカルはそれだけで十分なのだということを「イン・ザ・ハイツ」は始まってから教えてくれます。

気になっていた「韓国語」の部分は、ステージの両端にモニターがあり、そこに日本語訳が出るようになっていました。時折、日本語を交えたアドリブもあるので、十分楽しむことができました。


■少年らしさを残したKeyのウスナビ



ストーリーはワシントンハイツの朝の光景から始まります。いつものように自分の小さな雑貨屋のシャッターを開けるのは主人公のウスナビ。壊れてるシャッターをガチャガチャと音を立てながら開ける。それがいつもの日課。 横浜公演の千秋楽ではSHINeeのKeyがウスナビを演じました。前回のコラムでも紹介したように、「イン・ザ・ハイツ」では複数の俳優がキャラクターを演じる、Wキャストとなっていて、ウスナビは4人の俳優が演じます。

Keyは少年っぽさを残したウスナビ。片思いをしているヴァネッサに対する態度も、ぎこちなくて初々しいところが。歌の場面も、ラップと得意としているので、さすがといった感じです。日本語が得意なKeyらしく、自然に日本語のアドリブが出てくることも。

他のウスナビ役は、ヤン・ドングンとチョン・ウォンヨンですが、ラッパーでもあるドングンと、ミュージカル俳優でもあるウォンヨンのウスナビは、おそらくKeyとはまったく違うのでしょう。取材時にドングンが話していたように、俳優それぞれの「ウスナビ」がいるということを感じました。


■それぞれのキャラがぴったりハマったキャスト陣



「イン・ザ・ハイツ」のキャストの中でも、筆者の目をもっとも引いたのが、ベニー役のDouble S 301のキム・ヒョンジュンでした。ワシントンハイツの中で、唯一、中南米移民ではなくアメリカ人であるベニーという役を演じたヒョンジュンですが、これがまさにハマリ役!

明るいキャラで軽やかに歌い踊り演じるその姿は、何の違和感もなく「ベニー=ヒョンジュン」かと錯覚するほど。ヒョンジュン自身も、「ベニーは自分そのもの」と話しているので、本人にとってもハマり役だったのでしょう。気がつくと、ベニーばかりを目に追うほど、輝いていました。

彼以外にも、このミュージカルに出てくるキャスト陣はすばらしく、それぞれが役にぴったり。ニーナもヴァネッサも、まるで「本人」がそこにいるみたいに自然で、脇を固めるサブキャストも、どの人もワシントンハイツの住人たちそのものでした。

これがインタビューでドングンが話していた、演出のイ・ジナが「役者に合わせてくれる」ということの効果なのかもしれません。

とくに、ヴァネッサの勤務する美容院のオーナー、ダニエラ役のチェ・ヒョクジェは、特徴的なキャラで観客の目を一気に引き込んでいましたが、それはダニエラを自分のものにしていたからでしょう。彼女の歌のソロパートでは、小さい身体からこんなに声が出るのか?と思うくらいの迫力の声量と歌唱力で、会場を沸かせ、カーテンコールも彼女の紹介時は、一番大きな歓声が起きていました。


■「イン・ザ・ハイツ」千秋楽!鳴り止まない拍手


「イン・ザ・ハイツ」は終盤に起こる「大事件」からストーリーが加速していきます。今までこの街に溜まっていた「いろんなもの」が一気に噴出すように。このミュージカルのハイライトである「96,000」は、目を離すスキもないほど見所が満点。歌とラップとダンスと、アクロバティック…。この曲の中には「イン・ザ・ハイツ」全ての要素が詰まっていて、このミュージカルのテーマとも言えるのではないでしょうか。

悲しい出来事とともにワシントンハイツを離れドミニカに戻ろうとするウスナビですが、最後は「ここに残る」という決意をします。それは決して後ろ向きなことではなく、常に前を向いて進もうとする「明るさ」と「希望」が見えていて、そのウスナビの行く末に大きな拍手を送る形でフィナーレを迎えました。

鑑賞後、会場はスタンディングオベーションに。カーテンコールが終わり、「96,000」のアンコールが終わっても、観客からの拍手は鳴り止むことはありませんでした。


■ワシントンハイツの人々は「私たち」なのだ



この「イン・ザ・ハイツ」の登場人物たちは、それぞれ何か悩みや暗い部分を持っています。文字が読めなかったり、数字が使えなかったり、英語が話せなかったり…と、ストーリーの中に見え隠れするように散りばめられているのです。

ニーナはお金がなくバイトばかりする毎日に、勉強をまともにできないことから、大学を休学してワシントンハイツに帰ってきます。街の期待を背負ったニーナの挫折は人々を揺るがせますが、実はニーナの「事情」は、現代の社会が抱えている問題でもあるのだと、気づかせてくれます。

つまり、ワシントンハイツにいる人たちは、どこにでもいる「私たち」と同じなのだと、筆者は感じました。誰にでも持っている悩みなどを抱えた人々がこの話の登場人物なのです。だから、共感し胸を打たれるのでしょう。

舞台転換や派手な装置などなくても、このミュージカルが十分魅力のあるものに仕上がっているのは、見ている人を引き込む音楽、ダンス、キャストだけでなく、「共感できるストーリー」があるからなのかもしれません。

まるで自分たち自身が「ワシントンハイツ」の住人になったような気持ちになる。それがこの作品に惹きつけられていく要素なのではないでしょうか。


■韓国での再演が12月に決定!新キャストも


「イン・ザ・ハイツ」は12月に韓国での再演が決定。ウスナビ役のKey、ドングン、ウォンヨンなどは引き続きキャスティングされますが、ベニー役には新しくVIXXのエン(N)がキャスティングされました。VIXXの中でもダンスに定評のあるエンがどのようなベニーを演じるのか気になるところです。他にも新しいキャストが増えているので、楽しみですね。

筆者は千秋楽のみの鑑賞でしたが、他のキャストの「イン・ザ・ハイツ」を見たいと思いました。きっと今回見たウスナビや、ベニー、ニーナ、ヴァネッサとは違う「イン・ザ・ハイツ」が見れるはず。

みなさんにも是非見て欲しいミュージカルです。きっと見終わったあとにウスナビから「希望」を感じられるはずですよ。

それでは、また!アンニョ~ン♪

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(西門香央里)