このミュージカルには「希望」がある…韓国版「イン・ザ・ハイツ」横浜公演開幕!

2016/10/17 19:00 西門香央里 西門香央里




今、韓国ではミュージカル人気がすごい!毎日どこかでミュージカルを上演していると言っても過言がないくらいです。その韓国ミュージカルは、日本に上陸することがしばしば。「イン・ザ・ハイツ」もその一つ。

今回は8月の東京公演に続き、横浜公演がスタートしたばかりの「イン・ザ・ハイツ」の初日前合同取材会に行ってきました。横浜公演より新キャストとして加わったウスナビ役の俳優のヤン・ドングンと、ニーナ役のK-POPアイドルグループf(x)のルナを迎えての取材会の様子をお伝えします。


■「イン・ザ・ハイツ」とは?



「イン・ザ・ハイツ」2008年度トニー賞最優秀作品賞など4部門を受賞、2009年度グラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞したブロードウェイミュージカル。アメリカ、マンハッタン北西部の都市ワシントンハイツを舞台に、そこに暮らす移民たちが夢や希望を抱きながら生きて行く姿を描いた作品です。

ミュージカル内には、ラップ、ヒップホップ、ストリートダンスといった要素をふんだんに取り込み、今までにはない新しいジャンルの作品として話題になりました。

この「イン・ザ・ハイツ」の韓国版は、韓国でも定評のある人気と実力を備えたキャストを集めて2015年に上映され、パワフルなパフォーマンスで観客の心をつかみました。日本では今年8月に渋谷のBunkamuraオーチャードホールで上演されたのに続き、10月16日より横浜公演の開催が決定。

新キャストにヤン・ドングン(ウスナビ役)と、INFINITEのソンギュ(ベニー役)を加え、引き続きSHINeeのKey、INFINITEのドンウ(ともにウスナビ役)や、Double S 301のキム・ヒョンジュン(ベニー役)、f(x)のルナ(ニーナ)といったキャストを迎えて、横浜でも上演されることになりました。


■それぞれの俳優によって違う「ウスナビ」がいる(ヤン・ドングン)



今回の韓国版「イン・ザ・ハイツ」には、各主要キャストは何人かの俳優によるWキャストとして演じられます。自分の演じる役について質問をするとウスナビを演じるヤン・ドングンはこう語ってくれました。

ヤン・ドングン「ウスナビは4人の俳優が演じますが、キャラクターのアプローチも違いますし、それぞれの深さも全然違います。そして、生まれた土地も違います。
一つのキャラクターをみんなで作っていくというよりも、演出の方が各自にあったウスナビを作ってくれました。だから、セリフも全く違うんです。ですので、深みのあるウスナビを見たい方は、僕のウスナビを見に来てくれたらいいんじゃないかなと思います(笑)」



子供の頃に芸能界入りをし、多くのドラマなどで活躍してきた俳優であるヤン・ドングンだからこその回答ですね。他のウスナビ役の出演者にはSHINeeのKeyやINFINITEのドンウのようなアイドル出身だったり、数多くのミュージカルに出演するベテランのチョン・ウォンヨンがおり、全くタイプが違うのが面白いところです。

つまり、それぞれが演じる回を見れば、全くタイプの違う個性的な4人の「ウスナビ」が見れるということになるのでしょう。これは楽しみですね。


■イ・ジナ氏はお姉さんであり、お母さんのような存在(ルナ)



「イン・ザ・ハイツ」の演出家であるイ・ジナは「厳しい」ということで有名。しかし、決してそんなことはないと2人は言います。

ヤン・ドングン「とてもカリスマがある演出家だと聞いていましたが、厳しいと思ったことはありません。このミュージカルの曲やラップを韓国語にしなくてはならず苦しんでいた時に、演出家のジナ氏は『気楽にしなさい』と言ってくださいましたし、洋服も自分の合うように考えてくれました。衣装のハーフパンツもスリッパも実は自前で、『それいいんじゃない?』と言ってくださったので、そのまま使うことにしました。
彼女はこのように俳優達に合わせてくれるんです。本当にいい演出家だと思っています」



ルナ「イ・ジナ氏は、実は私の大学の先生でした。学生の時はとても厳しい先生でしたが、社会に出て俳優として会ったら、俳優として自分を扱ってくれてとても感動しました。
ジナ氏は私がうまくいくようにと、いつも動機付けをしてくれる人です。足りない部分を埋めてくれようとしたり、とても良いアドバイスをくれたりと、私が俳優として成長できるようにと、その道を教えてくれます。オンマ(お母さん)のようで、オンニ(お姉さん)のような、私にとっては演出家以上の存在の人ですね」

イ・ジナ氏は俳優の個性を引き出してくれ、大切にしてくれる演出家なのでしょうか。だから、それぞれの俳優の色に染まった「ウスナビ」や「ニーナ」が出来上がっているのかもしれないですね。


■この作品は肯定的なエネルギーであふれている(ヤン・ドングン)



では、この「イン・ザ・ハイツ」の魅力とはなんなのでしょうか?2人はこう語ります。

ヤン・ドングン「韓国の最近の大衆ミュージカルは派手なステージや照明、残忍なもの刺激的な内容のものが人気があるのですが、それは多分韓国の人たちが日常に疲れてて、そういう刺激的なものを求めているのかもしれません。
でも、この作品は内容も装置もそんなに派手なものもないし、残忍だったり刺激的ということもありません。とても温かいミュージカルなのです。
街を愛する人々を描いていて、彼らがみんな夢を見ている、という内容ですし、軽快な歌で肯定的なエネルギーで温かさを感じられる、そういう作品です」



ヤン・ドングンは作品の持つポジティブなエネルギーについて話してくれました。一方、様々なジャンルの曲がミックスされているのが、この作品の魅力だとルナはいいます。

ルナ「このミュージカルはポップ的な歌も多く、様々なジャンルの歌が入っています。それが調和しているということは、すごいことだと思います。ラップもちゃんと歌詞が聞こえて、それが演技として成り立っているのが面白いです。
ニーナにはドラマチックでポップ調の歌が多いのですが、それがパワフルで全体に溶け込んで、とても最高の作品として仕上がっていると思います」


■このミュージカルで「希望」を感じて欲しい(ルナ)



ワシントンハイツという中南米系移民たちが暮らす場所を舞台にした「イン・ザ・ハイツ」。この場所で夢を追ったり、恋愛をしながら懸命に生きる住人たちの姿を明るく描いています。この作品を通して観客に伝えたいことについて、ルナはこのように話してくれました。

ルナ「最後の曲に『新しい日が昇る』という歌詞があるのですが、目を開けた時に「新しい日が来たな〜」と思いながら感謝している人はどれくらいいるのかな?といつも考えるんです。辛い状況に勝っていかなければならないという人が、このミュージカルの舞台であるワシントンハイツにはたくさんいて、そういう人々のことを思い出します。
ウスナビは常に『希望』に満ち溢れていて、フィナーレでは『喜び』が花開くのですが、観客の方に感じて欲しいのは、ウスナビの持つ『希望』という部分です。周りの人に感謝をする心をいつも持ち、ポジティブに今を生きていけば幸せになれるということが、この作品に込められていると思います。ここの人たちはみんな辛い人たちなんですが、希望を忘れずに持っています。だから、『新しい日が昇る』という歌詞がとても好きなんです。
このようないい作品に出会えて感謝していますし、見ている人たちも、『また明日も太陽が昇る』と思って希望を持ってくれたらいいなと思っています」

作品から感じられる「ポジティブ」なエネルギーを感じて欲しいというルナ。ヤン・ドングンも「いいメッセージですね」と深く頷いていました。決して恵まれた環境ではないワシントンハイツという場所で夢を持ちながら生きる人々から溢れ出す前向きなエネルギーが、「イン・ザ・ハイツ」にはあるのかもしれないですね。


■横浜公演が開幕!千秋楽は11月4日



二人ともとても仲が良さそうで、和気あいあいな雰囲気でした。ヤン・ドングンもルナも言っていたのが、「作品に流れるポジティブなエネルギー」のこと。きっとこの作品を見に行った後は、希望に満ちた気分になれるかもしれませんね。

横浜公演は10月16日を皮切りに、11月4日まで続きます。公演期間には日によって出演者に会えるアフタートークショーや、ハイタッチ会などもあるそうなので、ホームページをチェックしてくださいね。ぜひ、韓国ミュージカルの面白さをこの「イン・ザ・ハイツ」で確かめてみてください。

それでは、また!アンニョ~ン♪

■「イン・ザ・ハイツ」韓国版
公演名:『イン・ザ・ハイツ』 (韓国語上演、日本語字幕付)
日程:2016年10月16日(日)~11月4日(金)
場所:KAAT神奈川芸術劇場
スタッフ:原案・作詞・作曲:リン=マニュエル・ミランダ
演出・韓国語歌詞:イ・ジナ/音楽監督:ウォン・ミソル
振付:チェ・ヒョンウォン、キム・ジェドク
キャスト:
ウスナビ役・・・ヤン・ドングン/チョン・ウォニョン/ドンウ(INFINITE)/Key(SHINee)
ベニ―役・・・キム・ヒョンジュン(Double S 301)/ソンギュ(INFINITE)/イ・サンイ
ヴァネッサ役・・・オ・ソヨン/J-Min
ニーナ役・・・チェ・スジン/ルナ(f(x))、他
公式サイト:http://musical-intheheights2016.jp/


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(西門香央里)