変わるけど変わらない…雑誌『装苑』のPerfume特集がすごい

2016/3/29 12:00 小池啓介 小池啓介



装苑 2016年 05月号 [雑誌]
装苑 2016年 05月号/文化出版局


3月28日に発売になった雑誌『装苑』2016年5月号のPerfume特集が、あまりにも濃密に過ぎます。 ふだんこの雑誌を手に取らない、Perfumeにちょっとでも興味のある方の背中を押すべく、微力ながらこのコラムで紹介することにしました。


■『装苑』のファッションのとらえかた

ファッションを複合的な存在、あるいは表現としてもとらえ、たとえば映画や音楽を――ときには衣服をさしおいて――前面に押し出して特集を組む。僕の『装苑』のイメージはそのような感じです。ですので、男性である自分も、内容によっては手に取ることもあります。

ちなみに2016年2月号では「音楽とファッションとエモーション2016」と銘打って、数多くのミュージシャンを登場させ、ファッションが彼らの音楽に与える影響について取材しています。

表紙は水曜日のカンパネラ(のコムアイ)。先日テレビ『SMAP×SMAP』に登場し一躍時の人となったバンドcero(セロ)や本年の注目株Awesome City Club(オーサム・シティ・クラブ)のPORIN、ユキエというバンド界屈指の美女2名を登場させる目利き具合がたまりません。

「女性向けファッション誌」と分類するにはあまりにエッジの効いたこの雑誌の底力は、今号の「カルチャーなしでは生きられない!」という特集で遺憾なくさく裂。特集の2として組まれた「Perfumeというカルチャー」のページで、これまた“『装苑』だからできる”掘り下げを行なっていました。


■カルチャーとしてのPerfume

義理立てし過ぎて、前置きが長くなりました。あらためまして、Perfume特集は10ページ。全体は3部構成となっています。

まずはメンバー3人への一問一答形式のインタビュー。続いて近年の彼女たちの衣装をもとに、作り手のクリエイティビティ――創造力に迫り、最後に「Perfumeを構成する5名のクリエイター」に対し、メンバーと同様に一問一答でインタビューを行っています。

『装苑』ならではの特集は、やはり、まんなかに位置する「衣装とビジュアルクリエイション」の部分と思われます。あるものは80のパーツから成っているといったふうに、衣装の数々が、その制作過程にも言及されています。おそらく『装苑』の普遍的な読者である「服飾デザイナー」やそれを目指す人々にも興味を持たせられるのではないかと思われる、良質の内容といえるのではないでしょうか。

もちろん、それだけではありません。「すべての衣装に、考え抜かれた理由と複雑な要素が存在する。」と書かれているように、ひとつひとつの衣装に対する製作者やPerfume本人たちからのコメント、さらに記事の分析によって、ファンにとっては、衣装とともにある思い出に、さらに新たな角度から光があたるようになっているのです。

ビジュアル面に目を向けるだけでも、Perfumeというグループが、実に独創的な成り立ちをしていること――それを一種のカルチャーと表現する行為が、あながち大袈裟でもないこと――が再確認できるわけですね。

のっちの貴重なスカート姿が見られる「Spending all my time」



■変わり続けるPerfume、変わらないPerfume

本人たちのインタビュー、あるいはクリエイターの方々のコメントには、あ~ちゃんの回答にある「まだまだPerfumeっていろいろできるんだよっていう可能性」という表現と、同種のものがたくさん登場します。

求心力――この特集から見えてくるのは、Perfumeという3人の女性が、長きに渡る活動で育んできた、人を巻き込む力の強さです。さらに、それはとても強い共通認識に支えられている。このグループに関わる皆がみな、同じ可能性を信じ、自信の創造力との相乗効果を楽しんでいるようです。

また、それが決して強引なかたちではないところが清々しい。たとえばよくある「カリスマ」という表現がいっさい出てこないのも興味深いところです。 「Perfumeを構成する5名のクリエイター」の項目で、メディアアーティストのシャカ兄――もとい真鍋大渡さんの「真鍋さんにとってPerfumeとは」に対する長い長い回答には、なるほどそうなのか、と得心しました。

そして、浮かび上がるもうひとつの大切なキーワードは一貫性――“軸”のブレなさ加減こそ、変化を受け入れるための重要な受け皿なのでしょう。

来月発売となる新作アルバム『COSMIC EXPLORER』のジャケットで、吉田ユニのディレクションによって、ついに“記号”と化したPerfume。『装苑』表紙にも、同じように“記号”となって3人が並んでいます。でも、決して埋没していない。どのような“絵”のなかにあっても、そこにあるのは常に“あの3人の姿”なのです。
変わるけれど、変わらない。彼女たちは、刺激と安心感という相反する感覚を受け手に与える稀有な存在に違いありません。

最後に、雑誌内24ページ、「PerfumeがPerfumeであるために意識していることは?」という質問に対するあ~ちゃんの回答に、このグループの辿ってきた奇跡的な道のりのスタート地点を見ることができます。具体的な引用は避けます。ぜひとも本誌を確認していただきたい。

それにしても、やっぱり、のっちがキーパーソンなのか……なんだかおもしろい。なにはともあれ、『装苑』2016年5月号はファン必携の1冊です。

「FLASH」(short ver.)



(小池啓介)


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