宇野が浅田の手を…ファン垂涎の「メダリスト・オン・アイス」を振り返る!

2016/1/2 10:00 東谷好依 東谷好依


フィギュアスケート日本女子ファンブック PATINAGE〈パティナージュ〉2016 (SJセレクトムック)


12月25〜27日に真駒内セキスイハイムアイスアリーナで行われた全日本選手権。羽生結弦選手の男子4連覇、宮原知子選手の2連覇、ジュニア勢の大躍進など、今年の全日本選手権でも数々のドラマが見られた。

なかでも印象的だったのが、浅田真央選手の表情だ。フリースケーティング(FS)でフィニッシュのポーズを決めると、浅田選手は余韻をかみしめるように目を閉じて、それから小さく頷いた。

今大会でショートプログラム(SP)5位から巻き返し、少しだけ自信を持ち直したようにも見える。来年3月の世界選手権の舞台で、とびきりの「真央ちゃんスマイル」が見られることを期待しよう。

さて、激闘から一夜明けた28日。エキシビション大会の「メダリスト・オン・アイス」では、各選手の個性がきらめいた。


■フィギュアの未来は明るい!個性あふれるジュニア勢が続々

赤いヘッドホンをしてリンクに現れたのは、女子シングルの銀メダルに輝いた樋口新葉選手。まだ中学生だが、昨年に引き続き2度目の表彰台に上がった。

エキシビションナンバーは、「オール・アバウト・ザット・バス」。コミカルな動作も交えて快活に踊る姿は、ティーン映画のヒロインを思わせる。フィニッシュ後、一旦はリンクサイドに引き上げるも、「全日本銀メダリストの演技をもう少し見てみたいと思いませんか」という呼びかけに応じて、再びリンクへ。嬉しそうな表情でSPの「マンボ・ファンタジー」を演じた。

中学2年生の白岩優奈選手は5位入賞を果たし、世界ジュニア選手権代表の座を射止めた。エキシビションナンバーは、ミュージカル『ウィキッド』の「脅威に挑む-負けない」。「ジャンプの申し子」の異名そのままに、鮮やかなジャンプを軽々と決める。練習では3アクセルや4サルコウにも挑戦しているという紹介に、解説席の荒川さんも「できそうな速さですよね」と大きく頷いた。

同じく中学2年生の本田真凛選手。生来の華やかな雰囲気が持ち味だ。卓越した表現力は、ショーの舞台でさらに輝きが増す。今回は、黒い衣装で大人っぽくまとめ、シルクハットをかぶって登場。「ディーズ・ブーツ・アー・メイド・フォー・ウォーキン」に合わせて、小道具のハットを蹴り上げたり、空中に高く放り上げてキャッチしたり。アクロバティックな演技で会場を湧かせた。

男子のジュニア勢も負けじと続く。山本草太選手のエキシビションナンバーは、『ニュー・シネマ・パラダイス』の「愛のテーマ」。ノーブルな雰囲気で、映画の世界観をしっとりと表現した。全日本では、ジュニア勢で最高の6位入賞を果たしたが、「演技内容に関しては悔しい部分も多い」とコメント。世界ジュニア選手権まで練習を重ねて、最高のパフォーマンスを披露してほしい。

今大会では、樋口選手や山本選手を筆頭に、中学生のジュニア勢がシニア顔負けの演技をみせ観客を驚かせた。2〜3年後の全日本は、彼らを中心に大荒れになる予想。今から楽しみで仕方ない!


■シニア勢は表現力で魅了!生演奏をバックにした最高のショータイム

今回のエキシビションで会場をいちばん盛り上げたのでは?と感じたのが、本郷理華選手の演技だ。もともと、ダンスナンバーが得意な本郷選手。ジェニファー・ロペス の「レッツ・ゲット・ラウド」に合わせて、生き生きと存在感のある滑りをみせた。本郷選手には、何が飛び出すかわからない面白さがある。SPの「キダム」、FSの「リバーダンス」、そしてエキシビションの「レッツ・ゲット・ラウド」。唯一無二の個性で、今大会でもファンを増やしたことだろう。

浅田選手のエキシビションナンバーは、フレッド・アステアの「踊るリッツの夜」。ステッキとシルクハットを携えた浅田選手がリンクに登場すると、ひときわ大きな歓声が沸いた。天性のダンサーの資質を存分に活かしたひょうきんで楽しいステップ。燕尾服を模した衣装がひるがえり、鮮やかなピンク色の裏地がのぞく。控え室のモニターの前にはジュニア勢が陣取り、正座をして浅田選手の演技を見守る。浅田選手が演技後にみせたすっきりとした笑顔に、「やっぱり真央ちゃんはこうでなくちゃ!」とジュニア勢も感じたに違いない。

「昨年はご厚意という感覚で試合に出させていただいたんですけれども、今回は自分もこの試合に懸けて真剣に戦いにきたという気持ちがあった」 シニア1年目で銀メダルに輝いた宇野昌磨選手は、SP後のインタビューでこう話した。スケートの技術はもちろん、昨年と比べて変化したのはその表情だ。無邪気な少年から精悍な男の表情へ。その変化の仕方は、ジュニアからシニアに移行したときの高橋大輔選手と重なる。エキシビションナンバーはベートーベンの「ヴァイオリンソナタ第9番」。シリアスな曲調にのせて、今季大きな強みとなった3アクセルを決めた。

昨年からの女王の座を守った宮原選手は、純白の衣装で登場。「翼をください」に合わせて、情熱的なSPとも可憐なFSとも違う静けさで観客を釘付けにした。鮮やかなジャンプ、ふわりと漂う羽根のような腕のしなり。同じ「女王」と呼ばれる立場でも、昨年とは表現の幅が格段に違う。アンコールは、SPの「ファイヤーダンス」。ステップが始まると、先ほどまでとは180度ムードを転換。黒目がちの大きな目にも力がこもった。

トリを飾ったのは、羽生選手だ。点数の関係ないエキシビションでも、羽生選手の演技は、瞬きすら惜しいと感じてしまう迫力がある。「天と地のレクイエム」は、ヒリヒリとした痛みを感じるようなプログラム。その気迫に呑み込まれ、気がつくと演技が終わっているという印象だ。フィニッシュのポーズを決めると、羽生選手は天井を仰いで「ありがとう」とつぶやいた。大きな歓声と拍手が羽生選手を再びリンクへと誘う。アンコールは「SEIMEI」。渾身のステップとハイドロブレーディングに、歓声はさらに大きくなった。

フィナーレでは、宇野選手が浅田選手の手を引いてエスコートするファン垂涎の場面も。ラストは25人の選手が大きな円になり一斉にポーズ。こうして2015年最後の大会は幕を閉じた。


(東谷好依)



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