6位から逆転銀!羽生結弦スケートカナダでの「竜馬のつまずき」

2015/11/8 10:00東谷好依 東谷好依


フィギュアスケート日本男子応援ブック Vol.11
「フィギュアスケート日本男子応援ブック Vol.11」/ダイアプレス



「情けなさすぎて笑いしか出てこない」

ショートプログラム(SP)が終わったあと、羽生結弦選手は憂色とも苦笑いともつかない複雑な表情を浮かべて演技を振り返った。

10月31日〜11月2日(日本時間)に、カナダのレスブリッジで行われたグランプリ(GP)シリーズ第2戦「スケートカナダ」。男子シングルのショートプログラム(SP)を見ながら、思わず目を覆いたくなったのは私だけではないだろう。


■ジャンプの得点が0点に!? 羽生のSPで何が起きたか

まさかの6位か、羽生選手だからこそ6位に留まったというべきか—。昨シーズンと同じショパンの「バラード第1番」に挑んだSPで、2つの大きなミスが生じた。

基礎点が1.1倍になる後半のジャンプ。4トゥループは軸が作れず、2回転に。続くコンビネーションジャンプでは、2つ目の3トゥループが2回転になった。


男子シングルのSPでは、次の7つの要素を行わなければならない。

1.アクセルジャンプ(3回転または2回転)
2.ステップからのジャンプ(3回転以上)
3.コンビネーションジャンプ(4+3、4+2、3+3、3+2回転のいずれか)
4.フライングスピン
5.足換えスピン
6.コンビネーションスピン
7.ステップシークエンス


今回の敗因は、ステップからのジャンプが2回転になってしまったことと、同じジャンプを2回跳んでしまったことにある。2つのジャンプの得点がともに0点となり、計20点を取りこぼす結果となった。

しかし、演技構成点では8点台後半〜9点台の高得点を揃えるなど、羽生選手ならではのカバー力で6位に留まったのはさすが。「フリーまでの24時間で立て直す」との宣言通り、FSは羽生選手らしい気迫のこもった演技を見せ、逆転の銀メダルを勝ち取った。


■圧巻!ますます磨きがかかったP・チャンのスケーティング

地元カナダのパトリック・チャン選手は、ファンの大歓声を浴びて登場。24歳になり、ますますいい男度を増した気がする。ジャパン・オープンでも感じたが、今シーズンのチャン選手はとにかく速い! リズミカルに鮮やかに、リンクをサァーッと横切っていく。

ショパンの「革命のエチュード」から始まるFSプログラムは、緩急が激しくスリリング。チャン選手の世界観にグイッと引き込まれて、気がつくと4分半が終わっている……という印象だ。スケーティングスキルに定評のあるチャン選手。今大会では、満点の10点をつけるジャッジもみられた。

それゆえに、SPで3ルッツが2ルッツになるなど点数の取りこぼしがあったのは残念。もしもSPを完璧にこなしていたならば、驚異的な総合点が見られたはずだ。


■25歳の村上大介がみせた渾身のFS

今大会で実力を示したのが、25歳の村上大介選手だ。SPでトップに立ち、「追われる」立場で迎えたFS。しかも、チャン選手が190.33点というハイスコアをたたき出した直後の演技だ。緊張しないわけがない。

ザワついた雰囲気のなかで始まった「Anniversary」。YOSHIKIが作曲したスケール感のある曲にのせて、冒頭の4サルコウを鮮やかに決めると、続く4サルコウ+2トゥループも落ち着いて決めてみせた。

2分30秒を越えたあたりからは、グッと色気のあるムードに。ゆったりとした上半身の動きは優雅で、ベテランならではの表現力の幅を感じさせる。ラストはコンビネーションスピン。左手を高く上げてフィニッシュしたとたん、「やりきった」という達成感がこみあげたのだろう。感極まって歪んだ表情を両手で隠した。


■永井のGPデビューは浅田のFSと同じ「蝶々さん」

GPシリーズデビュー戦を銅メダルという素晴らしい成績で終えたのは、16歳の永井優香選手だ。SPの曲は、浅田真央選手のFSと同じ「蝶々夫人」。浅田選手が切なくも誇り高い女性の生きざまを演じるとすれば、永井選手のそれは、ピンカートンと出会った当初の初々しく可憐な15歳の少女を思わせる。

FSでは冒頭の3ルッツ+3トゥループのコンビネーションジャンプを成功させ、音楽にのって勢いよくリンク中央へ。後半の3トゥループでステッピングアウトなどのミスがあったものの、演技終了後は両腕を上げて喜びを表現した。


■心機一転のショートカット、久しぶりの佳菜子スマイル

村上佳菜子選手も4位と健闘した。SP後に見られた久しぶりの「佳菜子スマイル」に、ホッとしたファンも多かっただろう。

2010-2011シーズンにGPシリーズデビューを果たし、スケートアメリカで堂々の1位。ファイナルでも3位に入り、浅田選手に次ぐ新たな才能として一気に注目された。しかしその後はファイナルへの出場がかなわず、ここ2年ほどは絶不調。「試合が、先シーズンから怖いと思うようになっていた」という。

今シーズンは、長かった髪をバッサリ切って心機一転。デビュー当時の明るくチャキチャキしたイメージから、大人の女性への深化。上半身を大きく使ったマイムは気品を感じさせた。


■持ち越しとなったトップ2の対決

今シーズンのGPシリーズで最も注目を集めていた羽生選手とチャン選手の初対決。どれほどの高得点が出るか、期待に胸を膨らませていたファンも多かったと思うが、ハイスコア対決は次回に持ち越しとなった。

その「次回」がいつになるかは、羽生選手とチャン選手の成績にかかっている。羽生選手が日本大会(NHK杯)、チャン選手がフランス大会(エリック・ポンパール杯)でそれぞれ表彰台に上がることができれば、寒風吹きすさぶ12月に、手に汗握る戦いを見ることができるだろう。


(東谷好依)