羽生結弦NHK杯優勝!悲願の300点超えは「負けず嫌い」が導いた?
NHK杯国際フィギュアスケート競技大会 公式メモリアルブック (教養・文化シリーズ)
「次元が違います」
羽生結弦選手の演技後、NHKのアナウンサーが発したこの言葉に、テレビ観戦していた多くのファンがうなづいたに違いない。
11月27〜29日に長野で行われたGPシリーズ最終戦・NHK杯は、「ゆづ、スゴい!」に終始した感がある。男子シングルの勝敗が決まった翌日のニュースやワイドショーは、羽生選手の話題でもちきり。フィギュアファンじゃない人も、一度は気迫のこもった「SEIMEI」を目にする機会があっただろう。
男子悲願の「300点超え」を達成してみせた羽生選手。それを後押しした要素のひとつに、激しいまでの“負けず嫌い”が挙げられるのではないだろうか。
■ライバルに負けたときは「腹が立つ」ほど悔しい
「『絶対に抜かしてやるぞ、見てろよ』と思いながら(演技を)やっていました」
SP(ショートプログラム)終了後のインタビューで、直前に滑った金博洋(きん・はくよう)選手について聞かれると、羽生選手はこんな言葉を口にした。金選手はSPで難易度の高い4ルッツ+3トゥーループのコンビネーションジャンプに成功。95.64点という高得点に会場がどよめくなか、羽生選手はいつもより厳しい表情でリンクに出て行った。
現役のフィギュアスケーターのなかで、羽生選手ほど自身の負けず嫌いをはっきりと表す選手はいない。もちろん、負けてヘラヘラしているようでは、アスリートとして上にいけないだろう。どの選手もみんな、負けず嫌いには違いないのだ。けれども、羽生選手のそれは、“次元が違う”。
8月28日に放送された「あさイチ」(NHK)のなかで、羽生選手を中学卒業まで指導した都築章一郎コーチはこう話している。「負けず嫌いでしたからね。やると決めたときには、ものすごい集中力を持っていました」。小学校低学年の頃から、年上の選手にもライバル心をもって挑んでいったというから、負けず嫌いは生来のものなのだろう。
ソチ五輪までの歩みを追った『蒼い炎』(扶桑社/2012)では、GPシリーズに初参戦した2010-11シーズンのロステレコム杯でのエピソードが紹介されている。前シーズンの世界ジュニア選手権で優勝を果たした羽生選手。ところが、満を持して出場したロステレコム杯で、ロシアのアルトゥール・ガチンスキー選手に負けてしまった。
演技の出来や順位よりも、ジュニア選手権で下したガチンスキー選手に負けたことが悔しかったらしく、「考えただけで腹が立ってきた」とコメントしているのだ。アスリートのコメントで「腹が立ってきた」って、聞いたことないわ……。羽生選手の負けず嫌い、恐るべし。
スケートカナダでパトリック・チャン選手に負けて奮起したのか。それとも、同大会のSPでミスを重ねた自分に対して悔しさが募ったのか。NHK杯開幕前のインタビューでは「かなり一生懸命練習した」と強調。それほど、スケートカナダからの1ヶ月間は練習漬けの毎日だったのだろう。この日、羽生選手が何としても負けたくなかったのは、“努力を重ねてきた自分自身”だったのかもしれない。
■まるで北島マヤ!?氷上の強さとはにかみのギャップがかわいい宮原知子
羽生選手の快挙と対極をなすように、浅田真央選手の「3位」も大きく取りあげられた。SPでは3アクセルで転倒、後半の3ルッツは1回転になり0点に。FSでも、冒頭の3アクセルが途中で開いてしまうなど、ジャンプのミスが相次いだ。
表彰台に上がったにもかかわらず、「どうした、真央!?」とでも言いたげな報道を見ていると、浅田選手はいつでも金メダルをとらきゃいけないのか、とも思う。しかし、「いつでも強く、感動的な真央ちゃん滑り」を期待してしまうのは、私も同じだ。
実は、本大会で不調だったのは、浅田選手だけではない。女子シングルではむしろ、ほぼ全てのトップ選手が振るわなかったといっても過言ではなかったのだ。スケートカナダで優勝したアメリカのアシュリー・ワグナー選手はFSのコンビネーションジャンプで大きく崩れ、ロシアの新星アンナ・ポゴリラヤ選手はSPでミスを連発し、キス&クライで涙をみせた。
そんな中で、ただ1人完璧な演技をしてみせたのが、宮原知子選手だった。SPでは真っ赤な衣装をまとい、強く躍動感のある「ファイヤーダンス」を披露。1位で迎えたFSでは打って変わって、恋する相手を想う可憐な少女を演じた。150cmの小さな体のどこにこんな力が潜んでいるのだろう? そう思うほどエネルギーに満ちた演技は観客をとりこにし、フィニッシュと同時に自然とスタンディングオベーションが起こった。
優勝が決まると、イケメン・田村コーチには肩を小突かれ、濱田コーチには左手をとられてブンブン揺すられ……。まるで子どものような扱いだが、宮原選手に対する周囲の愛情が垣間見えたシーンだった。はにかみやながら、誰よりも熱いものを秘めた17歳が、初出場のGPファイナルでどんな演技をみせてくれるのか、とても楽しみだ。
■今年も華麗な技を披露!どーもくんのアイスショー
さて、バチバチと火花が散るような戦いとは別に、毎年NHK杯で話題になるものがある。それが、開会式やエキシビションで披露される「どーもくん」のアイスショーだ。NHKのキャラクター「どーもくん」と、うさぎの「うさじい」、いたちの「たーちゃん」の3匹がスケート靴を履いて滑るのだが、「着ぐるみを着てよくぞここまで……」と驚くほどの演技をみせるのだ。
特に、「ぬりかべ」のような体型で手も足も短いどーもくんは、なにかの拍子に転んだら起き上がれないんじゃないかと、見ているこちらがハラハラしてしまう。演出か分からないが、今年のエキシビションでは途中で転倒し、羽生選手に助け起こしてもらっていた。
▼youtubeに上がっていた2013年の映像。必見!
1:58あたりからのうさじい、カッコよすぎ……!
(東谷好依)
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