今が旬!ラップするアイドル「lyrical school」リリスクとは?

2015/9/19 11:00 小池啓介 小池啓介


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第二回目はラップをするアイドル・グループをご紹介します。

lyrical school(リリカルスクール)。通称“リリスク”は、ヒップホップ・アイドル・ユニットを標榜する、ayaka(リーダー)、ami、hina、mei、minan、yumiの六人組です。

2010年の結成時はtengal6という名称だったグループ名を2012年にlyrical schoolと変更し、メンバーチェンジを経て現在の6人編成となっています。

今年、リリスクはついに初の全国ツアーを敢行し、7月25日にZepp DiverCityで大団円をむかえました。


■過去最大規模の会場で魅せた最高のショー

夜の遊園地の映像がスクリーンに流れて公演がスタートしてから幸福感が会場を満たしたラストまで、これまでの彼女たちのライブにはなかった映像を活かした演出の数々に、オタクたちは驚きを隠せませんでした。

バラエティに富んだ楽曲を並べた――オタクを狂わせ躍らせるブロック、オタクを陶酔させる聴かせるブロックと緩急自在の――構成が映像の効果によっていっそう際立ち、コンセプチュアルな“ショー”になっていたのです。

グループのもっている様々な要素が、スタッフおよびメンバーの考える理想の高みに達し、かつそれらを美しく調和させられる時期に、彼女たちはたどり着いたのだと思います。 いきなり結論をいってしまいますと、今が旬なのです。ステージ上の輝きは、その確信を与えてくれるものでした。

楽曲の話をします。
リリスクは、これまで常にコンセプトの明確なアルバムを生み出してきました。tengal6時代に1枚、lyrical schoolになってからは2枚のフルアルバムをリリースしています。 都市を背景に女の子の日常を描いた『CITY』(tengal6名義)。デートのはじまりから終わりまでを追う『date course』。そして本年の最新作、ライブの幕開けから帰宅後にいたるアイドルの1日を封じ込めた『SPOT』です。

いずれも、場面ごとの色とりどりの感情の変化とコントラストが、作品を通しての聴きどころといえるでしょう。
多彩であること――これがリリスクの魅力のキーになっていると僕は思います。


■多彩さの理由とは?

ラップ(=歌)を乗せる音楽部分をヒップホップではトラックともいいますが、このトラックたちが実ににぎやかです。
それもそのはず、リリスクの作品には、多くのミュージシャンが楽曲を提供しています。

“新世代”のトラックメーカーtofubeats、ラッパーであり、ユニット(((さらうんど)))で独自のポップスを追求するイルリメ、KICK THE KAN CREWのLITTLE、餓鬼レンジャーにROMANCREWのメンバーなどなど多彩な提供者が多彩なシチュエーションに応じた楽曲を生み、さまざまなリリスクの“顔”がつくられてきました。

ためしに3つの動画をご覧ください。







いかがでしょうか。幅広い楽曲が多いこと――つまり、それはいろんな表情のアイドルが楽しめるということ。そう、ぶっちゃけてしまうと、ただただ楽しいのです。

デビュー当時は“ゆるふわ”、“へたうま”と半ば揶揄も込めて語られた不安定だったライブでのスタイルはいまやがらりと変貌し、アッパーな曲では激しくフォーメーションが入れ替わるダンスも加わり、複雑なマイクリレーまで難なくこなします。CDもライブも、一度体験するとオタクのみならず病みつきになる危険がたっぷりです。

「借り物だったヒップホップと今じゃ魂で共鳴するショーケイス!」(『SPOT』収録「I.D.O.L.R.A.P」より)と、ROMANCREWのALI-KICKが彼女たちにセルフボースティング(ラッパーが自らを誇るラップのスタイルのこと。故DEV LARGEが得意としていましたね)をさせたことが象徴的です。

統一感のあるコンセプト、幅広い楽曲、巧みなステージ演出、(本稿ではあまり触れていませんが)これまた多彩なメンバーの個性、そして“スキル”――いくつもの魅力を自分たちの成長の実感とともにライブでひとまとめにして披露することができる。多彩さがとっ散らかることなくぎゅっと凝縮されている。

リリスクは、いまもっとも見逃せない“場”を生み出すグループになっています。オタクや“耳の早い音楽ファン”に独占させておくなんてもったいない。
振れ幅の大きさの核にあるものはなによりも音楽。まずは彼女たちの楽曲をあなたのプレイリストに加えていただければと思います。

とてもとても大事なことなので、もう一度書きます。lyrical schoolは今が旬――そして、その“旬”の状態は味わいを変えながら、これからもずっと続くだろうと思わせてくれる。 本当に良いグループになりました。


■アイドル・ラップの現在

ラップをするアイドル(のカテゴリで活動する人たち)はなにもlyrical schoolに限りません。
本年とんでもないメンバーチェンジを経て再始動したライムベリー(詳しくは書きません。個人的には今年一番の衝撃で、僕はまだそのときの傷が癒えていません……)やエレクトロ色の強いトラックが強烈な印象を発する校庭カメラガールなど、おもしろいグループがたくさん活動しています。

9月16日には、そのまだまだ小さいけれどおもしろ過ぎるシーンにスポットをあてた『G.I.R.L.S RAP』というタイトルのコンピレーションアルバムが発売されました。 アイドル・ラップの未来が詰まった1枚には、もちろんリリスクも参加しています。

(小池啓介)