『どうする家康』で山田孝之演じる服部半蔵が大活躍!「服部?知らんな」との百地丹波(嶋田久作)の台詞にビックリしたワケとは

2023/8/4 18:00 龍女 龍女




(松本潤演じる徳川家康を守る、山田孝之の服部半蔵 イラストby龍女)

ストレートに忍者は本当はどうだった?を知りたいのなら

三重大学国際忍者研究センター
である。
『どうする家康』で忍者の監修をしているのが三重大学人文学部教授
山田雄司である。


(山田雄司 イラストby龍女)

元々は筑波大学大学院生の頃は『崇徳院怨霊の研究』で博士号をとった。
専門は一連の「怨霊」に観られる日本の信仰の研究者だった。
研究員として三重大学に採用されて2011年に教授になった。
2012年に三重大学の方針で学術研究のない忍者研究に移行した。

いわゆる忍者がやっている諜報活動いわゆる「忍び働き」は元々は専門職ではない。
伊賀や甲賀は古琵琶湖地層の影響で粘土質の土壌が形成されている。
すぐに水が乾燥しやすい土で、稲作に向かない土地柄なのだ。
その代わり陶土としては最適の土壌で、甲賀の信楽町では「信楽焼」伊賀でも「伊賀焼」と言った名物が出来た。
そこで焼物を売り歩く行商人が必要で、伊賀者は他の土地へ行き来する者が多かったのである。
すぐ隣の大和(現・奈良県)国も山に囲まれている。
大和国で『修験道』と言う日本独自の宗教が生れた。開祖は役小角で、熱心な信者は山伏の格好をして山で修行するのである。
『どうする家康』第29回で久しぶりに登場した本多正信(松山ケンイチ)は山伏の格好をしていた。
移動して情報を得る仕事として修験道の行者である山伏は何の違和感もなかった。


(本多正信を演じる松山ケンイチ イラストby龍女)

つまり、忍者とは宗教従事者と行商と言う情報を得やすい職人の思わぬ副産物だったのである。

甲賀と伊賀は国は違えど同じ忍者の里として交流はあったそうである。
筆者が幼少期に観ていたアニメ『忍者ハットリくん』(1981~1987)の少年忍者で伊賀のハットリカンゾウ(堀絢子)と甲賀のケムマキケムゾウ(肝付兼太)のようにライバル関係ではなく、婚姻関係も結んでいたようだ。

ただし、先程も指摘したように伊賀国には国内で主食である穀物の収穫量が少なかったことが長年の生活問題として重くのしかかっていた。

伊賀の忍者には服部氏族の子孫である
「千賀地」
「百地」
「藤林」

の三家があった。
生活が逼迫した千賀地家の保長は旧姓である服部に戻し、一族を引き連れ伊賀を出たとされる。
京へ出て室町十二代将軍足利義晴(1511~1550)に仕えたが、将軍すらも貧しい生活の強いられる時期だった。
肥沃な土地だった三河の領主松平清康(1511~1535)に主君をかえたらしい。
松平清康とは家康の祖父である。
しかし、清康は「森山崩れ」事件によって暗殺され、服部一族は不遇を託つことになる。
伊賀へ戻らなかったのはそれでも三河の生活の方がマシだったようだ。


『どうする家康』に、最初に登場したとき半蔵は実は徳川家の正式な家臣ではなかった。
しかも前半では半蔵は家康の忍び働きに呼ばれる度に
「忍びではござりませぬ」
と答えていた。

これは、重要なことで服部半蔵は確かに忍びを率いる人物ではあるが、忍びとは元々農民の身分なのである。
半蔵は忍びの里伊賀に繋がりはあるが地主で武芸にも通じているので、武士なのである。
しかし、まだ戦国時代は農民と武士の身分は曖昧でハッキリとした境目もない。

それでも服部半蔵正成と堂々と名前を名乗っていること自体が実は忍びではない確固たる証拠なのである。
三重大学人文学教授の山田雄司の言葉によれば
「上忍とは、名前を残さない存在である」
そうである。


伊賀越えは、直接忍びを率いる頭大鼠(松本まりか)の活躍もあって、わずか3日間の行程を乗り越えて、三河に渡れる白子湊にたどり着いた。
服部半蔵は褒美として、正式な家臣となった。


(松本まりかが演じる女大鼠 イラストby龍女)

史実では家康が江戸城を築いたときに、服部率いる伊賀者が警備をした入り口の一つが 半蔵門と呼ばれるようになった。

この「半蔵門」地下鉄の路線名にもなって、東京を代表する地名の一つだ。


1596年に服部半蔵正成は亡くなる。3代目半蔵を息子の正就が受け継ぐ。
そして、この正就は大坂の陣に参戦し行方不明になってしまう。

家康の危機的状況に親子で関わった服部半蔵。
まだ正就を演じる俳優は発表されていないが、大坂の陣における3代目服部半蔵の活躍が今から楽しみである。


名前が残るのは忍者ではない。
ある時代まで仕事の性質上、文献に残すことが出来なかった仕事なのだ。
服部半蔵は、誤解を含めて歴史の劇的場面に関わってしまった。
数多くのフィクションに登場する服部半蔵。


(1983年の大河ドラマ『徳川家康』の服部半蔵を演じた樋浦勉)


(『影の軍団』の千葉真一)


彼は名も残さなかった忍び達を引き出す鍵を持たされた忍びの金庫番なのである。



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