神木隆之介主演『大名倒産』が公開!堺雅人のあの作品など、同じテーマの作品と比べてみて分かったこととは!?

2023/6/23 18:00 龍女 龍女

『決算!忠臣蔵』は東京大学史料編纂所教授だった
山本博文(1957~2020)の著書
『「忠臣蔵」の決算書』(2012年、新潮新書)が原作である。
忠臣蔵の主人公で赤穂藩の家老大石内蔵助良雄(1659~1703)が遺した「決算書」史料「預置候金銀請払帳」を完全収録した。
史料から「忠臣蔵」の裏側に迫っていく。

赤穂藩藩主・浅野内匠頭長矩が吉良上野介義央に刃傷に及んだ「松の廊下事件」により即日切腹と、五代将軍徳川綱吉から裁定が下された。
それを不服として、改易された播州赤穂藩の元藩士の47人が江戸本所にある吉良家の屋敷に討ち入るまでの一連の事件が元になって、何度も舞台や映像化されたのが「忠臣蔵」と呼ばれる時代劇の一大ジャンルだ。

当初は、主君の仇を討つ忠義な家臣の物語として伝えられてきた。
近年では時代劇のオールスターキャストにふさわしい演目なので予算がかかること。
加えて上司に忠実な部下の鏡という世界観は、転職が当たり前になった今の日本にそぐわない。
映像化されることが少なくなったジャンルでもある。

しかし、この史料がでたことで、今の日本人のお金に対する意識の変化
「難しい問題はお金で解決すれば良いんじゃない?」
と言うことで忠臣蔵を再解釈できる題材を見つけた。


(『決算!忠臣蔵』より 大石内蔵助:堤真一と矢頭長助:岡村隆史 イラストby龍女)

と言うわけでこの映画の世界観を支配する副主人公として、勘定方の矢頭長助(岡村隆史)が活躍することになる。


さて最新作の『大名倒産』公開記念として、お金に困る時代劇映画を一部であるが取り上げてみた。
この作品群の共通点としては、メジャーの映画配給会社として、松竹が手がけたことが重要なことである。
直接作品群には関わっていないが、松竹が誇る社員監督山田洋次(1931年9月30日生れ)が、経済哲学のマルクス主義者である事と決して無関係ではない。
持たざる者がどうやってお金をやりくりしていくか?
お金は汚い綺麗もないただの道具であるが、人を狂わせる恐ろしい道具でもある。
それを使う人間の使い方に対する倫理観が問われる。

しかし、山田洋次に反発する後の世代もいて、代表格が津川雅彦(1940~2018)である。
「武士をだらしなく描いた左翼。山田のせいで日本映画はだめになった」
と非難している。
武士をどう描くか?
それは日本人の誇りとして気高く描くべきであろうか?
右翼は日本人の誇りを外国人をさげすむ目的に描きがちではないか?
という左翼側の反発も存在する。

皮肉なことに「お金で全て解決する」と思っている普通の日本人は昭和の右翼とは違うネトウヨと呼ばれる一部の傾向が観られている。
つまり、お金で武士を描いた時代劇は、ネット中心の日本社会を反映した今観るべき作品群なのである。

『武士の家計簿』の頃はインターネットを活用し始めた団塊ジュニア世代の俳優が主役だった。
生れて物心ついた頃にはネットが存在したデジタルネイティブと呼ばれる世代の
神木隆之介(1993年5月19日生れ)が主役の『大名倒産』は、お金事情を描いた時代劇映画の最新型として、どう描かれるのか?


筆者も映画に登場するような節約のために数日後(映画鑑賞料金の割引が利く火曜か水曜)に映画館へ行くので、非常に楽しみにしている。


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