神木隆之介主演『大名倒産』が公開!堺雅人のあの作品など、同じテーマの作品と比べてみて分かったこととは!?

2023/6/23 18:00 龍女 龍女

2014年に公開された『超高速!参勤交代』は、新人脚本家の登竜門で映画に特化した
『城戸賞』を2011年の第37回に審査員の満場一致で受賞したコメディである。
書いたのは土橋章宏(1969年12月19日生れ)である。

筆者は、本人がシナリオ・センターの記念パーティーで壇上に立って話をしているのを見かけたことがある。
まだ日本では映像配信が盛んでない頃に、
これからは配信のドラマ映画にシナリオライターは進出した方が良い
と語っていた。

筆者は、土橋章宏が習っていたゼミの後輩であるが入った時期が大幅にずれているので、少し見かけた程度の面識である。
噂はかねがね聞いていたが、どういう経歴かはよく知らなかった。
日立製作所から独立してWeb制作会社を立ち上げた経験から来る発言だったようだ。
時代の先を見据えていたので、筆者はそれを聞いてスゴいと思った。


(土橋章宏 イラストby龍女)

八代将軍徳川吉宗の時代に、今の福島県いわき市(2006年の映画『フラガール』の舞台でもある)にあたる小藩
湯長谷藩内藤政醇(まさあつ。演じるのは佐々木蔵之介)は、参勤交代で江戸から地元に帰ったばかり。
ところが老中の松平信祝(のぶとき。陣内孝則)が湯長谷にある金山の調査結果に疑いがあるので、事情説明のため「5日のうちに再び参勤せよ」という命令だった。
タイムリミットの5日間でどうやって、江戸に到着するか?
家臣達と知恵を絞って、ただでさえ金銭の負担が多い参勤交代を果たすのか?
と言う痛快コメディとなっている。

筆者は映画館で鑑賞した時に、銭勘定にうるさい家老の相馬兼嗣(そうまかねつぐ。西村まさ彦)が井戸に落ちて、一行とはぐれてしまいボロボロになった姿で現れて幽霊と間違えられる件で、腹を抱えて笑った。
この映画の中でどうやって、ワル老中からの無茶ぶりを小藩の殿と家臣達が切り抜けていったかは是非映画本編を見て欲しい。
2010年代を代表する傑作時代劇である。

参勤交代は、江戸から地元に戻る「交代」もある。
続編の『超高速!参勤交代リターンズ』(2016)と合わせて見ると、参勤交代がなんであるか分かる仕組みにもなっている。


(『超高速!参勤交代』より 内藤政醇役の佐々木蔵之介 イラストby龍女)

ちなみに悪役の老中、松平信祝は筆者の地元である東村山に縁がある。
玉川上水の分水の野火止用水を作った三代将軍家光の老中松平信綱の子孫だ。
菩提寺の埼玉県新座市野火止の平林寺に代々の墓の中にいる。
東村山にある国宝の建物正福寺に、松平信祝が奉納した灯籠もある。

さてこの『超高速!参勤交代』のヒットで味を占めた松竹はNHKプレミアムのBS時代劇の枠で、浅田次郎原作の参勤交代モノ『一路』(2015)を制作した。
主役の永山絢斗が薬物違反で逮捕されたため配信で今すぐに観る機会がないが、もし観られるようになったら、覚えて欲しい作品名である。


日本は未だにバブル崩壊から根本的に経済が回復したとは言えない状況である。
『武士の家計簿』の磯田道史以外にも、江戸時代のお金事情に注目した別の歴史学者の一般向け教養書を原作にあの時代劇の定番作品が復活を遂げたのだ…。

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