西洋絵画が10倍楽しくなる「イラストで読む美術シリーズ」
長らく品切れになっていた「イラストで読む美術シリーズ」の『イラストで読む 奇想の画家たち』が新装版になって発売されたのでさっそく書店で購入してきました。
杉全美帆子著『イラストで読む 奇想の画家たち』河出書房新社
「奇想の画家」といっても、伊藤若冲や曽我蕭白、長沢芦雪をはじめとした江戸時代の絵師ではありません。
今までもこの「イラストで読む美術シリーズ」で、ギリシャ神話や聖書の物語をマンガやイラストでわかりやすく紹介して、西洋絵画を見るポイントを解説してきた杉全美帆子さんの著書なので、登場するのは西洋の画家たちです。
さて、どんな画家が登場するのかな、とわくわくしながらページをめくると、出てきました!
奇想の画家7人のメンバーは、不思議な人物や動物たちが画面いっぱいに描かれた祭壇画《快楽の園》を描いたボス、難解な『ヨハネ黙示録』の木版画が出世作となったデューラー、殺人事件で逃亡生活を送りながらも名画を残したカラヴァッジョ、さらにはゴヤ、ブレイク、ルドン、ルソーと、当然のことながら個性的な画家ばかり。
「奇想?何ソレ?ステキってこと?」とおっしゃってる方もいらっしゃいます。
「第1章 西洋絵画に見る「奇想絵画の系譜」」では、ゴシック、初期ルネサンスから20世紀の新印象派までの主な作品や時代ごとの特徴が紹介されています。
ページの上段にそれぞれの時代の代表絵画、下段に奇想絵画の図版が掲載されていて、綿々と続く「奇想の画家」の系譜やそれぞれの画家の時代背景がよくわかるので、とても便利な年表です。
「第2章 奇想の画家たち~作品と人生~」では、7人の画家がそれぞれ12~18ページずつ紹介されていて、最初の見開きには画家の年表や本人のイラスト入りのプロフィールが、次のページからは画家の「ここがすごい!」ところや作品にまつわるエピソードなどが紹介されています。
「奇想の画家」の中でも筆者が特に気になるのは、作品を見るためにミュンヘンやニュルンベルクにまで行ってきたくらい大ファンのデューラーです。
そこでデューラーの項を見てみることにしましょう。
デューラーがこだわったのは「自画像」でした。
画家は少し横から見た角度で自画像を描くのですが、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵する《自画像》は、まるでキリストのように正面を向いて描かれているのです。
この《自画像》は実際にその場で見たのですが、ちょうど《ヨハネ黙示録》の木版画15枚(のちに制作された表紙を入れると16枚)が成功を収めたあとだけに、自己の芸術に対する自信がみなぎっているように思えました。
これでもかというくらい細かく描写されたデューラーの《ヨハネ黙示録》の木版画は国立西洋美術館や町田市立国際版画美術館が所蔵しているので、展示されるのをチェックして、『イラストで読む奇想の画家たち』を読んでデューラーの画業や人となりについて予習して見に行くと楽しさが何倍にも増すること間違いなしです。
デューラーの故郷・ニュルンベルクにある「デューラー・ハウス」は一般に公開されていて、1階がデューラー作品の複製画が展示されている展示室、2階と3階が住居、4が作業室になっています。
こちらは作業室の様子。
もしニュルンベルクに行く機会があったら、ぜひ「デューラー・ハウス」にもお立ち寄りください。
「イラストで読む美術シリーズ」は今まで7冊が刊行されていて、手元にあるのは『イラストで読む奇想の画家たち』のほかに、
『イラストで読む 新約聖書の物語と絵画』
『イラストで読む 旧約聖書の物語と絵画』
『イラストで読む ギリシャ神話の神々』
『イラストで読む 印象派の画家たち』
の4冊。
杉全美帆子著「イラストで読む美術シリーズ」河出書房新社
上記の河出書房新社のサイトによると、まだ購入していない
『イラストで読む ルネサンスの巨匠たち』
『イラストで読む レオナルド・ダ・ヴィンチ』
は在庫があるようなので、ぜひ購入して全部揃えたいです。
『イラストで読む 新約聖書の物語と絵画』の帯には「キリスト教の知識が身につけば、西洋絵画鑑賞が3倍楽しくなる!」と書いてありますが、「この絵は聖書のこの場面が描かれていて、登場人物はこの人とこの人。」というのがわかれば3倍どころか、もっともっと楽しめるようになってきました。
みなさまもぜひ「イラストで読む美術シリーズ」を手にミュージアムめぐりをしてみてはいかがでしょうか。
いまトピアート部のミュージアム関連本のコラムもぜひご覧ください!
いまトピアート部長Takさんの記事
美術館・博物館の知られざる裏側をのぞける漫画7選!
https://ima.goo.ne.jp/column/article/12271.html
いまトピアート部KINさんの記事
あの傑作本の第二弾!『ミュージアムグッズのチカラ2』
https://ima.goo.ne.jp/column/article/11283.html
杉全美帆子著『イラストで読む 奇想の画家たち』河出書房新社
「奇想の画家」といっても、伊藤若冲や曽我蕭白、長沢芦雪をはじめとした江戸時代の絵師ではありません。
今までもこの「イラストで読む美術シリーズ」で、ギリシャ神話や聖書の物語をマンガやイラストでわかりやすく紹介して、西洋絵画を見るポイントを解説してきた杉全美帆子さんの著書なので、登場するのは西洋の画家たちです。
さて、どんな画家が登場するのかな、とわくわくしながらページをめくると、出てきました!
奇想の画家7人のメンバーは、不思議な人物や動物たちが画面いっぱいに描かれた祭壇画《快楽の園》を描いたボス、難解な『ヨハネ黙示録』の木版画が出世作となったデューラー、殺人事件で逃亡生活を送りながらも名画を残したカラヴァッジョ、さらにはゴヤ、ブレイク、ルドン、ルソーと、当然のことながら個性的な画家ばかり。
「奇想?何ソレ?ステキってこと?」とおっしゃってる方もいらっしゃいます。
「第1章 西洋絵画に見る「奇想絵画の系譜」」では、ゴシック、初期ルネサンスから20世紀の新印象派までの主な作品や時代ごとの特徴が紹介されています。
ページの上段にそれぞれの時代の代表絵画、下段に奇想絵画の図版が掲載されていて、綿々と続く「奇想の画家」の系譜やそれぞれの画家の時代背景がよくわかるので、とても便利な年表です。
「第2章 奇想の画家たち~作品と人生~」では、7人の画家がそれぞれ12~18ページずつ紹介されていて、最初の見開きには画家の年表や本人のイラスト入りのプロフィールが、次のページからは画家の「ここがすごい!」ところや作品にまつわるエピソードなどが紹介されています。
「奇想の画家」の中でも筆者が特に気になるのは、作品を見るためにミュンヘンやニュルンベルクにまで行ってきたくらい大ファンのデューラーです。
そこでデューラーの項を見てみることにしましょう。
デューラーがこだわったのは「自画像」でした。
画家は少し横から見た角度で自画像を描くのですが、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵する《自画像》は、まるでキリストのように正面を向いて描かれているのです。
この《自画像》は実際にその場で見たのですが、ちょうど《ヨハネ黙示録》の木版画15枚(のちに制作された表紙を入れると16枚)が成功を収めたあとだけに、自己の芸術に対する自信がみなぎっているように思えました。
これでもかというくらい細かく描写されたデューラーの《ヨハネ黙示録》の木版画は国立西洋美術館や町田市立国際版画美術館が所蔵しているので、展示されるのをチェックして、『イラストで読む奇想の画家たち』を読んでデューラーの画業や人となりについて予習して見に行くと楽しさが何倍にも増すること間違いなしです。
デューラーの故郷・ニュルンベルクにある「デューラー・ハウス」は一般に公開されていて、1階がデューラー作品の複製画が展示されている展示室、2階と3階が住居、4が作業室になっています。
こちらは作業室の様子。
もしニュルンベルクに行く機会があったら、ぜひ「デューラー・ハウス」にもお立ち寄りください。
「イラストで読む美術シリーズ」は今まで7冊が刊行されていて、手元にあるのは『イラストで読む奇想の画家たち』のほかに、
『イラストで読む 新約聖書の物語と絵画』
『イラストで読む 旧約聖書の物語と絵画』
『イラストで読む ギリシャ神話の神々』
『イラストで読む 印象派の画家たち』
の4冊。
杉全美帆子著「イラストで読む美術シリーズ」河出書房新社
上記の河出書房新社のサイトによると、まだ購入していない
『イラストで読む ルネサンスの巨匠たち』
『イラストで読む レオナルド・ダ・ヴィンチ』
は在庫があるようなので、ぜひ購入して全部揃えたいです。
『イラストで読む 新約聖書の物語と絵画』の帯には「キリスト教の知識が身につけば、西洋絵画鑑賞が3倍楽しくなる!」と書いてありますが、「この絵は聖書のこの場面が描かれていて、登場人物はこの人とこの人。」というのがわかれば3倍どころか、もっともっと楽しめるようになってきました。
みなさまもぜひ「イラストで読む美術シリーズ」を手にミュージアムめぐりをしてみてはいかがでしょうか。
いまトピアート部のミュージアム関連本のコラムもぜひご覧ください!
いまトピアート部長Takさんの記事
美術館・博物館の知られざる裏側をのぞける漫画7選!
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いまトピアート部KINさんの記事
あの傑作本の第二弾!『ミュージアムグッズのチカラ2』
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