注目のドラマ『サンクチュアリ』の主人公・猿桜(一ノ瀬ワタル)は、『SLAM DUNK』の桜木花道に原点がある?実際のモデルになったのは誰?

2023/5/26 17:00 龍女 龍女

昭和の終わりから平成になるとスポ根漫画は細分化された。
作者は、実際に描かれるスポーツを中学高校時代に経験している。
そんな漫画がヒットし始めた。
ストーリー漫画の創成期の昭和20年代後半からスポーツの経験者が書くことはあったようだが、大ヒットまでに至っていない。
昭和の終わりに、リアリティーの方が重視されて、ヒットする時代の流れに乗った。

井上雄彦が描いた桜木花道は初心者から上手くなっていく。
その過程を丁寧に描くことによって、マイナースポーツで見方が分からなかった読者をやるやらないにかかわらず夢中にさせるきっかけを作ったのだ。

つまり、『SLUM DUNK』は
解像度の高いリアル志向のスポ根漫画の代表作である。
更に解像度を高めるには、実在の選手のモデルをヴィジュアルイメージに持ってくるのが近道になる。
『SLUM DUNK』では、NBAの選手デニス・ロッドマン(1961年5月13日生れ)が主人公の見た目のモデルである。

『サンクチュアリ-聖域-』の主人公小瀬清の見た目のモデルは
恐らく千代大海(1976年4月29日生れ)ではないかと考える。
江口カン監督の故郷福岡のすぐ隣の大分のヤンキーだったからだ。
小瀬清は相撲界に入る前は柔道経験者だった設定も、千代大海に一致するからである。
ちなみに本格野球漫画の金字塔の水島新司(1939~2022)の『ドカベン』(週刊少年チャンピオン連載1972~1981)の主人公でキャッチャーの山田太郎の中学時代は、柔道をやっていた。
一方で、オーデョションで選ばれた元総合格闘家の俳優一ノ瀬 ワタル(1985年7月30日生れ)のティーン時代に合わせて、普段の服装はB-BOYファッションに変化している。
時代の変化に応じて不良のファッションも変わっているのは細部の領域なのでこの辺に留めておこう。

ただし、リアルでなかった時代のスポ根漫画を含めて、ジャンルの大成者の梶原一騎が空手と柔道の経験者であった。
それを考慮すると、格闘技がスポ根漫画で描かれる具体的なスポーツの王道と言えるかもしれない。


さて、この『サンクチュアリ-聖域-』は、これまで実写映像作品では真正面に取り上げて来なかった大相撲(プロの相撲)を八百長問題や大口のスポンサーであるタニマチを含めて社会構造的に描いた作品でもある。
その為に、日本相撲協会の協力を得てはいない。
本編中の協会名も日本大相撲協会と架空の団体名になっているので注意が必要である。
特に、クライマックスの本場所の取組が行われる土俵に向かう両国国技館の内部は、セットで組まれた本物に近い美術である。
しかし、筆者から観た細かい所を言おう。
実際の土俵の周りに比べて席の床の色が実際と異なっている。
色味が薄く、全体の寸法も実際より狭く作られているようだ。
相撲部屋の様子はかなりリアルで実際に行ったことはなくてもドキュメンタリー映像で観た様子とそっくりなので間違いないだろう。
全体の考え方の雰囲気は数年前までの相撲界の旧態依然とした世界観なので、現実とは微妙なズレがある。

だがそれを補う力士を演じる俳優の肉体改造は、リアルそのものだ。
出演者の中に本物の元力士を交えている。
(兄弟子の猿谷役は元・千代の眞の澤田賢澄、ライバルの静内役は元・飛翔富士廣樹の住洋樹)
稽古の仕方もそれに合わせて主人公が変化していく過程は台詞以上に映像の説得力が半端ないのである。
これは相撲指導に、力士から転向した元プロレスラーで現在は飲食業の
維新力浩司(1961年1月24日生れ)が入っているのが大きいようだ。
映像の方でも、スポーツに関わったことのある当事者が納得できる映像の方が、素人である視聴者も物語に入り込める時代になった。

遠くから観ても分かるの派手な見せ方よりも、登場人物の肉体に寄った地味だが精密な見せ方が視聴者を満足させる時代のど真ん中に入ってきた。
解像度の高い4Kのドラマの1つの方向性を見いだした。


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