これが三度目の正直?『鎌倉殿の13人』で北条義時(小栗旬)の三番目の妻「のえ」を演じる菊地凛子は時代劇の大役で過去2度失敗していた?

2022/9/8 22:00 龍女 龍女

日本映画の時代劇で『たそがれ清兵衛』(2002年)の大成功(日本アカデミー賞主要部門独占アカデミー賞外国語映画候補)以来、藤沢周平原作の映画化ブームが起こった。
2011年に公開された『小川の辺』は東山紀之主演で、菊地凛子は妹役で片岡愛之助の妻を演じた。
公式にはこれが初めての時代劇映画出演作に当たる。
時期的に藤沢周平の映画化ブームの終焉を迎えていたのが痛かった。
筆者もTVで観た記憶があるが、あまり面白かった印象がない。
藤沢周平作品あるある「上司の命令で親しい人と戦わなければならない」がそろそろ飽きられていたのではないか?

2013年のロボットと怪獣が戦うSF大作『パシフィック・リム』の森マコ役は大成功だった。
これは、『バベル』に出演したとき、監督アレハンドロ・イニャリトゥと同じメキシコ出身の監督ギレルモ・デル・トロと知り合った事がきっかけだ。
イニャリトゥはシリアス路線の監督だが、デル・トロは生粋のヲタクだ。
日本のアニメ・特撮文化の要素を上手く詰め込んだ『パシフィック・リム』の企画に参加した。
この役は典型的なロボットアニメのヒロインで、声優経験(『スカイ・クロラ』2008年)もある菊地凛子にはあっていた。


(『パシフィック・リム』の森マコ イラストby龍女)

この次に公開されたのが、ハリウッドで忠臣蔵の映画化企画である。
主演のキアヌ・リーブス以外はすべて日本人キャストの『47RONIN』である。
大石内蔵助役が真田広之、大石主税役が赤西仁、吉良上野介役が浅野忠信、浅野内匠頭が田中みん(氵に民)、菊地凛子が謎の妖女ミヅキである。
これは忠臣蔵を伝奇小説(日本製ファンタジー)の世界観で映画化を試みたモノである。
菊地凛子が演じたのは、いわばファンタジー小説に出てくる魔女や魔王にあたる役柄だ。
筆者がこの手のキャラクターで思い出すのは真田広之が主演した『里見八犬伝』(1983年)の玉梓(夏木マリ)である。
夏木マリは後に『千と千尋の神隠し』の湯婆婆を演じられたのも、この悪役が当たり役として日本アカデミー賞の優秀助演女優賞になり、業界に知れ渡ったからだ。


(映画『里見八犬伝』の玉梓。 イラストby龍女)

監督のカール・リンシュを始めとする製作陣は、おそらく忠臣蔵を南総里見八犬伝のように史実からファンタジーを生み出そうとしていた。
この映画は失敗が多すぎてツッコミどころ満載なのだが、菊地凛子に関してだけ言及すると、製作陣の配役ミスだ。
彼女は数々ヒロインを演じてきたが、妖艶なキャラはあっていない。
菊池凛子自身は高い声に魅力がある。
魔女役が似合う俳優は地声の低さに魅力がある人が多いからだ。

これまで菊地凛子が失敗してきた時代劇の役柄はすでに前例が数多く存在した為、それと比べると力不足は否めなかったのだと考えられる。
『鎌倉殿の13人』は1979年の大河ドラマ『草燃える』を下敷きにしているが、調べてみると伊賀の方は登場していなかったようだ。
ほぼ前例のない歴史上の人物なので、自由に演じた方が菊地凛子にはあっているような気がする。
まず初登場回の印象は彼女の個性にぴったりであった。


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