【ヴァーチャルで訪れる天子の宮殿】紫禁城の中はこんなにすごい!

2022/8/23 18:30 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

今年は日中国交正常化50周年にあたる節目の年。

東京・上野公園の東京国立博物館では、かつての中国皇帝の宮殿「紫禁城」をテーマにした展示や催し物が開催されているので、今回はその様子をご紹介したいと思います。

1 ミュージアムシアターで紫禁城のVR体験!


最初に向かったのは、東洋館(アジアギャラリー)地下1階のミュージアムシアター。



これまでもミュージアムシアターでは、安土城の中に入って狩野一門の豪華絢爛な障壁画を見たり、法隆寺の国宝・金堂の中に入って本尊の仏像や壁画を間近に見るなど、ヴァーチャルでなければ体験できない映像が上映されていますが、今回の『故宮VR 紫禁城・天子の宮殿 TNM&TOPPAN ミュージアムシアター編』は、時空を超えて紫禁城の魅力に迫るという超豪華な内容の作品です。


明王朝、清王朝あわせておよそ500年にわたり歴代皇帝の居城であった紫禁城は、今では「故宮博物院」として一部を除き一般公開されていますが、このVR作品では、清王朝最盛期の三人の皇帝、康熙帝(在位1661-1722)、雍正帝(在位1722-35)、乾隆帝(在位1735-95)の時代の紫禁城が再現されていて、そのうえ、観光で現地に行っても見ることができない宮殿内部の様子を見ることもできるのです。

(ミュージアムシアター内は撮影禁止です。上の2つの画像はどちらも、のちほど紹介する特別デジタル展「故宮の世界」で撮影したものです。)

上映期間は2022年7月26日(火)から10月16日(日)まで。
観覧料金は、高校生以上(大学生以上は博物館への入館チケットが別途必要)が600円ですが、特別デジタル展「故宮の世界」セット券1,800円も発売中。
特別デジタル展「故宮の世界」のチケットが一般1,500円なので、セット券は300円お得です。

上演日、開演時間等の詳細はTNM&TOPPAN ミュージアムシアターのウェブサイトでご確認ください⇒https://www.toppan-vr.jp/mt/

コロナ前に行った故宮博物院(筆者撮影)。



2 東洋館4階 中国書画の世界


続いて同じく東洋館の4階8室、中国書画の部屋へ。



中国歴代の絵画や書跡の名品が展示されているこの8室には、いつも中国の博物館にいるような気分になれる空間なので、展示替えごとに来ています。

現在開催されているのは、「中国の絵画・書跡・文人の書斎 清朝宮廷の書画」(2022年6月28日(火)~9月19日(月・祝))。

今回は清朝の多彩な宮廷書画の名品がテーマなので、「四王呉惲」と並び称された清初の六大家の名前も見かけました。

こちらは「四王呉惲」の一人、王鑑の款が入った「倣巨然山水図巻」。
中国・江南地方の自然を描いた五代、宋初の画僧、巨然に倣って描かれた図巻で、こんな素晴らしい景色を前にしたらいつまでも眺めていたくなってしまいます。


王鑑款「倣巨然山水図巻」(東京国立博物館蔵)

同じく「四王呉惲」の一人、王翬款の「倣趙孟頫江山無尽図巻」は、元代の書画のスーパースター、趙孟頫の青緑山水に倣った作品。

王翬款「倣趙孟頫江山無尽図巻」(部分)(東京国立博物館蔵)

人物や動物が、小さくても丁寧に描かれているので、こちらも時間を忘れて人の表情やしぐさなど細かいところまでいつまでも見ていたくなる作品です。


東洋館では他にも、1階に仏像、3階に青銅器や陶磁器など中国の名品が展示されているので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。


3 平成館特別展示室 特別デジタル展「故宮の世界」


最後に向かったのは、平成館。
現在特別展示室で開催されいているのは、「日中国交正常化50周年記念 特別デジタル展 故宮の世界」

古来中国では、北極星は宇宙を統治する天帝、その周囲にある北斗七星などの星々は天帝が住む場所「紫微垣(紫宮)」と信じられ、皇帝の住む宮殿は紫微垣になぞられて紫禁城と呼ばれました。

会場に入ってすぐの「①イントロダクション 天子の宮殿 紫禁城」では、その名の由来にちなんで、星空から紫禁城が現れる神秘的なインスタレーションが展開されています。


そして、空の星と紫禁城をイメージで結び付けながら実際の紫禁城の大きさ、荘厳さが実感できる「②バーチャル紫禁城-Night & Day-」。


続いては、186万件を超える故宮博物院の膨大なコレクションの中から、工芸の逸品を選び、3DCG(三次元コンピューターグラフィックス)で紹介する「②デジタル多宝閣-宮廷工芸コレクション」。

はじめに、皇帝コレクションの工芸品を飾るために特別に仕立てられた豪華な調度品「多宝閣」に収められた工芸品がずらりと並んだ画面が見えてきます。


次に6つの棚から選ばれた一品が拡大されてぐるりと一周するので、まるで皇帝が玉座に座りながら工芸品を眺めているような気分が体験できます。


そして、今回特に楽しみにしていたのが、いつかは見たいと思っていた中国絵画の名品中の名品「千里江山図巻」が大画面で見られる「④「千里江山図巻」シアター-天才画家、王希孟が描いた世界-」。

「千里江山図巻」は、北宋時代末期12世紀初頭の画家、王希孟が残した唯一の作品で、長さはおよそ12m、弱冠18歳で描いたとされる青緑山水の名品です。

はじめに拡大された画面が左から右にゆっくりと流れていきます。
これだけ大きいと、雄大な景色がよりいっそう雄大に見えてきます。


続いて、景色が立体的に見える3Dアニメーション。
まるでドローンで上から眺めているような気分。海の波もゆらゆらと動いています。


そして最後は、いくつかの見どころの拡大画像。
楼閣も人物も細部まで丁寧に描かれているので、楼閣にたたずむ人たちの会話の声が聞こえてきそう。


「千里江山図巻」シアターを見ていたら、以前、上海の中華芸術宮で見た「動く清明上河図」を思い出しました。

実物を見るのが一番なのでしょうが、立体的に見えるようにしたり、動かしてみたり、拡大してみたりなど、バーチャルだからこそできることもありますし、あまり見る機会がない名品も、こうやって目の前にすることができるので、VR再現やデジタルの高精細複製画の存在はとてもありがたいことだと思います。

そして最後には実物が出てきます。
こちらは、東京国立博物館が所蔵・管理する中国書画工芸の名品が展示されている「清朝宮廷の書画と工芸」。

「清朝宮廷の書画と工芸」展示風景

日中国交正常化50周年記念 特別デジタル展「故宮の世界」
会 期  2022年7月26日(火)~9月19日(月・祝)
会 場  東京国立博物館 平成館特別展示室第1室・第2室
開館時間 9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)
休館日  月曜日(ただし8月15日(月)、9月19日(月・祝)は開館)
観覧料金 一般 1,500円 大学生 900円
事前予約は不要です。混雑時には入場をお待ちいただく可能性があります。
国立博物館メンバーズパスをお持ちの方など総合文化展が無料になる方は、総合文化展料金(一般1,000円、大学生500円)との差額料金で観覧できます。
詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。
展覧会公式サイト⇒https://kokyu2022.jp/



東京国立博物館では、日本美術をデジタルで楽しめる「日本美術のとびら」も開催されているのでぜひこちらにもお立ち寄りください。

展示の様子は以前のコラムで紹介しています。

遊べる!学べる!親しめる!体験展示「日本美術のとびら」に行ってみた。
https://ima.goo.ne.jp/column/article/10070.html