遊べる!学べる!親しめる!体験展示「日本美術のとびら」に行ってみた。

2021/7/27 10:02 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

毎回多くの人が訪れる特別展、毎週のように展示替えがある総合文化展(常設展)。
いつ来ても楽しめる東京国立博物館(トーハク)に、遊びながら日本美術に親しむ体験展示室、「日本美術のとびら」が常設展示で新たに誕生しました。

展示室は本館エントランスを入ってすぐ、大階段右側の特別3室。
トーハクに来て、最初にふらりと入れる場所にあります。



展示室内は3つのコーナーで構成されています。

コーナー1:みる<日本文化紹介映像>



「とびら」の奥には、四季を感じさせるトーハク・コレクションの名品が映し出される映像が流れています(日本文化紹介映像「A GLIDE ON THE GREAT WAVE」約8分)。
日本の四季折々の景色はじめ、現在の東京の夜景や、宇宙から見た地球まで出てくるダイナミックな映像が楽しめます。

コーナー2:たのしむ<日本美術のデジタル年表>

展示室内に入ると、縄文時代、弥生・古墳時代に始まって、安土桃山時代、江戸時代と続く巨大スクリーンの年表が見えてきました。




さてここでどのような体験ができるのでしょうか。

はじめに、切手の図柄にもなって、日本史の教科書には必ずと言っていいほど出てくる有名な作品、雪舟(雪舟等楊)の国宝《秋冬山水図》(室町時代・15世紀末~16世紀初)から試してみることにしましょう。

まずは、足元にある「わくわくポイント」の《秋冬山水図》(下の写真右下)の位置に立ちます。



すると目の前のスクリーンには《秋冬山水図》の秋冬二幅のうち冬景がスーッと出てきます。



そして右手を上げると、画面に畳敷きの和室が出てきて、《秋冬山水図》は、違い棚もある格式の高い床の間の中にヒューッと納まって、このとおり。


もとは京都・曼殊院に伝来したこの作品。きっと当時はこんな落ち着いた雰囲気の中で国宝《秋冬山水図》を見ることができたのでしょう。

続いて桃山時代の巨匠、狩野永徳の国宝《檜図屛風》(安土桃山時代・天正18(1590)年)を見てみましょう。


今は屏風仕立てですが、もとは桂離宮を造営した八条宮家の襖絵だったこの作品。 右手を上げてみると、当時のように和室にすっぽりと納まりました。


どちらの作品も、トーハク本館の国宝室(本館第2室)で公開されることがあるので、ぜひトーハク公式サイトをチェックして、本物もご覧になっていただきたいです。
ここで見た画像を思い出しながら作品を見ると、より引き立って見えるかもしれません。

他にはどんな楽しみ方があるのでしょうか。

こちらは弥生時代の《袈裟襷文銅鐸》。
手を前にかざすと、このとおり。
人間や動物たちが生き生きと描かれた文様が拡大されてくっきりと見えてきます。


トーハクでは、いくつもの《袈裟襷文銅鐸》を所蔵しているので、制作時期による違いを比較することができます。

《洛中洛外図屛風(舟木本)》(江戸時代・17世紀)も、白い枠に手をかざしてみると場面が拡大されて見えてきます。



この作品に描かれた人物の数は何と約2500人!
この場面のように橋の上で踊っている人たちが見えてきたりして、江戸時代の京都のにぎわいが伝わってきます。

こちらは、時宗の開祖・一遍上人の伝記を描く国宝《一遍聖絵》巻第七 法眼円伊筆(鎌倉時代・正安元(1299)年)。
絵巻物は両手を左右に回すと、巻物がくるくる先に進んだり、戻ったりして、一遍上人が諸国をめぐって念仏の修業や布教を行う遊行の場面が展開していきます。




コーナー3:かんじる<高精細複製品>

複製品といっても複製技術が格段に進歩した今では、けっしてあなどることができない出来映えなのです。
それにガラスケースなしに近くかららじっくり見ることができるのも高精細複製品ならでは。
ただいま展示されているのは、重要文化財《風神雷神図屛風》尾形光琳筆(江戸時代・18世紀)なのですが、高精細複製品ならではの仕立てになっているのです。



《風神雷神図屛風》は、俵屋宗達の国宝(京都・建仁寺)のものがよく知られていますが、こちらは宗達の影響を大きく受けた尾形光琳が描いたもの。
その光琳に私淑した酒井抱一が光琳の《風神雷神図屛風》の裏側に描いたのが、重要文化財《夏秋草図屛風》(江戸時代・19世紀)。

現在では保存のため別々の屛風に仕立てられていますが、複製品ではかつての姿のとおり、裏面には《夏秋草図屛風》が再現されているのです。



複製品は展示替えがあります。
《風神雷神図屛風》と《夏秋草図屛風》は2021年8月29日までの展示予定で、その後の展示予定は次のとおりです。

2021年8月31日~11月28日 国宝《観楓図屛風》(高精細複製品)
2021年11月30日~2022年2月27日 国宝《松林図屛風》(高精細複製品)
2022年3月1日~5月29日 国宝《花下遊楽図屛風》(高精細複製品:復元)

《花下遊楽図屛風》に「復元」とあるのは、関東大震災で焼失した右隻中央の2面が、当時残されていたモノクロ写真をもとに彩色して復元されているからなのです。これも高精細複製品だからこそなせる技といえるでしょう。


掛け軸は、国宝《孔雀明王像》(平安時代・12世紀)。

本物のこの作品は截金文様がとても見事なのですが、こちらの複製品も正面から見ても、横から見ても、本物と見間違えるくらい見事な輝きを放っています。


本物の作品では、作品保護のため照明を落としていますが、高精細複製品では明るい照明のもとで見ることができるのです。

《孔雀明王像》は2020年3月末まで展示予定です。

「日本美術のとびら」で紹介されている作品はどれもトーハク・コレクション。
展示時期はトーハク公式サイトでチェックしていただいて、「日本美術のとびら」の展示も、本物の作品も、ぜひご覧になっていただきたいです。

これからは、トーハクに来られたら、まずは「日本美術のとびら」へどうぞ!

開催概要


会 場 東京国立博物館 本館特別3室(東京都台東区上野公園13-9)
開館時間 9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
     ※特別展の開館時間は、別途ご確認ください。
休館日  月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日
     に休館)、2021年12月14日(火)
     年末年始(2021年12月26日(日)~2022年1月1日(土・祝))
     2022年1月4日(火)、その他臨時休館あり。
観覧料 (総合文化展観覧料) 一般 1,000円、大学生 500円、高校生以下無料
※入館にはオンラインによる事前予約(日時指定券)が必要です。事前予約等については東京国立博物館公式サイトでご確認ください⇒東京国立博物館
 
文化財活用センターの公式サイトはこちらです⇒文化財活用センター