【特別展「琉球」】今あざやかによみがえる王国の栄華

2022/5/17 19:50 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

今年(2022年)は沖縄が復帰して50年。
その節目の年を記念して東京・上野公園の東京国立博物館では、沖縄復帰50年記念 特別展 「琉球」が開催されています。



今回の特別展は、アジアとの交流で栄えた琉球王国の宝物はじめ、先史時代の遺産から、失われた文化財の復興と未来への継承まで、琉球・沖縄の歴史と文化を感じとることができる過去最大級の展覧会。

沖縄には毎年のように行って、世界遺産に登録されている首里城跡や今帰仁城跡などを訪れたり、戦跡巡りをした時期があったので、今回の展覧会はとても楽しみにしていました。

見どころいっぱいの展覧会ですが、今回は特にアジアとの交流と、戦災で失われた文化財の復興に着目してご紹介したいと思います。


アジアとの交流で栄えた琉球王国の姿が今よみがえる


アジアとの交流で栄えた琉球王国の姿は、当時の世界地図からうかがうことができます。
15~16世紀に作られた地図の中には、琉球に関する情報量の方が多かったので、本州より沖縄本島の方が大きく描かれているものもあったくらいです。

展示風景

この頃の地図は、今の基準ではとても正確なものとは言えませんが、当時の人たちの世界観が反映されているので、それを読み解く楽しさがあります。

天然の良港・那覇に出入りする船、船、船、人であふれる港の賑わい、丘の上には威風堂々たる姿の首里城。
屏風からは那覇の活気がそのまま伝わってきそうです。

展示風景

モノやヒトの交流が盛んだったことの証しとなる品々も出土されています。
首里城から出土された中国・景徳鎮窯の陶磁器の中には、日本の他の地域では見ることができない陶磁器も出土されているのです。

展示風景

鎖国状態にあった江戸時代の絵師たちは、清と江戸幕府との交易はあったにしても、簡単に中国に行って中国絵画の勉強をするというわけにはいきませんでした。
ところが、琉球の絵師たちには中国留学のチャンスがあったのです。

その一人が、福州(福建省)で花鳥画を勉強して、帰国後、琉球画壇を代表する絵師として活躍した山口宗季(呉師虔 1672-1743)。
彼は、琉球王国首里王府が所管した貝摺奉行所の絵師で、琉球画壇の将来を託されて奉行所から命じられ中国に渡ったのです(1703-07)。


どちらも山口宗季(呉師虔)筆 《花卉図》個人蔵(右)、《花鳥図》奈良・大和文華館蔵(左) 展示期間:5月3日~5月29日

作者名が伏せられていたら中国絵画にしか見えないような秀作も。
東京国立博物館アジアギャラリー(東洋館)4階の中国絵画のコーナーに展示されていたとしても全く違和感のない作品です。

どちらも泉川寛英(慎思九)筆 《釣人之図》一般財団法人 沖縄美ら島財団蔵、《漁楽図》個人蔵 展示期間:5月3日~5月29日

もともと中国絵画が好きでしたが、今回の琉球絵画の展示を見てすっかりファンになりました。
後期には琉球なのに雪景山水図が展示されるというので、楽しみにしています。

華やかな雰囲気を演出する沖縄の伝統染め物の衣裳。

展示風景

戦災で失われた琉球の至宝が今よみがえる!


首や手が欠けている仏像。
普賢菩薩が乗っていた象も、文殊菩薩が乗っていた獅子も顔の部分が欠けています。

今回の展示の中で特に印象に残ったのは、旧円覚寺の仏像彫刻でした。

展示風景

琉球王国、第二尚氏の祖尚円王の子、尚真王が父王の菩提寺として、1494(弘治7)年、首里に建立したのが円覚寺。
鎌倉の円覚寺にならい禅宗七堂伽藍形式を備えた寺で、1933(昭和8)年には円覚寺伽藍として国宝に指定されたものですが、太平洋戦争末期の沖縄戦でほとんど破壊されてしまいました。

旧円覚寺跡には以前行ったことがあるのですが、今は廃墟の状態で保存されています。
そんな現地の様子を見ているだけに、「木造彫刻なのに戦火に耐えて、よく残ってくれました。」というのが第一印象でした。
そして、戦後の混乱期にもかかわらず、このような「残欠」を集めた沖縄の人たちの気持ちにも思いをはせざるをえません。


旧円覚寺跡(筆者撮影) 奥は1968(昭和43)年に復元された総門。

2006(平成18)年、琉球王国の尚家に伝来した宝物のうち、工芸品85点、文書1166点が国宝に指定されましたが、それらは戦前に東京に移されていたため戦禍を免れたものでした。

もちろん東京も大きな被害を受けたので、東京だから安全というわけではありませんでしたが、幸運にも王国の栄華を物語る至宝が今日に伝えられたのです。

右 国宝《色絵紅葉文風炉[琉球国王尚家関係資料]》、左 国宝《緑釉四方燭台[琉球国王尚家関係資料]》 どちらも沖縄・那覇市歴史博物館蔵 全期間展示(5月3日~6月26日)

沖縄戦で徹底的に破壊された首里城正殿前にあった「大龍柱」は頭部だけが残りました。
胴体の中ほどから下は欠失しています。

手前が大龍柱(旧首里城正殿前) 沖縄県立博物館・美術館蔵 全期間展示(5月3日~6月26日)


沖縄県では、平成27年度から琉球王国文化遺産集積・再興事業として、失われた文化財の復元に取り組んできました。

かつて円覚寺を護った大迫力の仁王像も復元されたものです。

模造復元 旧円覚寺仁王像(阿吽形) 沖縄県立博物館・美術館蔵 全期間展示(5月3日~6月26日)

復元によって見事な輝きがよみがえった琉球王朝の至宝の数々。

展示風景

2019(令和元)年10月31日未明に発生した火災によって、復原された首里城正殿を含む9棟の建物が全焼してしまったのはみなさまご存じのとおり。

公式図録の表紙も、焼失前の首里城。
ここからも首里城復興に向けた思いがひしひしと伝わってきます。


再興した首里城の在りし日の姿を紹介したコラムはこちらです。

もう一度見たい!南の島のあの宮殿 https://ima.goo.ne.jp/column/article/8258.html


沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」

会 期  2022年5月3日(火・祝)~6月26日(日)
会 場  東京国立博物館 平成館
開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は16時30分まで)
※展覧会の詳細は展覧会公式サイトをご覧ください⇒沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
   
王族の衣裳を着た沖縄の人たち(パネルです)といっしょに、首里城再興を願ってぜひ記念撮影を!



巡回展
 九州会場
  会期:2022年7月16日(土)~9月4日(日)
  会場:九州国立博物館(太宰府天満宮横)

関連展覧会
 令和4年度博物館企画展
 復帰50年展「琉球-美とその背景-」
  会期:2022年10月14日(金)~12月4日(日)
  会場:沖縄県立博物館・美術館


いまトピアート部長Takさんの「琉球展」紹介記事はこちらです。
青い日記帳「琉球展では何と言っても、沖縄の伝統染め物である紅型に注目したい」