ぜひ見て欲しい。この秋に弟子と共演!時代を超えた琳派の名作。
俵屋宗達「風神雷神図屏風」(建仁寺蔵)
Wikipedia「俵屋宗達」より
まず、こちらの絵を見てください。有名な絵なのでどこかで見たことがあるのではないでしょうか?こちらは江戸時代初期、琳派の祖とも呼ばれている絵師 俵屋宗達が描いた「風神雷神図屏風」、国宝に指定されている絵です。
尾形光琳「風神雷神図屏風」(東京国立博物館蔵)
Wikipedia「風神雷神図」より
では、こちらの絵はご存知ですか?え、同じ絵じゃないかって?よーく見ると少し違っているのがわかります。サイゼリヤの間違い探しよりは違いがわかるはず。
こちらは江戸中期の琳派 代表画家である尾形光琳の「風神雷神図屏風」。先の俵屋宗達「風神雷神図屏風」のアレンジ模写作品でおよそ100年後に描かれたものです。
尾形光琳「燕子花図」(根津美術館蔵)
Wikipedia「尾形光琳」より
そもそも琳派とは?江戸時代の芸術の流派の一つなのですが、師弟関係で継ぐのではなく、私淑という形で勝手に尊敬して技法などを継いで行ったもの。
宗達の絵を見て100年後に光琳が勝手にリスペクト、更にその100年後に光琳の意志を江戸で酒井抱一が受け取る、と言う流れ。そして抱一の弟子である鈴木其一(ここは師弟制度で継がれています)、更には近代現代の画家やクリエイターへと継承されていくのです。
この流れに関しては以前こちらで書いていますのでこちらも参照ください。
とにかくカッコいい。デザイン好きは必見、それが琳派!
https://ima.goo.ne.jp/column/article/5824.html
さて、ここからが本題。こちらの絵「夏秋草図屏風」を見てください。
酒井抱一「夏秋草図屏風」(東京国立博物館蔵)
Wikipedia「夏秋草図屏風」より
これは江戸時代後期の琳派の絵師、酒井抱一が描いた名作の一つ。抱一は俵屋宗達や尾形光琳ほどには有名ではないかもしれませんが、アート好きにはファンが多い画家であり、絵なのです。実は、この絵は尾形光琳「風神雷神図屏風」の裏に描かれていました(現在は別々の屏風に仕立てられています)。光琳をリスペクトしていた抱一、この依頼が来たときにどれだけ心が騒いだことでしょう。
光琳の金地の絵の裏に描かれた抱一の銀地の絵。銀色は夜の月明かりを表しています。雷神の裏では雨に打たれる夏草、風神の裏には風にあおられる秋草と構図までもがリスペクトされた名画です。金の光琳に対して銀の抱一と言われたのはこの絵のイメージが強いかもしれません。
酒井抱一「風神雷神図屏風」(出光美術館蔵)
Wikipedia「風神雷神図」より
なお、酒井抱一も光琳の風神雷神を模写しています。比較的デザイン要素が強い宗達や光琳に比べて、抱一の絵は素朴な日本画の要素も持ち合わせていることが多いですが、しっかり琳派しています。光琳と同じモチーフを描きながらも、うまくバランスをとり、独自の世界観を作り上げているのですね。
さて、先ほど名前が少し出ましたが抱一の弟子である鈴木其一の展覧会が根津美術館で開催されています。
重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風
根津美術館 2021/11/3-12/19
https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
鈴木其一の名作「夏秋渓流図屏風」を取り上げたこの展覧会、久々の鈴木其一に注目した展覧会ということで日本画ファンに注目されています。
鈴木其一「夏秋渓流図屏風」(根津美術館蔵)
Wikipedia「鈴木其一」より
この鈴木其一「夏秋渓流図屏風」の派手な色使い。金地にくっきりとした色、琳派の装飾性を自分のものにしています。
個人的なオススメとして、この絵を見る時、屏風の前、中央あたりに立ち、少し腰を落として目線を下げて見てください。まるで3D映像の様に両側から川の水が自分に向かって流れ込んでくる様に見えてきます。この作品が描かれた当時、畳に座って屏風を見る事が多かったはずです。その目線の高さで見えてくる迫力です。
鈴木其一「風神雷神図襖」(東京富士美術館蔵)
Wikipedia「風神雷神図」より
今回の展覧会には出ていませんが鈴木其一も風神雷神図を描いています。先輩の絵を踏襲しならもだいぶイメージを変えて独自の解釈を入れていってます。
そして、この展覧会の後半期間になんと、先にあげた酒井抱一「夏秋草図屏風」が出ると言うのです。鈴木其一の展覧会に、その師匠である酒井抱一の作品を紹介するという形になると思います。「夏秋草図屏風」の展示期間は12/7-12/19と短いですが、師弟の名作屏風を同じ展覧会で見る事ができるこの2週間弱、これは見逃せません!
東京国立博物館では現在、乃木坂48と東博所蔵の名品とのコラボ「春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46」が開催中。そしてこれには「夏秋草図屏風」も出ています。実際に展示されているのは複製ですが、この名作に乃木坂46の久保史緒里、山下美月が対峙しているとのこと。
先輩方の絵を学び、尊敬し、真似、そして自分の解釈を入れ独自の世界を作っていく。そして今に至るまで継承されている琳派の世界を是非体験してみてください。