5つの数字で解き明かすゴッホの知られざる真実

2021/9/26 11:45 Tak(タケ) Tak(タケ)

毎年否毎月のようにフィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent Van Gogh、1853年3月30日 - 1890年7月29日)に関するニュースが世界中を飛び交っています。

つい先日も、100年以上にわたり個人コレクターが所蔵していたゴッホの未確認だった習作画が突如姿を現したニュースがオランダから発信されました。



美術史上最も多くの人から愛され関心の目が向けられている画家と言っても決して過言ではないでしょう。

さて、そんな大人気のゴッホゆえ、展覧会で目にしたり、画集や映画を観たりと彼についての知識は皆さんかなりお持ちのことと思います。

でも、知っていると思い込んでしまうと思考は停止し、鑑賞の幅も広がりません。



そんなわけで今日は知っていそうで知らないゴッホにまつわる真実を5つの数字から解き明かしていきたいと思います。

これを読めば、次にゴッホ作品を観る時、これまでとは違う感じ方、捉え方が出来るはずです。そしてもっともっとゴッホについて興味関心が沸くことでしょう。

10年

ゴッホが残した作品数は油彩画だけでも約860点にものぼります。これに素描や版画なども併せるとその数なんと2100枚という膨大な量の作品を描きました。

37歳の若さでこの世を去ったゴッホ、短い間によくぞまぁこれだけ多くの絵を描いたものと驚きますが、実は画家を目指し絵筆を握ったのは27歳になってから。

つまり、たった10年で2100もの作品を描き上げたことになります。ざっくり考えると1年間に210枚!驚くのハイペースであの心震わせる名画たちを生み出していったのです。



40点

短期間のうちにまさに何かに取りつかれたかのように一気呵成に描いたゴッホ。その中でもとりわけ数が多いのが自画像です。現在確認されているだけで約40点(35~42点と諸説あり)もの自画像を描きました。

パリに移住してきて間もない1886年から、耳を切り落としてしまったアルル時代、そしてサン=レミで1889年に描いた自画像まで。残された多くの自画像から画風の変遷を追っていくことも可能です。

本当はもっと別の人を描きたかったゴッホですが、人付き合いが苦手であり、モデルを雇うお金もなかったので自然と自分自身を描く機会が増えたのです。決してナルシストではありません。

いつの日か、自画像を中心とした「ゴッホ展」を観てみたいですね。



900通

僅か10年間で2100作品も描いたゴッホですが、いつどこで描いたのかが克明に分かっている作品が多くあります。それは彼が手紙魔だったことに起因します。

現存するゴッホが家族や画家仲間に宛てた手紙は約900通。紛失したり失われたものも含めると1700通もの手紙を書いたのです。

収入のないゴッホへ仕送りを続けた弟テオとの手紙でのやり取りは生涯で700通弱。しかもいずれも長文です。現在ならさしずめメール魔、それかSNSで気持ちを吐露しまくったことでしょう。

一般的に画家の生涯は分からないことが多いのですが、生前世間的に全く認められなかった「自称・画家」であったゴッホの足跡を現在克明に我々が知れるのはゴッホが残した膨大な量の手紙があるからに他なりません。



5回

ゴッホは生涯独身のままでしたが、決して女性に興味がなかったわけではありません。それどころかすぐに相手の女性のことを好きになってしまう惚れっぽい性分だったようです。

相手に気持ちを打ち明けるも1度も恋が成就することはありませんでした。記録に残っているだけですが、大きな失恋を5回もしています。

定職にもつかず収入もほぼゼロ、下手をすればDVもしかねない気性の荒いゴッホを受け入れてくれる女性はいませんでした。

しかも5回とも今ならネット記事で話題に取り上げられる破天荒で時にストーカーまがいの恋愛とは呼べるものではなかったのです。翻って21世紀、多くの女性ファンを抱えるゴッホ。天国できっとご満悦なことでしょう。



16都市

葛飾北斎が93回も引っ越しをした話は有名ですが、それも90歳という長生きをしたことや江戸という街中でのことです。それに対しゴッホは37歳の生涯のうち実に16都市を渡り歩き、26回もの転居をしました。

パリやアルル、ニューネン、そしてサン=レミ、終焉の地であるオーヴェル=シェル=オワーズなど彼の画家人生の中で重要な都市は展覧会や画集でもよく目にするはずです。

ただし、アルルを除いて基本的にどの引っ越しも前向きな理由からのものではなく、ゴッホが起こした人間関係のトラブルなどその土地にいられなく仕方なく別の街へ越すといったパターンが多くみられます。

ゴッホの人生を克明に再現した、映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」では、小さな田舎町アルルで、変人奇人扱いを受け居場所がなくなり、精神的に追い詰められていくシーンがありました。



【ゴッホ殺人事件】ゴッホの死因は自殺ではなかった!

5つの数字からゴッホに関する掘り下げ知識を簡単に紹介しました。これだけ知っているだけでも「ゴッホ展」やゴッホ作品を観る眼が変わるはずです。

現在、東京都美術館では「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が開催中です。ファン・ゴッホの絵画・素描・版画、計48点が故郷オランダから来日しています。

今回このコラムを書くにあたり『ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 完全ガイドブック』他を参考としました。展覧会公式ガイドブックの体裁を取っていますが、ゴッホに関する様々な検証もなされており、ファン必携の一冊です。


ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 完全ガイドブック