すごい・怖い・驚愕の生存戦略! 【植物展】が熱すぎる!!

2021/8/5 20:25 虹

捕食、毒、侵略……! 本当は怖い(?)植物たち

突然現れた巨大なハエトリソウの模型。見るからに凶悪な姿ですね。



「スーパーマリオブラザーズ」の「パックンフラワー」のような姿をしたハエトリソウは、普段は開いた状態ですが、2回刺激を与えると葉が閉じてやってきた虫を捕獲します。
本当は怖い植物たちを紹介するこの章では、まずは食虫植物を紹介。
「ポケットモンスター」の「ウツボット」のモデルでもあるウツボカズラなど、実物の食虫植物が展示されています。

▲ウツボカズラやサラセニア 生きています!


続いて二面性を持つ植物、凶暴な果実、外来種など生態系に影響を及ぼす植物が登場します。
いずれもこの世界で生きるために努力の末進化した姿なのですが……もう見た目からして怖いよ!

▲ライオンゴロシの果実 分布:南アフリカ 国立科学博物館 蔵/恐ろしい名前は、この実を口にしたライオンが、痛さのあまり食事を摂れずに餓死したことから。右の小さな方が実物で、大きなものは拡大模型です。このほかにもホラーレベルの不気味な実がズラリ……。

ちなみに花は結構かわいいという、まさに二面性のある植物です。

▲ライオンゴロシの花


お次はゾッとするようなトゲが生えている、ミズトウヅルの茎。鋭いトゲを使って熱帯の森を縦横無尽に這い回るという不気味な性質があるのですが、実は身近にあるこの椅子の原材料なのです。

▲ミズトウヅルの茎 産地:沖縄県石垣島 国立科学博物館 蔵

▲籐(ラタン)製の椅子

ミズトウヅルはラタンの仲間で、ラタンはヤシ科トウ亜科に分類される植物の総称です。鋭い棘を持ち、「熱帯で最も出会いたくない植物のひとつ」と言われていますが、トゲのある葉鞘を剥がせば工芸品の材料になる繊維が現れます。会場では実際に椅子に腰かけることもできますよ!

このように一見恐ろしい見た目であっても、付き合い方次第で私たちの暮らしを支えてくれる頼れる存在だったりするんですね。
そしてその逆も然り。可憐な見た目をしていても、獰猛な性質を持った植物、環境を脅かす植物もいるということなのです。

▲私たちにとっては身近な「クズ(葛)」も、海外では外来種として環境を脅かしているそう……。

こういった植物の二面性を知り、自分の生活との関連性を知ることで、一層植物に対する知識が深まると言えるでしょう。しかし種の模型のインパクトたるや凄まじかったな……。


体験して覚える くさいにおいも嗅ぐ!

このほか、ゲームを通じて光合成を学んだり、歌を歌って花の遺伝子の組み合わせを覚えられるなど、体験することで植物の仕組みを理解するコーナーも随所に設けられています。

▲ 会場内にある「光合成ファクトリー」。ゲームを通じて光合成の仕組みを知ることができます。


さらにはショクダイオオコンニャクの匂いを嗅いでみようというコーナーも!
いやこれ、ほんっと臭いけど、滅多に嗅げない貴重な機会ですから嗅いでみることをオススメします。忘れられない体験になるはず……!

▲会場にあるショクダイオオコンニャクの模型(左)と、ショクダイオオコンニャクの花の匂い体験(右)。「君はかぐ勇気があるか⁉」 マスクをしたままでも十分臭いです!


個人的に胸が熱くなったのが、展示終盤の研究者たちによるコメントのコーナー
一口に植物の研究と言っても様々な分野があり、古代生物学から進化学、園芸学と多岐に渡ります。



研究者と聞くと気難しく頑固なイメージがあったりしますが、「最近、研究で嬉しかったこと、興奮したこと」の欄に「自分が思っていた結果と違う事実が判明して興奮した」と書いている方が何人かいたのが印象的でした。
自分が確信を持っていた予想が外れたとしても、落ち込むどころか興奮する。この好奇心あふれるメンタルが、謎に満ちた世界を切り拓く力の源なのでしょう。
愛媛大学で進化学の研究をされている今田弓女さんはこう仰います。

「なにが好きで、どんなことを知りたいですか? この世界にはまだ誰も知らない大事なことがあって、あなたがその第一発見者になるかもしれません。失敗を恐れずに新しいことに挑み、それをぜひ手に入れてください」

この展覧会は、「なにが好きで、どんなことを知りたいか」にずっと向き合ってきた人たちの姿そのものです。
追い続ければ誰もが必ず大発見をものにできるわけではないけれど、好きなものの核心に近づき、視野を広げることはできる。それは子どもだけでなく、すでに大人になった人々にも当てはまります。
自分はなにが好きで、どんなことを知りたいのか。それを自問した瞬間、きっと人生は彩りを増すはずですよ。


▲人工光を使った植物工場。土を使わずに水耕栽培ができます。レタスの場合、1度に48株育成できるそう。持続可能な社会に向けて、日々研究が進められています。

私たちの身近にある植物。長い年月をかけて進化を遂げ、さまざまな姿でさまざまな場所に生息しています。
地球の環境が急速に変化している今、この先野菜の栽培が難しくなるだろうという予測もささやかれていますが、それに対する研究も紹介されていました。
願わくは末永く緑豊かな地球が続くよう、共に生きる植物に対して知識を深めていきたいと思います。

──としみじみ展示室を出たところでハエトリソウキーチェーンなどのミュージアムグッズを見ると、研究にもユーモアにも全身全霊で打ち込む科学博物館、やっぱり好きだなあ! と心底思うのでした。




特別展「植物 地球を支える仲間たち」
本展は事前予約制です。詳しくはホームページをご覧ください。
● 会期 2021年7月10日(土)~9月20日(月・祝)
 ※9月6日(月)休館
 ※会期等は変更になる場合があります
● 時間 9時~17時(入場は16時30分まで)
● 会場 国立科学博物館(東京・上野公園)
● 公式ホームページ https://plants.exhibit.jp/


「植物 地球を支える仲間たち」は大阪市立自然史博物館に巡回します(2022年1月14日~4月3日)
この時期遠征はちょっと厳しいな……という西日本の皆さま、ぜひ年明けの巡回展をチェックしてみてくださいね!

また、国立科学博物館の常設展示は、時間を忘れるほど魅力が満載!
「植物展」のチケットで常設展示も鑑賞できるので、こちらもお見逃しなく。



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