すごい・怖い・驚愕の生存戦略! 【植物展】が熱すぎる!!

2021/8/5 20:25 虹



国立科学博物館特別展「植物 地球を支える仲間たち」が開催中です!

この時期の国立科学博物館といえば、夏休みの自由研究の駆け込み寺的存在。
博物館サイドもそれを理解しているのか、毎年夏の展覧会は、広い世代が楽しみながら学べるつくりのものが多い気がします。

今回の植物展も然り。
身近な植物から世界最大級の植物、そしてとっても恐ろしい植物などなど、本展だけで小学校6年間分の自由研究のネタが賄えるほど濃い内容となっていましたので、ちらっとご紹介したいと思います!


キャベツが自分で虫よけするって知ってた? 驚くべき植物たちの生存戦略

会場に入ると最初に登場するのが、「植物という生き方」の章。

光合成という能力を手に入れた植物たちは、自ら移動して栄養を摂取する必要がなくなったかわりに、その場から動けなくなりました。
そのため感覚を研ぎ澄まし、まわりの生物と協力するなど工夫を凝らすことで、植物たちはひとつの場所でも生きられるようになったのです。

植物も私たちと同じように、コミュニケーションを取りながら生活しているんだよ

わ~、そうなんだ!

──などというヌルい展開は植物展にはありません。あるのは、そのコミュニケーションがどれだけ本気か! 生き抜くために進化を遂げた姿がいかに驚くべきものか! 驚愕の生存戦略に肉薄する展示ばかりです。


例えば我々の食卓に欠かせないキャベツ。葉を剥いていたら青虫が……! ということがありますよね。しかしキャベツ側もやられっぱなしというわけではありません。
青虫による食害を受けたキャベツは、特別な匂いを出して青虫の天敵を呼び寄せ、自ら駆除を行います。
さらには、近隣の植物が出すこうしたSOSをキャッチして防衛にあたるというのだから驚きです。
キャベツに塩昆布とごま油を垂らすと無限に食べられるとか言っている私より、格段にコミュ力が高い生き物なのでは……? そんなふうに思えてきます。

▲ アリ植物 アリノスダマ 国立科学博物館 蔵/攻撃力の高い蟻に自分の体内を明け渡す代わりに用心棒になってもらい、且つ蟻の排泄物を養分にするという、強な植物も……! 

このようなコミュニケーション能力のほか、生存戦略のためにガジェット付きの進化を遂げた植物なども紹介。蜜を吸いに来た蜂の背中に、ハンマーを振り下ろすようにして花粉を叩きつける「トリガープラント」の映像は一見の価値あり。
また、キノコに擬態して送粉者であるショウジョウバエを騙し、強制的に花粉を運ばせる植物も。

このようにして植物展は、のっけからフルスロットルで我々の好奇心を刺激してくるのです!

▲ 左:ドラクラ・ポリフェムス、ドラクラ・ワンピラ 産地:コロンビア 右:ユキモチソウ 産地:日本 いずれも国立科学博物館 蔵/キノコに擬態して送粉者に花粉を運ばせているのですが、このケース以外にもショウジョウバエは騙された上に運び屋にされることが多く……(泣)


感覚がバグる! 〇〇〇すぎる植物たち

▲ラフレシア(実物大模型) 産地:インドネシア(スマトラ島) 京都府立植物園 蔵/みんな大好きラフレシア。このほか、初めて知るような珍しい植物が並んでいます。

続いて世界最小や最大、果ては種子に翼をつけて飛ばす植物など、「〇〇〇すぎる」驚きの特徴を持った植物が登場。

▲ メキシコラクウショウ

「わ~、メキシコラクウショウって大きいんだなあ」と思っていても、実際にどれくらい大きいのか実感がわかないですよね。そこで上を見上げてください。



「でか!!!!」
そう、このカーテンの直径こそがメキシコラクウショウの実際の大きさ。
iPhoneを広角レンズに切り替えても収まりませんでした……。「みんなで手をつないで木の幹を一周しよう!」と気軽に言えない太さです。

もうお分かりですね? 植物展は、度々このような演出でこちらの度肝を抜いてきます。


最古の大型植物化石を世界初公開! クックソニア・バランデイ
植物の不思議な生態が紹介されるだけではありません。

植物と人間の細胞分裂の段階を比較したり、遺伝子についても迫ります。
品種改良をすることで、植物がどのように変化して我々の食生活に関わるようになったのか、また、遺伝子を組み替えることによって花の色を変化させたり、光る花を生みだすといった研究の成果も紹介しています。

▲遺伝子の組み換えにより青い花色のキクが誕生。(農研機構 蔵)

様々な調査が進んでいる植物ですが、そもそも「どうやって生まれたのか」という起源についても語られています。
ここは少し難しい解説でしたが、年表も化石も豊富に用意されており、まさに「夏休みの宿題」うってつけゾーンです。メモを取りつつ、「この写真撮っておいて」とお父さんに指示する敏腕小学生も。

▲ ストロマトライト 時代:先カンブリア時代(約18憶年前) 産地:カナダ 神奈川県立生命の星・地球博物館 蔵

ストロマトライト(教科書で見た!)から始まり、森ができ、花が生まれる過程を追っていくのですが、ここで本展の見どころのひとつ、クックソニア・バランデイが登場!

▲ クックソニア・バランデイ 時代:シルル紀ウェンロック世前期(約4億3200万年前) 産地:チェコ(バランディアン地域) チェコ国立博物館 蔵

クックソニア・バランデイは、最古の大型植物の化石。フランスの古生物学者によって100年以上前に発見されていたのですが、研究が進み、近年その価値が改められました。本展では世界に先駆けての公開となっています。

ここでは海から生まれ、上陸してからおよそ5億年の年月を経て現在の姿に至る植物の進化を、化石を中心に紹介。 長い時間をかけて、今われわれが目にしている草花が生まれた過程を追っていきます。1億2500万年前に花を咲かせる植物が誕生してから、白亜紀を通じて急速に世界に拡大。被子植物は現在25万もの種を超える多様なグループとなりました。



うーん、どの花も美しく見ていて楽しいですね。やっぱり植物は癒されるなあ。
──そんな風に思っていると、どこからともなく「優しい? 癒し? 植物に対してそういった印象を抱いているのだとしたら、あなたはまだ彼らの本性を見抜けていないのでしょうなあ」という研究員の不敵な声が……。(※実際はパネルによる解説です)


そう、ここからが本展のもうひとつの目玉(だと勝手に思っている)、「本当は怖い植物」の章の始まりです!


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