全部集めたい!【大津絵】壁紙がかわいすぎる♥

2021/5/31 21:45 虹

 皆さんはご自身のスマートフォンにどんな壁紙を使っていますか? 私はこれ。疫病を退ける鐘馗様。今の状況にぴったりの絵です。

▲大津絵《鍾馗》 大津市歴史博物館蔵

 独特な愛らしさと親しみやすい画風が特徴的なこちらは、大津絵
 実はこの壁紙、大津市歴史博物館が毎月リリースしているものなのです。


大津絵とは?

▲歌川広重《東海道五十三次 大津》 メトロポリタン美術館蔵

 ここでちょっと大津絵について触れておきましょう。
 大津絵とは読んで字の如く、東海道の大津周辺で17世紀半ば頃に量産された土産物の版画です。とはいっても名高い絵師が描いたものではなく、一般の人が旅客に売るために制作したもの。それゆえにちょっと不格好ではあるのですが、それが独特の味わいとなっています。
 この歌川広重の《東海道五十三次 大津》を見ると、左上に大津絵を売っているお店があるのがわかりますね。


▲大津絵《金剛夜叉図》 作者不詳 メトロポリタン美術館蔵

 大津絵最初期の画題は仏画が主でしたが、その後は世俗画、風刺画、そして道歌(道徳的な教えを詠んだ和歌)を添えたものへと移り変わっていきました。
 なかでも「大津絵十種」と呼ばれる絵柄は代表的な画題として定着し、良縁や厄除けなどの意味合いを持つとして、お守り代わりとしても重宝されるようになったのです。

 江戸時代の終わりと共に土産物として売られることがなくなっていった大津絵ですが、その後一部の文化人らの間で大流行。
 基本的に大津絵は表装や額装などされていない状態で売られていましたが、彼らによって渋くて趣のある見事な設えが施され、大津絵は素朴な土産物から民芸の風情を伴った美術品へと姿を変えたのです。

▲2020年秋に開催された、東京ステーションギャラリー「もうひとつの江戸絵画 大津絵」のポスター

 昨年、東京ステーションギャラリーで開催された展覧会「もうひとつの江戸絵画 大津絵」を見に行かれた方もいらっしゃると思います。
 展覧会のキャッチコピーにもなっていた「欲しい! 欲しい! 欲しい!」の文字。いや本当に、大津絵の持つ愛嬌たるや、「欲しい」と思わせる力を秘めているんですよね。
 そこで大津市歴史博物館なわけですよ!


毎月1枚の大津絵が手に入る!

▲大津市歴史博物館 大津絵壁紙ダウンロードページ

  冒頭にも書きましたが、大津市歴史博物館では、毎月1枚ずつ大津絵の壁紙を配布しています。その月の下旬になると、公式ホームページにて次の月の大津絵を配布。背景の色のチョイスも素晴らしく、大津絵の配し方もとてもおしゃれです。

 6月は「傘さす女」。梅雨の季節にぴったりですね。


▲画題の解説もちゃんとあります!

 画題の解説もあるので、毎月知識を得られるのも嬉しいところ。また、パソコン向け、スマートフォン向けに合計4種を展開という使い勝手の良さもポイントです(カレンダー付きのデザインも!)。

 過去の壁紙もとてもかわいいです。


 2月は「鬼の念仏」ならぬ「鬼のマスク念仏」
 元の絵となっている「鬼念仏」にマスクをつけたものだそう。こちらの絵も、はやり病除けとして親しまれた画題です。



 4月は「藤娘」でした。鬼の念仏と一緒に「大津絵十種」に選ばれているほど人気の画題です。



 和製トムとジェリーのようなこちらは「猫と鼠」。鼠に酒を飲ませ、酔っぱらったところを狙おうと画策している猫の図で、「酒は飲んでも飲まれるな」的な教訓を表した絵だそう。これこそ道歌が付きそうな画題ですね。
 しかし猫と鼠が出てくる物語は、たいてい鼠の方が一枚上手。猫が奢り損にならないことを祈ります。


 来月は一体どんな絵柄が配布されるのか、今からとても楽しみです。
 お気に入りの絵を通年使うもよし、月ごとに変えるもよし。コレクターになった気分で、12か月分の大津絵をコンプリートしてみてはいかがでしょうか。