美術品の体重とBMIを計算してみた!肥満・痩せすぎの名品たち

2021/5/26 21:00 明菜 明菜



こんにちは、体重計を捨てて平穏を手に入れた、美術ブロガーの明菜です。

テレワークや外出自粛で運動不足になるも、お菓子をつまんだり、つい高カロリーなデリバリーを頼んでしまったり…と、コロナ太りに悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

そこで私、思ったんです。



美しい彫刻のBMIってどれくらいなんだろう???

そもそも、彫刻に対して顔や肉体、ポーズに注目することはあれど、重さに注目する人は少ないのではないでしょうか?有名なダヴィデ像や自由の女神だって、高さは何となくイメージできるとしても、重さは見当もつかないのでは?

重さに注目したら、彫刻の新たな一面が見えてくるかも!というわけで、有名な彫刻の高さと重さを調べ、BMIも計算して重量感を比べてみることにしました!

■BMIって何?

どうして彫刻のBMIを知りたいのかをお伝えするため、まずはBMIの意味をおさらいしましょう!

健康診断で身長・体重に並んで示されるBMI。これはボディマス指数のことで、肥満や低体重(やせ)の判定に使う指数です。



理想が22で、25以上が肥満、18.5未満が低体重(やせ)とされています。以下の式で計算できるので、気になる方は自分のBMIをチェックしてみましょう!

○ BMI = [体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]

この式からも分かるとおり、身長に対して体重が重いほど、BMIは大きくなります。反対に身長に対して軽いほど、BMIは小さくなります。

もちろん、BMIは人間専用の指標です。しかし、これを芸術作品に当てはめたらどうなるの!?と気になっちゃったんですよね〜



なぜ重さだけでなくBMIを知りたいのかというと、人間と彫刻は身長が全く違って重さだけでは比較できないからです。例えば、高さ5メートルもあるダヴィデ像が、人間より重いのは当然です。ある程度は身長が違っても重さを比較できる指標として、今回はBMIを採用しました。

(本来は密度が良いと思うのですが、体積を測る術がないので…親しみのあるBMIを採用します)

BMIを計算すれば、「ああ、ダヴィデ像ってBMI的には肥満なんだ笑」みたいな見方ができると思いません?

それでは早速、有名な彫刻作品のBMIを見ていきましょう!

■世界で最も有名な彫刻のBMIは?



最も有名な彫刻といえば、ミケランジェロが作った《ダヴィデ》でしょう!

高さ5.17m、重量は5660kg。重い…思ったより重いな…。

計算すると、《ダヴィデ》のBMIは約212でした。人間だと多くの方が15〜35に分布するので、《ダヴィデ》は桁外れに重いことが分かりますね!



ところで人間のBMIは最高どれくらいなんだろう、と思って調べてみたところ、BMIが150~200の人も記録には残っております。例えばサウジアラビアのハリド・モシン・シャエリさん。2013年時点で体重はなんと610kg!身長は173cmなので、BMIは約204です。ダヴィデと張り合える…!

なお、2013年に彼はフォークリフトで自宅から運び出され、国王の指示で病院に搬送されました。その後、半年で320kgの減量に成功して、歩行器を使って歩けるようになったそうです。肥満は行き過ぎると命の危険がありますからね…。



続いてはニューヨークの自由の女神!台座を含めない像本体の高さは46m、重量は225tです。BMIは約106となりました。

あれ、ダヴィデの半分くらいのBMIしかない…ように見受けられますが、ポーズの違いが大きいように思います。自由の女神は右手で松明を掲げているので、高さが水増しされています。きちんと身長を測ったら、BMIはもっと大きくなるでしょう。



他に《ミロのヴィーナス》やロダンの《考える人》のBMIも算出しようと思ったのですが、重量が分からず断念しました。しかも《考える人》は座ってるから、身長も分からないですね。

美術館のWebサイトなどには、高さや奥行きといった寸法のデータは載っているのですが、重量のデータは載っていない場合が多いのも分かりました。てっきりデータが公開されているものだと思っていたので意外です。

■日本の偉人たちのBMIは?



続いて、日本の銅像についてもBMIを調べていきましょう!上野公園にいる西郷隆盛さんの高さは3.7m、重量は約9tなので、BMIは約657です。

いや657!?ダヴィデや自由の女神と比べても重すぎないか!?



ちなみに高知県高知市にいる坂本龍馬さんは、高さ5.3m、重量2974kgなので、BMIは約106です。「偉人の銅像」という似たようなイメージがあるものでも、BMIがずいぶん違うんですね…西郷さんは恰幅が良いからかな?

この差異の理由については今後の課題としたいのですが、西郷さんのBMIが高くなってしまった要因としては、

・犬の「ツン」込みの重量
・重量に台座の一部が含まれている可能性
・約9tとのデータしかなく、正確な端数は不明

こうした要因が考えられそうです。

■仏像界のアイドルのBMIが衝撃!

続いて仏像のBMIも測っていきましょう!イケメン仏像として仏像界でも抜群の人気を誇る、興福寺の阿修羅さんのBMIを調べてみます!



阿修羅像は高さ約153.4cm、重量約15kgなので、BMIは約6.37です。…6.37!?

今までの彫刻や銅像のBMIは100や200といった桁だったのに対し、阿修羅像のBMIはたったの6.37という結果に。瘦せすぎ・オブ・瘦せすぎでは!?

どうして阿修羅像がこんなに軽いのかというと、「脱活乾漆(だっかつかんしつ)」という技法で作られているからなんですね。土で像の原型を作って麻布を貼るのですが、最終的に内側の土を取り除きます。骨組みはありますが、中が空洞になるので軽いんです。

阿修羅像を見ただけでは、ここまで軽いとは想像しないと思います。その軽さゆえに、度重なる火災でも持ち出されて保存されてきたのかもしれません。

■まとめ



彫刻作品を見たとき、大きさに圧倒されたり、小ささに意外性を感じたり、ポーズの面白さを楽しんだりしますよね。しかし、重量に着目した鑑賞は、あまり普及していないように思います。

重量に注目すると、彫刻の意外な一面が見えてきます。阿修羅像があんなに軽いなんて、知らなかった方が多いのではないでしょうか?知っているようで知らないことって沢山ありますよね。しかも、重量が分かると今度は技法にも興味が広がります。

美術館の彫刻作品や街の銅像、パブリックアートを見かけたら、重量のことも気にしてみてはいかがでしょうか?