浮世絵の人物を現代風にアップデートしたイラストが凄い!

2021/2/15 22:30 Tak(タケ) Tak(タケ)

江戸時代の庶民からお殿様までを虜にした浮世絵。

人物を描いたメディアがこれだけ多く作られ、多くの人の手に渡った時代も世界中広しと言えども、江戸時代だけのことでしょう。


鳥居清長「飛鳥山の花見」(部分)

現在でも浮世絵の展覧会はひっきりなしに開催され、また小学館からはウィークリーマガジン『ニッポンの浮世絵100』が発売されるなど、根強い人気を博しています。

ただ、美術館や本で「歴史的なもの」として観ることがほとんどで、はっきり言って我々にとって身近な存在でないことは確かです。

つまり、江戸っ子たちが夢中になった「熱量」は、残念ながら令和人には感じることは出来ません。何百年も前の文化ですから仕方ないことですけどね。

しかし!そんな江戸時代と現代の美のギャップを埋めてくれる素晴らしい一冊が、撫子凛さんのお江戸ファッション図鑑がマール社から出ました。


お江戸ファッション図鑑

江戸時代の浮世絵に描かれている当時の人々の着こなしを、現代のイラストでアップデート。「江戸の着物を描きたい、でも難しくてわからない…」そんなお悩みにお答えする、実用的なイラスト資料集です。町娘から武家の若君・姫君、大名・女中、芸者や役者、遊女・花魁まで、様々な身分の美男美女を集めました。


江戸時代中期に活躍した浮世絵師・鈴木春信が描いた細身の美人画もご覧の通り、とても現代風に可愛らしく進化を遂げています。



元の浮世絵とお江戸ファッション図鑑の現代風イラストではどう変化しているか、2,3比較してみましょう。

まずは、歌川国貞の浮世絵に描かれたこの女性からまいりましょう。


歌川国貞「江戸名所百人美女 東本願寺」

武家の育ちよいお嬢様が、お見合いの日の装いを纏っている姿が描かれています。

江戸時代の人々にとってはグラビアアイドルどころの騒ぎではないほど、この上なく美しく可憐なまさに「お姫さま」のように映ったことでしょう。

ただ、現代の美的感覚からするとお世辞にも美人には属さないばかりか、(以下略)。

そんな・・・な江戸時代の良家のお嬢様を現代風のイラストでアップデートするとこうなります!



ヤバイくらい可愛いではないですか!江戸時代の人が夢中になって浮世絵を買い求めた理由が解せました。これなら自分も迷わず買います。ダウンロードします!

お江戸ファッション図鑑では、このような現代風にアップデートした浮世絵に描かれた人々が見開きに2人掲載されています。

因みに、このお嬢様の隣には、女性にモテモテな若衆(美男子)が掲載されています。



着物には源氏香の模様がしたためられており、光源氏に見立てているとの解釈もできる和歌を詠む美少年。

この元絵となった浮世絵がこちらです。


勝川春章「桜下詠歌の図」

太田記念美術館のTwitterではこの作品について、こんな解説をしています。

勝川春章「桜下詠歌の図」。満開の桜の下、歌を詠む若い男性に熱い視線を送る女性たち(13人)。素敵な男性を一目見るために花見もそっちのけで押し寄せる女性。その気持は今も昔も同じかもしれませんね。


実はこの本、単に浮世絵を現代風のイラストにしただけでなく、先ほどの着物の模様に使われている「源氏香」についての解説や髪型や装身具についても別ページで丁寧に説明されているのです。

監修者の丸山伸彦先生(武蔵大学教授)の他、ポーラ文化研究所の村田孝子氏や太田記念美術館の渡邉晃学芸員さんの協力を得ており折り紙付きの一冊なのです。


「第四章 花街の人々」引込新造、遊女

折しも、「鬼滅の刃」遊郭編 2021年 テレビアニメ化決定!したナイスなタイミグです。あまり資料が残っていない遊郭の人々たちを現代風にブラッシュアップさせた撫子凛さんのイラストで少しでも身近なものに感じられるはずです。

これまで浮世絵を敬遠していた方も、浮世絵からたどる江戸の服飾文化の豊かさをしかと堪能しましょう!


お江戸ファッション図鑑

撫子 凛/なでしこ りん
1984年千葉県生まれ。イラストレーター、画家。歌舞伎、着物、日本美術、江戸時代のものが好き。主な著書に2020年発売『大人の教養ぬり絵&なぞり描き 歌舞伎』(エムディエヌコーポレーション)。
http://nadeshicorin.com/
Twitter @nadeshicorin