【無念】コロナにより開催されなかった幻の展覧会
未だ収束の糸口が見えない、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
大方の予想通り、気温が下がり乾燥する季節となり感染者数も増加の一途を辿っています。
2020年はまさに新型コロナウイルスに翻弄された一年でした。展覧会もその例外ではなく、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため美術館や博物館も閉館を余儀なくされました。
開催を予定していた、または開催途中の展覧会のスケジュールも大きな影響をもたらし、主催者のみなさんはさぞかし大変だったかと思われます。
特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」(東京国立博物館)や「イサム・ノグチ 発見の道」(東京都美術館)、「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」(三菱一号館美術館)のように2021年に会期をそのまま移行した展覧会もある中、非常に残念なことに開催を断念した展覧会も多くあります。
今回はそんな開催予定でありながらも、展覧会自体が一日も開催されることなく中止になってしまった幻の展覧会を紹介したいと思います。
ただし中止となった全ての展覧会ではなく、チラシなども制作された都内の展覧会が中心となります。中には会場に作品展示も全て済んで内覧会も行ったにも関わらずコロナのせいで開けることが叶わなかったまさに無念が胸に迫るものも含まれています。
開催出来なかった全ての展覧会への鎮魂の意味も込めて振り返っておきます。「ラートム」。
「法隆寺金堂壁画と百済観音」
東京国立博物館
予定会期:2020年3月13日(金)~5月10日(日)
飛鳥時代を代表する仏像で、”百済観音“の名で親しまれている国宝「観音菩薩立像」が23年ぶりに東京にお出ましになる展覧会とあり、大きな注目が集まっていました。
展示ケースを百済観音のために新たに新調し、海洋堂による「百済観音フィギュア」も完成し、準備万端でしたが結局一日も開けることが出来ませんでした。
「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
国立科学博物館
予定会期:2020年3月14日(土)~6月14日(日)
こちらの展覧会も全て展示が終わっていたにも関わらず、一日も開くことの無かった無念の展覧会。展示だけでなく図録やグッズや広告なども全て水泡に帰してしまう悲しさ。
公式Twitterによると、2023年に延期開催(予定) が決まったそうです。
御即位記念特別展「雅楽の美」
東京藝術大学大学美術館
予定会期:2020年4月4日(土)~5月31日(日)
個人的に雅楽、舞楽は学生時代から見聞きしてきたものなので、今年一番楽しみにしていた展覧会が「雅楽展」でした。
宮内庁が持っている雅楽関連のお宝この目で見たかったな…展示も全て完了していただけに、まさに無念。
「ボストン美術館展 芸術×力」
東京都美術館
予定会期:2020年4月16日(木)~7月5日(日)
ボストン美術館から「吉備大臣入唐絵巻」(平安時代後期-鎌倉時代初期、12世紀末)と「平治物語絵巻」(鎌倉時代、13世紀後半)の国宝級二大絵巻が里帰りする予定だった展覧会。
アメリカからの輸送が困難であることから中止が決定。予定されていた福岡市美術館、神戸市立博物館への巡回も白紙に。素敵なオリジナルグッズも既に出来上がっていたのに…
ユネスコ無形文化遺産 特別展「体感!日本の伝統芸能-歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界-」
東京国立博物館
予定会期:2020年3月10日(火)~5月24日(日)
歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界を、まるごと体感できる体験型展覧会を目指し、展示室に各芸能の舞台を再現するなど手の込んだ会場だったそうです(手掛けた方にお聞きしました)。
これも雅楽好きとしては是非観てみたかった幻の展覧会です。展示も全て完了していただけあり残念でなりません。
没後35年「有元利夫展 花降る空の旋律(しらべ)」
Bunkamuraザ・ミュージアム
予定会期:2020年6月25日(木)〜8月30日(日)
38歳でこの世を去った有元の没後35年にあたる2020年に満を持して開催される予定だった久々の「有元利夫展」もコロナ禍には勝てませんでした。
Bunkamuraさんなら、来年もしくは再来年あたりに復活開催してれるのではと期待。まとめて観たいですよね~有元さんの作品。心に沁みるはずです。特に今は。
「ゴッホと静物画-伝統から革新へ」
SOMPO美術館
予定会期:2020年10月6日(火)~12月27日(日)
海外から作品を借りてきて開催するのが日本の特別展の常識でしたが、このような状況下となるとそれも叶わなくなります。
作品だけを借りてくるのではなく、クーリエも飛行機で一緒にやって来るわけで、海外との往来が困難であるため、開催は厳しくなります。今後どうなるのか先が読めませんが主催者は下を向かず先を見据えて今もなお頑張ってくれています。
「いっぴん、ベッピン、絶品! ~歌麿、北斎、浮世絵師たちの絵画」
渋谷区立松濤美術館
予定会期:2020年4月4日(土)~5月17日(日)
訪日外国人向けに浮世絵の展覧会が多く企画されていた今年ですが、松濤美術館の浮世絵展は他とはちと違いました。それは肉筆浮世絵の展覧会であった点です。
版画である一般的な浮世絵とは違い、浮世絵師たちの運筆の息吹が伝わる一点ものの絵画である肉筆浮世絵はまさに「一品」もの。観たかったな~~(しみじみ)
「茶の湯の美」
出光美術館
予定会期:2020年4月21日(火)~5月24日(日)
出光美術館は2020年に予定していた6つの展覧会を全て中止にしました。中にはプライスコレクションのお披露目を兼ねた「江戸絵画の華展」も含まれています。
チラシを持っていたのが唯一この「茶の湯の美」だけでした。2021年度よりオンラインによる日時指定予約システムを導入し展示内容を再考し展覧会スタートさせるそうです。
「知られざる芸術と文化のオリンピック展」
三井記念美術館
予定会期:2020年4月24日(金)〜2020年6月16日(火)
国際オリンピック委員会(IOC)の文化教育機関であるオリンピック文化遺産財団が、4月24日から東京・日本橋で開催予定だった文化プロジェクト「オリンピック・アゴラ(Olympic Agora)」の一環として企画された展覧会。
当然、オリンピックが延期となったため、三井記念美術館らしくないこの展覧会も無かったことに。
「スポーツ in アート展―ギリシャ彫刻×印象派の時代」
国立西洋美術館
2020年7月11日(土)~10月18日(日)
三井の展覧会に比べるとぐっと見応えのあったはずの好企画展。古代オリンピックが生まれた古代ギリシャ時代と、近代オリンピックが誕生した19世紀後半のふたつの時代に焦点を当て作品をセレクト。
楽しみにしていた展覧会でしたが、中村るい先生の『ギリシャ美術史入門』、そして新刊の『ギリシャ美術史入門2: 神々と英雄と人間』を読んでここは気持ちを落ち着けることにします。
都内の展覧会で自分の手元に資料等があるものだけを紹介しましたが、日本全国、世界各国に目を向ければそれこそ無数にコロナのせいで開催出来なかった展覧会はあります。
気軽に思い立ったら美術館、博物館へ出かけられる日常が一日でも早く戻ってくることを願いつつ、また2020年の記録として今回のコラムを書きました。
すぐには元通りにはなりません。2021年を新たな展覧会元年として少しずつ日常を取り戻していきましょう、たとえ何年かかってでも。
芸術は空腹を満たすことも、疫病に打ち勝つことも出来ませんが、人の心の支えとなるものですから。
美術展ぴあ2021 (ぴあ MOOK)
大方の予想通り、気温が下がり乾燥する季節となり感染者数も増加の一途を辿っています。
2020年はまさに新型コロナウイルスに翻弄された一年でした。展覧会もその例外ではなく、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため美術館や博物館も閉館を余儀なくされました。
開催を予定していた、または開催途中の展覧会のスケジュールも大きな影響をもたらし、主催者のみなさんはさぞかし大変だったかと思われます。
特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」(東京国立博物館)や「イサム・ノグチ 発見の道」(東京都美術館)、「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」(三菱一号館美術館)のように2021年に会期をそのまま移行した展覧会もある中、非常に残念なことに開催を断念した展覧会も多くあります。
今回はそんな開催予定でありながらも、展覧会自体が一日も開催されることなく中止になってしまった幻の展覧会を紹介したいと思います。
ただし中止となった全ての展覧会ではなく、チラシなども制作された都内の展覧会が中心となります。中には会場に作品展示も全て済んで内覧会も行ったにも関わらずコロナのせいで開けることが叶わなかったまさに無念が胸に迫るものも含まれています。
開催出来なかった全ての展覧会への鎮魂の意味も込めて振り返っておきます。「ラートム」。
「法隆寺金堂壁画と百済観音」
東京国立博物館
予定会期:2020年3月13日(金)~5月10日(日)
飛鳥時代を代表する仏像で、”百済観音“の名で親しまれている国宝「観音菩薩立像」が23年ぶりに東京にお出ましになる展覧会とあり、大きな注目が集まっていました。
展示ケースを百済観音のために新たに新調し、海洋堂による「百済観音フィギュア」も完成し、準備万端でしたが結局一日も開けることが出来ませんでした。
「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
国立科学博物館
予定会期:2020年3月14日(土)~6月14日(日)
こちらの展覧会も全て展示が終わっていたにも関わらず、一日も開くことの無かった無念の展覧会。展示だけでなく図録やグッズや広告なども全て水泡に帰してしまう悲しさ。
公式Twitterによると、2023年に延期開催(予定) が決まったそうです。
御即位記念特別展「雅楽の美」
東京藝術大学大学美術館
予定会期:2020年4月4日(土)~5月31日(日)
個人的に雅楽、舞楽は学生時代から見聞きしてきたものなので、今年一番楽しみにしていた展覧会が「雅楽展」でした。
宮内庁が持っている雅楽関連のお宝この目で見たかったな…展示も全て完了していただけに、まさに無念。
「ボストン美術館展 芸術×力」
東京都美術館
予定会期:2020年4月16日(木)~7月5日(日)
ボストン美術館から「吉備大臣入唐絵巻」(平安時代後期-鎌倉時代初期、12世紀末)と「平治物語絵巻」(鎌倉時代、13世紀後半)の国宝級二大絵巻が里帰りする予定だった展覧会。
アメリカからの輸送が困難であることから中止が決定。予定されていた福岡市美術館、神戸市立博物館への巡回も白紙に。素敵なオリジナルグッズも既に出来上がっていたのに…
ユネスコ無形文化遺産 特別展「体感!日本の伝統芸能-歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界-」
東京国立博物館
予定会期:2020年3月10日(火)~5月24日(日)
歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界を、まるごと体感できる体験型展覧会を目指し、展示室に各芸能の舞台を再現するなど手の込んだ会場だったそうです(手掛けた方にお聞きしました)。
これも雅楽好きとしては是非観てみたかった幻の展覧会です。展示も全て完了していただけあり残念でなりません。
没後35年「有元利夫展 花降る空の旋律(しらべ)」
Bunkamuraザ・ミュージアム
予定会期:2020年6月25日(木)〜8月30日(日)
38歳でこの世を去った有元の没後35年にあたる2020年に満を持して開催される予定だった久々の「有元利夫展」もコロナ禍には勝てませんでした。
Bunkamuraさんなら、来年もしくは再来年あたりに復活開催してれるのではと期待。まとめて観たいですよね~有元さんの作品。心に沁みるはずです。特に今は。
「ゴッホと静物画-伝統から革新へ」
SOMPO美術館
予定会期:2020年10月6日(火)~12月27日(日)
海外から作品を借りてきて開催するのが日本の特別展の常識でしたが、このような状況下となるとそれも叶わなくなります。
作品だけを借りてくるのではなく、クーリエも飛行機で一緒にやって来るわけで、海外との往来が困難であるため、開催は厳しくなります。今後どうなるのか先が読めませんが主催者は下を向かず先を見据えて今もなお頑張ってくれています。
「いっぴん、ベッピン、絶品! ~歌麿、北斎、浮世絵師たちの絵画」
渋谷区立松濤美術館
予定会期:2020年4月4日(土)~5月17日(日)
訪日外国人向けに浮世絵の展覧会が多く企画されていた今年ですが、松濤美術館の浮世絵展は他とはちと違いました。それは肉筆浮世絵の展覧会であった点です。
版画である一般的な浮世絵とは違い、浮世絵師たちの運筆の息吹が伝わる一点ものの絵画である肉筆浮世絵はまさに「一品」もの。観たかったな~~(しみじみ)
「茶の湯の美」
出光美術館
予定会期:2020年4月21日(火)~5月24日(日)
出光美術館は2020年に予定していた6つの展覧会を全て中止にしました。中にはプライスコレクションのお披露目を兼ねた「江戸絵画の華展」も含まれています。
チラシを持っていたのが唯一この「茶の湯の美」だけでした。2021年度よりオンラインによる日時指定予約システムを導入し展示内容を再考し展覧会スタートさせるそうです。
「知られざる芸術と文化のオリンピック展」
三井記念美術館
予定会期:2020年4月24日(金)〜2020年6月16日(火)
国際オリンピック委員会(IOC)の文化教育機関であるオリンピック文化遺産財団が、4月24日から東京・日本橋で開催予定だった文化プロジェクト「オリンピック・アゴラ(Olympic Agora)」の一環として企画された展覧会。
当然、オリンピックが延期となったため、三井記念美術館らしくないこの展覧会も無かったことに。
「スポーツ in アート展―ギリシャ彫刻×印象派の時代」
国立西洋美術館
2020年7月11日(土)~10月18日(日)
三井の展覧会に比べるとぐっと見応えのあったはずの好企画展。古代オリンピックが生まれた古代ギリシャ時代と、近代オリンピックが誕生した19世紀後半のふたつの時代に焦点を当て作品をセレクト。
楽しみにしていた展覧会でしたが、中村るい先生の『ギリシャ美術史入門』、そして新刊の『ギリシャ美術史入門2: 神々と英雄と人間』を読んでここは気持ちを落ち着けることにします。
都内の展覧会で自分の手元に資料等があるものだけを紹介しましたが、日本全国、世界各国に目を向ければそれこそ無数にコロナのせいで開催出来なかった展覧会はあります。
気軽に思い立ったら美術館、博物館へ出かけられる日常が一日でも早く戻ってくることを願いつつ、また2020年の記録として今回のコラムを書きました。
すぐには元通りにはなりません。2021年を新たな展覧会元年として少しずつ日常を取り戻していきましょう、たとえ何年かかってでも。
芸術は空腹を満たすことも、疫病に打ち勝つことも出来ませんが、人の心の支えとなるものですから。
美術展ぴあ2021 (ぴあ MOOK)