きっとどこかにいる「あなたのファン」を大切にしていますか?「ファンベースなひとたち ファンと共に歩んだ企業10の成功ストーリー」

2020/12/1 18:20吉村智樹吉村智樹




こんにちは。
ライター・放送作家の吉村智樹です。


おススメの新刊を紹介する、この連載。
第29冊目は、お金の流れが変わろうとしているいまだからこそ読んでおきたい「ファンベースなひとたち ファンと共に歩んだ企業10の成功ストーリー」です。





きっとどこかにいる「あなたのファン」
ありがたい「ファン」という存在を、あなたは大事にしていますか?


■気づいていますか?あなたに「ファン」がいることを


「私にファンがいるか、ですか? いませんよ~、ファンなんて。だって私、普通の会社員ですよ?」


あなたは、そう言うかもしれません。


けれども一度でもSNSやブログで発信をした経験があるならば、そこに親戚縁者や友人以外の不思議な存在を感じたのではないでしょうか。Twitter、Instagram、noteなど、日頃は意識をしていないかもしれませんが、そこにはあなたの発信や更新を楽しみにしている「ファン」がいるのです


いま、芸能活動などまったくしていない学生や会社員でも、ずっと在宅でも顔出しなどしていなくとも、SNSのフォロワーが3ケタを超える人は珍しくありません。友人のみでは、その数にはならないでしょう。あなたが発した言葉が遠い場所に住む誰かの胸に響いている。だからあなたをフォローしている。ファンになる。そしてファンは、あなたがピンチに陥った日に手を差し伸べてくれる救世主かもしれません


「いや、だからって、ファンだなんて~。大げさな」


いいえいいえ、これは決してたいそうな話ではありません。


新型コロナウイルスの感染拡大で誰しもが大きな影響を受けました。今年に入り、自分が関わっているお店や会社の運営、表現活動において苦境に立たされた人は多いでしょう。そして、いつもは深くは考えていなかった「ファン」がどれだけ自分を支えてくれていたのか、かえりみたのではないでしょうか。思いだしませんか? 「あのときもらった励ましの言葉で、なんとか前を向けたな」、そんな日があったことを。


「自分にはファンがいる」というと「思いあがっている」「アーティスト気取りかよ」と受け取られそうです。しかし実はそれは正反対。「自分にはファンなどいない」と考える方が実は思いあがっているし、せっかく厚意を寄せてくださっている方々に失礼なのです。そして「自分にはファンなどいない」と考えているせいで誰かに冷たくしていたり、知らず知らず傷つけていたりするかもしれません





■商いの基本なのに忘れがちな「ファンを大切にする」気持ち


「自分は人気者でもなんでもない。けれども、これまで生きてきた日々は、友人だけではなくファンに支えられていた部分があったのかもしれない


そんなふうに自分を振り返ってみた方におススメな、あたたかな新刊があります。それが『ファンベースなひとたちファンと共に歩んだ企業10の成功ストーリー』(佐藤尚之、津田匡保・著 おぐらなおみ・漫画 日経BP社)。


この本は「ファンを大切にすること(つまりファンベース)で成長を遂げたり、あるいは新型コロナウイルス禍の渦中でも堅調であったりした10の企業」を紹介したもの。


「ファンベース」とは「ファンを大切にし、ファンをベースにして、 中長期的に売上や事業価値を高める」という方法論のこと。無理に購入者を増やしたり、一時的に売り上げを爆発させたりといった即効性があるビジネスではなく、ファンの気持ちに添いながらゆっくり並走してゆく感覚ですね。





■読者の声に耳を傾け、143.2%もの売り上げ回復を見せた雑誌があった


一例を挙げるならば、最盛期の100万部から12万部まで部数が下がっていた雑誌『レタスクラブ』。最悪の段階で編集長に異動させられた松田紀子さんは、LINEやTwitterで読者と交流をはかり、雑誌を読んでほしい人たちが実は料理をつくることは苦痛だと感じている状況を知ります。


そこで松田さんは、料理は4品並ぶのが当たり前といった旧来の良妻賢母型婦人雑誌のかたちを捨て、手抜きの罪悪感を払しょくする革命的な記事を載せ始めました。また、これまでなかったコミックエッセイを掲載するなど、読者の共感を呼び起こしたのです。そうして読者に添うような誌面刷新を繰り返し、売り上げはなんと143.2%もの回復を見せたといいます。「雑誌が売れない」「出版界が危うい」と言われている昨今、「読者に添う」「ファンの声を聴く」という気持ちが功を奏したのです。





■スープのようにあたたかいな「接客」がファンを生みだす


こんなふうに売り上げがあがった例だけではなく、堅調を続けているケースにも見習うべき点があります。


食べられるスープが店舗ごとに毎週変わる『Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)』。ここでは、ファストフードでありながら「接客の体温」を念頭に置いているのだそう。たとえば年に一度の七草がゆの日に、必ず購入したお客さんの身体をいたわるオリジナルなひと言を添えます。購入者は「私のことを憶えていてくれたんだ」と、きっと嬉しく思うでしょう。そうして心が通い、常連のおじいさんが退院後にお店へやってきたときは、スタッフが泣いてしまったといいます。そう、企業が反対にお客様のファンになる場合だってあるわけです


「ファンベース」の特徴(人によっては欠点に映る)としては中長期的な展開なので、対効果が見出せないこと。「ファンを大切に」って言わば情緒であって数値化された経営術ではない。なので「ファンを大切にしたから儲かる」といった目に見えてわかりやすいデータがとれない。難点でもあります。


でもですね……。


無理に値下げしたり、おまけをつけたりすると、お客さんは一時は増えます。そうすると沸騰したかのように経済効果が出るので、よしとする人も多い。もちろんその方法が悪いわけではありません。けれども、いともたやすくコピーされてしまうメソッドでもある。無理に値下げしてみても、他店がさらに1円さげれば、お客さんはそちらへ流れる。ファンを生みださないうえに、誰も幸せになれない。


「ファンベース」は、ゆっくりじっくり信頼を得ながらファンになってもらうという、とてつもなく気長な考え方。これってビジネスだけではなく、暮らしのさまざまなシーンにも活かせるのではないでしょうか。


誰かに何かをしてもらったら、アドバイスをもらえたら、お店でおいしいものを提供されたら、しっかり「ありがとう」という気持ちを伝える。あとでお礼のメールをする。それを繰り返していくだけで「あの人の応対は気持ちがいい」「あの人にもっと喜んでもらいたい」という気持ちが芽生える。そうしていつしかあなたのファンが生まれる。ファンになってもらうのって、世の中のギスギスを削り取る効能もあるわけです。





■ファンを「数」でしか評価できない悲しい人たち


よく芸人さんやタレントさんがテレビ番組で、自分のYouTubeチャンネルの「登録者数が少ない」「再生回数が少ない」と自虐して笑いをとっている姿を見ます「少な!」とイジられている場合もあります。むろん「卑下する企画」内での発言であるとは重々承知。けれどもそういった光景を目にするたび「たとえ数は少なくとも、地球にどこかにあなたの配信を楽しみにしているファンがいるんだよ」と、いつも悲しい気持ちになるのです。


また、情報商材を売るためなのか、インスタントにカリスマになりたいのか、Twitterで「私がフォロワーを激増させた方法!」といった内容のツイートを頻繁に目にします。それを見るたびに「フォロワー数の向こう側には、ひとりの人間がいる。ファンには人格があるんだけどな」と、やるせなくなるのです。伸び数を折れ線グラフなどで表示されようものなら、そんなふうに人を「数」でしか見ていないグラフにはまったく関わらない人生でありたいとすら思ってしまいますね。


SNSやYouTube、ツイキャス、配信イベントなどなど、そこには大切にすべきファンがいます。フォロワーや登録者数、再生回数が「0」ではない限り、あなたにはファンがいるのです。自分のお店、自分の会社の通販やクラウドファンディングに反応があった時、インターネットの向こう側には、あなたに関心をいだき、支えようとしてくれている人がいる。それを忘れないでおきましょう。


かくいう僕自身、かなり不愛想な性格。「メールの返信やレスがあっさりしすぎていて冷たい」「言葉のフォローがない」「想像していた感じの人と違う」と言われたことが何度もあります。「ファンベースな人たち」を読み、「この瞬間からでも考えや態度を改めなければ」と、胸に刺さりました。



ファンベースなひとたち
ファンと共に歩んだ企業10の成功ストーリー
佐藤尚之、津田匡保/著
おぐら なおみ/漫画
1,870円(税込)
日経BP社

ベストセラー『ファンベース』著者の佐藤尚之(さとなお、ファンベースカンパニー会長)と、ネスレ日本でコーヒーのオフィス向け定期宅配サービス「ネスカフェ アンバサダー」を大成功に導いた津田匡保(ファンベースカンパニー代表)の共著による待望の書。

漫画と対談でファンベースの実践ポイントを解説します。

人口急減や超高齢化、超成熟市場といった消費環境の一大変化に加え、相次ぐ自然災害の発生などで「先が見えない時代」。

あなたの会社や事業の逆境を支えてくれるのは、まだ見ぬ新規顧客ではなく、熱烈に愛してくれている「ファン」の存在です。

さとなおが提唱するファンベースとは、「自社のサービスやブランドを愛してくれるファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売り上げや事業価値を高める」考え方。

ともすれば、顧客を囲い込む、無理に増やすといった発想に陥りがちな「ファンマーケティング」や「コミュニティービジネス」とは一線を画すものです。

みなさん、頭では理解したつもりでも、「実際どうやってファンベースを実践すれば良いのか分からない」というのが本音でしょう。それに100%応えるのが本書です。

本書では、さとなおによる漫画版ファンベース最新解説に加えて、ファンベースに試行錯誤しながら取り組んでいる 「ファンベースなひとたち」の実践例を漫画と対談形式で紹介していきます。

「中の人」はどんな思いで、どんな苦労を積み重ねながらファンと共に成長の道を歩んでいるのか--。

漫画と対談で分かりやすくひも解いていきます。

ファンベースカンパニーで80社以上の企業プロジェクトに伴走してきた経験からブラッシュアップされた、最新の「実践ファンベース」をこの1冊で学べます。

楽しいファンベースの世界へ、ようこそ!
https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/280640/



(吉村智樹)