文学ロマンに浸る。金沢三文豪のレトロな記念館めぐり

2020/11/15 21:06 明菜 明菜

こんにちは、11月初旬に初めてGo To トラベルキャンペーンを使ってみた、美術ブロガーの明菜です。石川県の金沢市に行ってきました!



日本三名園の一つ、兼六園の紅葉はもうちょっとの時期でしたね。ところで皆さん、兼六園の他に金沢と言えば何を思い出しますか?蟹?金箔?

海の幸とゴールド箔のイメージが強い金沢ですが、文化・芸術が豊かな地域でもあります。特に私が紹介したいのは『金沢三文豪』です!


鏡花、秋聲の記念館の近くにある「ひがし茶屋街」

『金沢三文豪』とは、泉鏡花、徳田秋聲、室生犀星の3名の文豪のこと。みな明治から昭和の激動の時代を生き抜いた大文豪です。

金沢には彼らの記念館があって訪ねてきたのですが、チャーミングな人となりが分かると、もっと本を読みたくなります。「みんな大文豪です!!!」と鼻息荒く紹介しましたけど、カタブツな感じではなくって、可愛いおじさんなのですよ。


ペンネーム「犀星」の由来となった犀川

では、さっそくお三方の作品と金沢にある記念館を紹介していきますね!

■幻想的な作品で一世を風靡!泉鏡花

泉鏡花(いずみ・きょうか)は、幼い頃に母親を亡くしたことから、亡き母への憧れをベースにした幻想的な作品が特徴の文豪です。「鏡花」と可愛らしい名前ですが、これはペンネームで、本名は鏡太郎。元気な男の子です。


泉鏡花記念館

泉鏡花記念館は鏡花の生家跡に建っており、館内もどこか幻想的な雰囲気がありました。特に「鏡花本」と呼ばれる、絵画のような装丁の本の展示が良かったです。見る人が引き出しを開けて覗くセルフサービスな展示で、記念館を探検するような楽しさがありました。


鏡花の代表作といえば『高野聖』です。ある男が山で美しい女と出会うのですが、その女は男を虜にして動物に変えてしまう鬼だと分かって…というファンタジックなお話。

特徴はその文体で、「〜で。」「〜に。」と途中で終わったような文末がよく用いられています。何か言い残したかのような余韻があり、鏡花の幻想世界へと誘ってくれます。


ちなみに鏡花は潔癖症で、食べ物は炙ってから食べたり、こまめに消毒をするためにアルコールを浸した脱脂綿を持ち歩いたりしていました。私たちは「新しい生活様式」に翻弄されていますが、鏡花が現代に生きていたら、「ようやく時代が自分に追いついた」と思うのかも?


■オノマトペの達人!徳田秋聲


徳田秋聲記念館

徳田秋聲(とくだ・しゅうせい)は、自然主義文学を代表する作家です。リアリティある描写を淡々と積み重ね、弱い立場の人々の人生を描き出しました。

『雪国』などで知られノーベル文学賞受賞者である川端康成も、秋聲のことを「小説の名人」と褒め称えていました。


私は秋聲の書くオノマトペが大好きです。普段使いできるタイプから独特な言い方まで、色々あるんですよ。代表作『あらくれ』では主人公が働く様子を「ぱっぱ」と書いて手際の良さを可愛く表現しています。

『黴』では、「女の顔はぽきぽきしていた」(現代仮名遣いに変換)と書かれています。…先生、ぽきぽきって何ですかね?


状況を説明する文章とオノマトペの巧みな融合が、秋聲作品の魅力だと思います。皆さんもぜひ。

ちなみに秋聲は、第1回菊池寛賞を贈られることが決まったとき、「花瓶と置き時計、どっちが良いですか?」と聞かれ、「懐中時計」とどちらでもないものを答えています。なんでやねん、可愛いな。(無事に懐中時計はもらえた)

■猫めっっっっっちゃ好き!室生犀星

室生犀星(むろお・さいせい)は、詩人であり小説家でもある文豪です。自然主義の全盛期に、萩原朔太郎とともに「感情」に重きを置いた作品を発表しました。


『蜜のあわれ』なんてとても面白いですよ。おじいさんと金魚の会話だけで展開していく、不思議なストーリーです。

犀星は動物好きで、犀星一家ではたくさんの猫や犬などの動物たちが一緒に暮らしていました。中でも格別に犀星が愛したのが、猫の「カメチョロ」です。

カメチョロとは、信州の方言で「トカゲ」という意味。その猫のすばしっこい動きから、トカゲを連想したのだそうです。


室生犀星記念館

記念館には、カメチョロたちを可愛がる犀星の写真がパネルで紹介されていました。小さいものを慈しむ優しさから、作品が生まれているのかな。

かと思えば、朔太郎に絡む岡本太郎を椅子でぶん殴るなど、荒々しい一面も。実際はウザ絡みではなかったようで、冤罪だったのですけれども。親友を守ろうと正義感が先走っちゃったのかな…。

あと、犀星は文字が可愛いです。



こちらは3つの文学館をめぐるスタンプラリー(期間終了)の景品でもらったブックカバーの1つで、犀星の直筆原稿が使われていました。小さくて丸っこくて、クラスであまり目立たない女子高生が書きそうな可愛い文字だわ。私とは真逆。


■【まとめ】金沢は文学の聖地!!

金沢三文豪と記念館を紹介してきました。普段はアートの領域で記事を書いているのですが、たまにはこういうのも良くないですか?


石川近代文学館も楽しいYO

「文豪」と言うと、カタいイメージがあるかもしれません。でも、記念館を訪れてみると、可愛いエピソードをたくさん知ることができましてね…たとえ作品を知らなくても、人となりだけでご飯が進んでしまうんだなぁ。

『金沢三文豪』だけでなく、他にもたくさんの文士を輩出した金沢。記念館めぐりが捗るぜっ!