門外不出の名画たち

2020/10/13 09:00Tak(タケ)Tak(タケ)

日本は居ながらにして世界中の名画が観られる稀有な国です。

現存する作品が35点ほどしかないフェルメールでも、来日したことない作品を数えた方がはやいくらいです。



「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で新たに、「ヴァージナルの前に座る若い女性」が初来日を果たしたので残りはほんの数点という状況です。

しかし、どうしても現地に行かないと観られない作品もあります。

教会の祭壇画のように固定されていてそもそも移動が出来ない作品ではなく、フツーに展示室の壁に掛けてあるものでもテコでも動かせないものがあるのです。



フェルメールの「デルフトの眺望」は貸出禁止なので絶対日本には来ないよ。とか、マティスの「ダンス」は状態が悪く動かせる状態ではないらしい。といった噂レベルの話はしばしば耳にします。

実際に所蔵している美術館内部ルール(取り決め)で「この作品だけは貸せない」といったものが存在するそうです。

『芸術新潮 2020年 08月号』の特集では「いつか行ける日のために とてつもない絵」と題し現地へ行かないと体感できない名画を紹介しています。



その大半が教会内のフレスコ画であったり、またはオランジェリー美術館のモネの睡蓮の連作であったりと確かにこれは動かしようがないので、現地へ行かないと観られないな~という海外に行けない今の時期に見ると少々ストレスが溜まる特集でした。

そんな現地限定絵画の中でも、移動可能なキャンバスに描かれている作品でも門外不出のものがあると小特集が組まれていました。

では、具体的には一体どんな作品が「門外不出」なのでしょう。5作品だけ紹介しますね。


ピーテル・ブリューゲル「雪中の狩人」1565年

ウィーン美術史美術館には「バベルの塔」を筆頭にピーテル・ブリューゲル作品を12点も所蔵しています。

12点と聞くと少ないように思えるかもしれませんが、ピーテル・ブリューゲルの現存作品40点という数を知れば、如何にこの美術館が多く所蔵しているかが分かるはずです。


ウィーン美術史美術館

ここの美術館にあるブリューゲルルームは確かに一生に一度は訪れてみたいアートファン垂涎の場所かもしれません。

不思議と写真を撮ることを忘れ、作品に没入していた思い出があります。それとここには世界一美しいカフェも併設されています。


サンドロ・ボッティチェッリ「プリマヴェーラ(春)」1477年 - 1478年頃

ルネサンス期の作品の中でもアイコン的存在のボッティチェッリ「プリマヴェーラ(春)」

我々の日常生活の中でも気が付けばこの絵と「ヴィーナスの誕生」がどこかしらに紛れ込んでいます。サイゼリヤへ行かずとも。

キャンバスでなくこの大きさで板絵ということもあり、移動は不可能でしょう。横幅3メートル以上もある大作ですし、イタリアの至宝です。


ウフィツィ美術館

ウフィツィ美術館へは一度だけしか行ったことがなく、まだ西洋絵画をきちんと観るようになって間もなかったので、見落としも多く是非再訪したい美術館の筆頭です。


レンブラント・ファン・レイン「夜警」1642年

「フランス・バン・コック隊長とウィレム・ファン・ラウデンブルフ副隊長の市民隊」通称「夜警」。

3.63 m x 4.37 mとフェルメール作品の全てがこの一枚に収まってしまうほどの大作です。ほぼ絵の中の人物は等身大で描かれています。

アムステルダム国立美術館も新しくなり、もう永遠に門外不出確定です。



さて、オランダといえば今やレンブラントを凌ぐ人気のゴッホ。

ゴッホ美術館はアムステルダム国立美術館の目と鼻の先にあります。ただ物量的に一日で両方を観ようとするとヘトヘトどころかその後の旅程に影響が出るので計画は余裕をもって!


フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」1889年

現存するゴッホの5点の「ひまわり」の中でも最も遅くに描かれた作品に位置します。そうした意味では非常に完成度の高い作品といえます。

「振動や気温・湿度の変化による損傷を避けるため、館外への貸し出しは禁ずる措置がとられている」とwikiにはありますが、この美術館の顔である「ひまわり」を他館や他国へ貸し出すことは、そもそも考えていないでしょう。


ゴッホ美術館

ゴッホ美術館は「ひまわり」以外にもあれもこれも、ゴッホファンのみならずアート好きなら一度は目にしたい作品ばかり。

「花咲くアーモンドの木の枝」をここで観た時はちょっと泣きそうになったこと覚えています。

因みに、画像に写っている 新館は、1999年に黒川紀章氏が設計したものです。


ヒエロニムス・ボス「快楽の園」1490年 - 1500年頃

ボスもフェルメールに負けず劣らず残っている作品の少ない画家です。中でも「快楽の園」は三連祭壇画となっていて今でも開閉可能です。

ぱたりと閉めればある程度小さくなるので空輸も出来そうですが、残念ながらこれも板絵。温度湿度の変化にとても過敏でパキっと大きなヒビ、亀裂でも入ったらおしまいです。

どうしても日本で観たい方は、徳島の大塚国際美術館に実物大の祭壇画として再現されています。自動で時間がくると開閉するので扉の表面の絵も見られます。


プラド美術館

さて、こうして門外不出の作品を見てくると、それなりに理由があることが分かります。貸せないものは貸せないのです。

あれこれ細かい理由など必要ありません。逆に、こんな名画がやってきたらそれこそ大混乱となります。

いずれにしても、このコロナ禍では、作品の貸し出しどころか人の移動も出来ません。もうしばらく辛抱し晴れて門外不出の作品に会いに行ける日が来ることを願いましょう。



最後に『芸術新潮 2020年 08月号』に寄稿された池上英洋先生の言葉をちょっとだけ引用し結びとします。

「(前略)この脅威もいつかは終息に向かうだろう。そして、その過程で生まれるであろうあらたな芸術が、この記憶を後世に伝えるに違いない。(後略)」


『芸術新潮 2020年 08月号』に寄稿された池上英洋先生の言葉をちょっとだけ引用し結びとします。